米国の看板猫、自動運転タクシーにひかれ死亡 地域住民から批判噴出 追悼が反対運動に発展

 米サンフランシスコで住民に愛されていた商店の看板猫が、米アルファベット傘下のWaymoが運行する自動運転タクシーにはねられて死んだ。この事故をきっかけに住民は巨大テック企業に対する反発を強め、猫は自動運転タクシー反対運動のシンボル的存在になっている。 【画像を見る】キットカットに関する地元メディアの報道【全1枚】  9歳だったキジトラ猫のキットカットは、現地時間の10月27日午後11時40分ごろ、サンフランシスコ市内の道路でWaymoの自動運転タクシーにはねられた。飼い主は瀕死のキットカットを連れて病院に駆け込んだが、助けることはできなかった。雑貨店「Randa's Market」の店長が6年前から飼い始め、客や近隣の住民に愛されていた看板猫だった。  Waymoが声明を発表したのは同月30日。「当社の車両が客を乗せるために停車し、発進しようとしたところで近くにいた猫が車の下を走り抜けた」とした上で、キットカットに哀悼の意を表して地元の動物愛護団体に寄付すると表明した。  キットカットがはねられた経緯については、Waymoの発表と食い違う証言もある。地元メディアは目撃者の話として「キットカットはWaymoの前に7秒ほど座っていた。それからWaymoの下へ歩いて入り、歩道へ向かおうとしたところで車が発進して右後輪がキットカットの体の後ろ部分をひいた」と伝えた。  市に匿名で提出された苦情では、「Waymoは減速も回避もせず、猫をよけようとさえしなかった。暗い場所で小動物を発見できないのなら、Waymosは道路を走行すべきではない」と訴えているという。

 キットカットの死をいたみ、Waymoに対する規制強化を訴える声は日増しに大きくなっている。  事故現場にはキットカットの写真が飾られ、たくさんの花やろうそくが供えられている。「Waymoを殺せ、猫を救え」というカードを置いていく住民や、「猫を守れ」「Waymo禁止」のバッジを着けて、Waymoなど自動運転タクシーの規制強化や禁止を訴える住民もいる。  事故が起きたサンフランシスコ市ミッション区のジャッキー・フィールダー議員は11月4日、Randa's Marketの前で記者会見を開き、自動運転車の規制強化を目的とする法案を提出すると発表した。この集会にはキットカットをしのんで大勢の市民が集まった他、トラックやタクシーの運転手で組織する全米トラック運転手組合(Teamsters)の組合員も出席。フィールダー議員に賛同の意を表した。  法案は、現在カリフォルニア州の判断で営業を認めている自動運転タクシー規制の在り方を変え、州内の各郡が個々の判断で自動運転タクシーの運行を認めるかどうか決められるようにするという内容。もしそうなれば、サービスに支障が出る事態も予想される。  フィルダー議員はSNSに投稿した動画の中で、「Waymoは(事故のことを)覆い隠してみんなに忘れてもらえると思っているかもしれないが、私たちはキットカットのことを決して忘れない。私たちは常に、テックオルリガルヒ(一部の大金持ち有力者)より地域社会を優先する」と力説。Waymoは動物を殺すだけでなく、渋滞を引き起こし、利用者のデータを収集し、公共交通を弱体化させているとして非難した。  自動運転タクシーを巡る論議には、テキサス州でサービスを展開するTeslaのイーロン・マスクCEOも参入。今回の事故について伝えたXのポストに「たくさんのペットが自動運転によって救われる」とリプライした。  一方、キットカットを追悼するRedditのスレッドやRanda's MarketのInstagramアカウントは、Waymoや巨大テック企業に対する非難のコメントであふれ返っている。

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