半導体の黒子マルマエ、交渉力強化でM&A視野ーAIブーム波及狙う

人工知能(AI)ブームで過去最高益を更新する半導体製造装置メーカーも現れる中、一部のサプライヤーはインフレ下でも価格転嫁できず、苦戦する。半導体製造装置の中核部品である真空パーツを生産するマルマエの前田俊一社長は、業界再編で規模を拡大し、価格交渉力をつける必要があると訴える。

  前田氏はインタビューで、「私たちの業界の中でも一定の利益を維持し、顧客と一緒に繁栄していけるような仕組み」として、規模の拡大が急務だとの考えを示した。同社が手がけるチャンバーと呼ばれる真空部品は、半導体製造工程で使われ、ちりなど不純物を遮断する高い精度が求められる。

  ただ国内には多くの同業が1000億円市場にひしめき合っており、企業規模も小さいことから、価格交渉などで「若干立場的に弱い」と前田氏は話す。約7%のシェアを持つマルマエは、2024年9月-25年5月期では約20%の利益率があるものの、同業の多くは顧客の要求を受け入れざるを得ず利益率は10%程度にとどまるという。

  半導体産業は製造装置や材料を含めて多くの企業が携わるが、一部の領域では採算が合わないとして撤退する動きもある。海外勢含めて過当競争が進めば、供給網(サプライチェーン)維持が困難になる可能性もある。

  マルマエの前田氏は、業界再編は簡単ではないと話す。多くの競合他社は統合に消極的なのに加え、顧客の半導体製造装置メーカーも技術流出リスクからサプライヤーが連携することを好まないためだ。ブルームバーグのデータによると、マルマエは東京エレクトロンアルバックに製品を供給する。

  それでも同社は、好機を逃がさない。マルマエは今年3月、アルミ素材・部品を生産するKMアルミニウム(KMAC)を約90億円で買収した。前田氏は、企業の合併・買収(M&A)は「成長のためのツールの一つ」で、今後も機会や相乗効果が見込める際には準備を整えて臨むとした。

  潜在的な買収対象としては、半導体製造の後工程で必要な部品を製造する工作機械メーカーや、マルマエが保有しない樹脂技術など持つ企業を念頭に置く。前田氏は、航空宇宙や防衛分野といった「挑戦的だが利益率の高い分野」にも注目していると述べた。

  1965年創業で鹿児島県に本社を置くマルマエは、2000年代にフラットパネルディスプレーや太陽電池分野に参入し、真空パーツの生産を本格化。08年のリーマンショックで両分野の市況が悪化したため、主な事業を半導体分野に切り替えた。会社の統合報告書によると、社名は事業を行う上で周囲に角を立てないように「丸く」「前へ」進むことを願って付けられたという。

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