「自分が育った世界はもう消えてしまった」猛暑に苦しむ世界の若者を襲う「気候悲嘆」とは
現在発生しているエルニーニョ現象の影響により、「今年の6月から8月にかけては『ほぼすべての地域』で非常に激しい暑さがもたらされる可能性が高い」と国連は指摘した。
こうした温暖化の傾向は何十年も前から強まっており、今後も続くと予想されている。それならば、人々、特に若い世代が、気候変動への深い悲しみ「気候悲嘆(Climate Grief)」を経験しているのも無理はない。
イギリスに住むデイジーさんはTikTokに投稿した動画で次のように語っている。
「気候悲嘆がひどい……。2021年以降、きちんとした四季があったことがない。自分が育った世界はもう消えてしまった。猛暑に対応できるインフラがないイギリスで、毎年夏になると地獄のような暑さに備え、ほぼ存在しない秋が来るのを待ってる」
この動画のコメント欄は、共感の声で溢れた。「うちの子どもたちは雪の日を一度も経験したことがない」といったコメントが、世界中から多く寄せられている。
ハフポストUK版は、この動画にコメントを寄せたドイツの学生エミリアさん(19歳)、環境NGOのグリーンピースUKのハリソン・カークマン氏、そして心理学者のキャンディス・オニール博士に、この現象について話を聞いた。
「気候悲嘆とは、死や死を迎えることへの恐怖と強く結びついている、深い実存的な懸念です。私たちを取り巻く世界について、知っているものすべてが、自らのコントロールを超えて変化し、移り変わっていくことへの漠然とした不安でもあります」
そして、この感情は「気候変動に対してより意識的で、主体的に行動しようとする若い世代に特に多く見られる」という。
かつては当たり前だった季節の移り変わりなどに伴う不変的なことが失われつつあると感じたり、子どもの頃に愛した秋や冬を2度と経験できないのではないかと不安に思ったりする。
グリーンピースUKのカークマン氏は、自身の身の回りの変化をこう語る。
「今年、私の住む地域ではヨーロッパアマツバメが減ったように感じる。毎日、もっと飛んできてほしいと願いながら探しているけど、昆虫の減少によって一部の鳥類の生息数は過去最低にまで落ち込んでいるのです」
「特に若い世代にとっては、自然界の一部が、自分たちがそれを知る機会さえないまま失われていくという、悲しさと痛みがあるのです」
前出のエミリアさんは、10歳頃からこの「気候悲嘆」を感じ始めたという。
「それ以前から気候変動のことは知っていたけど、私たち人間がその直接的な原因であると気づいたとき、深い苦悩に陥った。よく無力感を覚えます」
「個人として何をしても決して十分ではないと感じてしまい、世の中で起きていることに対して『世界への諦め』のようなものを抱えています。そのせいで、今ではあらゆる暑さに対して恐怖を抱くようになってしまいました」
環境NGOであるグリーンピースは、この「気候への嘆き」にどう対処しているのか。同団体のカークマン氏は次のようにアドバイスした。
「気候や自然への嘆きに耳を傾けることは重要です。放置すれば、簡単に無気力や絶望へと変わってしまうから。しかし、その嘆きは自分が何を愛しているかを思い出させてくれる。悲しみを行動に変えることこそが、再び希望を見出す最善の方法の1つなのです」
例えば、生物多様性の喪失は決して避けられない運命ではないという。
「チャンスを与えられれば、自然は回復する。私たちが共に声を上げることで、悲しみを、政治家が無視できないほどの大きな圧力へと変えていくことができるのです」
オニール博士も同様の視点を持ち、「同じ目的を持つオンラインや対面のグループに参加してみてほしい」と述べる。
「また、友人や愛する人と懸念を話し合うことも対処法の1つ。それによって、周囲の環境への意識を高め、習慣を変えるきっかけを作ることができます」
これにより、思考の枠組みを「気候を守るために十分なことができていない」という自責から、「私は気候を守るために主体的に行動していて、私の選択は、意識を持って行動していくという目的意識を反映している」という前向きなものへ再定義できる、と語った。