大島秀夫が監督になって迎える初陣。 「選手がひたむきに躍動して、楽しんでいる試合を見せられたら」 [J15節 FC東京戦プレビュー]
強い覚悟を持って監督に
大島秀夫が正式な監督として迎える、本当の意味での初陣だ。
パトリック・キスノーボ監督の退任をうけて後任人事に発展したのは先週頭の出来事。そして先週金曜日の段階で西野努スポーティングダイレクター(以下、SD)は「今回も複数の候補者を立てて常に進めていた中で密度を上げて進めていたのは事実です」と明かしている。ただし大島秀夫に監督就任を打診する以前の話であり、この発言をした段階ではほぼ決まっていた。
それでも「現状のスカッドが最大のパフォーマンスを出すことが優先順位として高かったので、国内での指導経験があって、できれば日本人と考えています」と言葉を濁したのは、クラブ内での手続きや親会社への承認作業が残っていたため。ファジアーノ岡山戦では、肩書きがヘッドコーチのままで指揮を執り、週が明けてからハードルがクリアとなって正式に監督としての契約を結んだ。
さまざまな候補者や可能性があった中で、大島秀夫にタクトを託すことを決断した決め手は“覚悟”だった。
「シンプルに言いますと『覚悟はできている』ということを、力を込めて言ってもらいました。ですので、その覚悟を確認して最終的には決めさせてもらいました」(西野SD)
誤解を恐れずに言えば、火中の栗を拾う役目である。一度もJ2に降格したことのない名門クラブが最下位に沈み、残り試合数はシーズンの半分を切っている。客観的な状況はだいぶ厳しい。
でも、だからこそ覚悟を持った人間にしか任せられなかった。言い訳無用で、クラブをこの窮地から救いたいと強い気持ちを見せてくれたのが、大島秀夫だった。
現場スタッフからの信頼は厚い。他の候補者の名前が挙がった際から、大島の昇格を推す声もあった。朗らかな人柄も大きな魅力で、愛されるキャラクターでもある。スタッフと選手からは『秀夫さん』と呼ばれている。今になって仰々しく『監督』と呼ぶ人間はほとんどいない。
「監督と呼ぶ人はだいたいふざけている(笑)。そのままでいいと思います」
温和な笑顔を浮かべた。実に大島秀夫らしい。
監督交代ブーストを使わない手はない
監督経験はあらためて述べるまでもなく、皆無だ。これは今回の人事を揶揄しているのではなく、紛れもない事実である。
でも誰しも最初は経験ゼロから監督になる。そのタイミングが、大島にとっては今だった。
元所属選手として、チームの救世主となる責務を背負う。
「マリノスがこういう状況であってはいけないと思っています。こういう立場になるにあたってプレッシャーはすごく感じていますけど、やるしかない。最後に笑顔で終われるように頑張りたい」
(残り 651文字/全文: 1876文字)
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。