2030年の日経平均予想を5万6,000円から6万3,000円に引き上げ(窪田真之)
日経平均株価は高市ラリーで急騰、ついに5万円を超えました。あまりの上昇ピッチの速さに、「バブル再来か」という人もいます。
日本株は、1989年末にバブルを形成し、そこから長いバブル崩壊を経験しています。「その経験を忘れるな」という人が最近増えています。
私は、1989年の日経平均急騰と、今の日経平均急騰を比較するのは不適切だと思います。なぜならば、当時と今では、経済環境も日本企業の財務内容、収益力、ビジネスモデル、ガバナンスも全く異なるからです。日本株の株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)は当時に比べて低く、配当利回りは高くなりました。日本株は当時と比べて、格段に割安になったと判断しています。
1989年当時、日本の株価、地価、物価、賃金は、国際的に比較して極めて「高い」水準にありました。東京の生活費は世界一高く、日本人の賃金は国際比較で極めて高いと言われていました。株価も不動産も、PERやイールドで説明できない高値にありました。
今は、その逆です。株価、地価、物価、賃金は、国際的に比較して「割安」になっています。割安な株価と、経営改革が評価されて、日経平均は6万円に向けてさらに上昇していくと予想しています。
<日経平均(年次推移):1973~2025年(10月27日)>
出所:QUICKより作成。グラフは日経平均株価、予想PERは東京証券取引所の平均。日経平均予想は楽天証券経済研究所
1973年当時、日経平均は5,000円前後でした。東京証券市場(東証)一部のPERは約13倍でした。この時の日本株は「割安」でした。
ところが、その後、日経平均はどんどん上がり続け、1989年(平成元年)末には3万8,915円の史上最高値をつけました。この時、東証一部のPERは約70倍まで上昇し、10~20倍が妥当と考える世界の常識をはるかに超えた「バブル」となりました。
バブルは、平成に入ってから崩壊しました(1989年=平成元年)。ただし、「平成の構造改革」で復活した日本株は2013年以降、再び上昇トレンドに戻りました。
2025年10月27日時点で、東証プライム市場の予想PERは約18倍です。株価上昇ピッチがやや速すぎて、東証プライムPERが私が考える妥当水準(17倍)を少し超えていますが、誤差の範囲です。長い目で見て、日本株が割安圏にあるとの見方は変わりません。
日経平均は2030年までに6万3,000円まで上昇すると予想
今日は、日経平均の長期予想について書きます。これまで、日経平均は2030年末までに5万6,000円まで上昇すると予想していましたが、予想を6万3,000円に引き上げます。
二つの理由があります。インフレ率上昇と自社株買い増加です。
【1】インフレ率上昇
日経平均予想を引き上げる一番の理由は、日本のインフレ率予想を変えたことです。高市政権の成立により、日本が財政拡張を伴う積極的な成長戦略をとっていく方向性が見えてきました。
これを受けて、今後5年の日本のインフレ率(消費者物価指数(CPI)総合指数上昇率)予想を、年率2.4%から同2.6%に引き上げました。インフレ率上昇によって、名目国内総生産(GDP)の成長率・企業の売上成長率が高まります。それが、企業業績・株価を引き上げていくと予想します。
【2】自社株買い増加
もう一つの理由は、自社株買い増加です。それにより日本企業の自己資本利益率(ROE)が高まり、東証プライム市場の妥当PER水準が切り上がると予想されます。これまで東証プライムの妥当PERは16倍と考えていましたが、今後は17倍水準で評価されると考えます。
妥当PERは、個別銘柄では10倍から40倍くらいまで幅広く分散しています。それぞれ利益の成長性・安定性によって妥当水準は異なります。東証プライム市場の妥当PERはその積み上げによって決まります。今年に入ってからの日本企業の自社株買いの増加が、妥当PER水準の引き上げにつながると判断しています。
日経平均が2030年までに6万3,000円を超えると予想する根拠
私は、平成の構造改革で投資価値が高くなった日本株は令和時代にさらに飛躍すると予想しています。日経平均は、2030年末までに6万3,000円を超えると予想します。
1株当たり利益(EPS)の増加が、日経平均の上昇をけん引すると予想しています。利益変動を無視したバブル型上昇ではなく、利益の増加に対応した株価上昇が続くと予想しています。その根拠をお話しします。
東証上場企業のEPSを増加させるドライバー
EPSを増加させるドライバーが三つあります。【1】海外での利益成長、【2】インフレ、【3】自社株買いです。この三つを合わせて、EPSは年率平均6.5%増加すると予想しています。それが5年続くと、EPSは約37%増加します。
<東証上場企業のEPS増加要因>
出所:楽天証券経済研究所予想
【1】海外事業による利益成長:年率寄与度(予想)2.3%
「人口が減少する日本の株は魅力がない」と言う人がいます。もし、日本企業が日本国内だけでビジネスを行っているのならばその通りですが、実際には日本企業は人口が増加するアジアや米国などで幅広くビジネスをやっています。これからも巨額の買収や合併(M&A)で海外企業の買収を積極的に進めていくと思います。
日本企業の海外事業の成長が、東証上場企業のEPSを年率2.3%増加させると予想しています。
【2】インフレ(CPI総合指数の上昇率):年率寄与度(予想)2.6%
日本のインフレ復活が、日本の企業業績・株価を上昇させる要因となります。日本企業は長年にわたり、ゼロ・インフレに苦しんできましたが、日本にも今後2~3%のインフレが定着すると予想しています。インフレ定着は国民生活にとってネガティブですが、企業業績・株価にとっては追い風となります。
<日米の総合インフレ率(CPI総合指数の前年比上昇率):2020年1月~2025年9月>
出所:総務省および米労働省より楽天証券経済研究所が作成
【3】自社株買い:年率寄与度1.5%
東証上場企業は今後、毎年15~20兆円の自社株買いを実施すると予想しています。自社株買いによって、毎年EPSが約1.5%増加【注】します。
【注】自社株買いによるEPS引き上げ効果 東証上場企業が合計で17兆円の自社株買いをやると、発行済み株式数が約1.5%減少します。発行済み株式数が約1.5%減少すると、利益総額が変わらないでも、EPSは約1.5%増加します。
日本企業は、米国企業に比べて、これまで自社株買いに積極的ではありませんでした。それは日米のカルチャーの違いもあります。
日本企業は、経営危機になった時でも従業員を解雇せずに生き延びられるように財務余力を残そうとする傾向があるからです。めいっぱい自社株買いをして株価を上昇させて、経営危機になったら簡単に破綻する米国企業とは異なります。そのカルチャーは簡単には変わらないと思います。
ただし、日本企業の財務的ゆとりがかなり大きくなったにもかかわらず、あまり自社株買いをやらないために株価低迷が続き、PBR1倍割れが常態化した企業が半数を超える状況が続いています。
この現状を憂慮して、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して株主価値改善策の開示・実施を要請しました。これを受け、日本企業に不採算事業からの撤退、自社株買いを増やすなどの方法で、ROEを高めて株価を上昇させる動きが広がっています。
こうした変化を受けて、今後は東証上場の日本企業も年間15~20兆円の自社株買いを行うようになると予想しています。
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