金(ゴールド)急落、それでも長期上昇が続くと考える理由

 2026年1月の最終週の後半、金(ゴールド)やプラチナ、銀(シルバー)といった貴金属の価格が大きく下落しました。下落率(前日比)が10%を超える場面もありました。こうした記録的な急落を見て、貴金属相場の長期上昇トレンドが終わったのではないか、貴金属相場のバブルがはじけたのではないか、といった思惑が一部で浮上しているようです。

図:金(ゴールド)とプラチナの年初以来の推移(日本時間2月2日昼時点) 単位:ドル/トロイオンス

出所:Investing.comのデータより筆者作成

 確かに急落しましたが、グラフの通り、金(ゴールド)とプラチナの、足元(日本時間2月2日昼時点)の価格水準は、年初とほぼ変わらないか、やや高いことが分かります。

 また、表の通り、昨年末と足元の水準を比べると、金(ゴールド)は8.10%上昇、プラチナは2.11%上昇、銀(シルバー)は3.47%上昇しています。貴金属は全体的に、昨年末よりもやや高い水準で2月の取引が始まったことが分かります。

図:主要銘柄の昨年末以来の騰落率(2025年末と日本時間2月2日昼時点を比較)

出所:Investing.comのデータより筆者作成

「急落」と聞くと、何か劇的な変化が起きたように感じてしまいますが、価格の推移を見る限り、1月の最終週の後半に起きた急落については、「1月の中旬から下旬にかけて発生した、歴史的高値更新を実現した劇的な急騰劇の修正」という範囲に収まっていると言えそうです。

急落は短期的、長期の「土台」は健在

 筆者は、この急落の背景は三つあると考えています。一つ目は、トランプ米大統領が「ロシアが1週間ほど、ウクライナとの戦闘を停止する」旨の発言をし、(1)伝統的な有事をきっかけとした上昇圧力が、後退したことです。(有事ムードの後退)

 二つ目は、今年5月に交代を予定している米連邦準備制度理事会(FRB)の議長について、利下げに否定的な人物が就任するかもしれない、という思惑が広がり、(3)代替通貨をきっかけとした上昇圧力が、後退したことです。(利下げ→ドル安→金(ゴールド)高のシナリオ後退)

図:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ

出所:筆者作成

 三つ目は、1月の中旬から下旬にかけて発生した、歴史的高値更新を実現した劇的な急騰劇で大きくなった利益を確定させるための売りが膨らんだとみられることです。伝統的な有事と代替通貨をきっかけとした上昇圧力が急激に弱まり、そこに利益確定の売りが拍車をかけ、急落が発生したと、考えられます。

 伝統的な有事をきっかけとした上昇圧力、そして代替通貨をきっかけとした上昇圧力が、ともに急激に弱まったことについては、図の通り、短中期のテーマにおける事象だと言えます。

 さらには、利益確定の売りも、短中期的な事象になるケースが多いことから、今回の急落は「短中期的」な事象であると言えます。このため、しばらく下落が続いたとしても、その下落が長期に及ぶ可能性は低いと、今のところ、筆者は考えています。

図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2026年)

出所:筆者作成

 また、先ほどの図「ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ」で示したとおり、金(ゴールド)相場には、2010年ごろから続いている長期的な価格上昇を支える「土台」があると、考えられます。

 この土台に関わる環境は、急落前と後で、何ら変わっていません。土台は、中長期の時間軸「中央銀行(金(ゴールド)保有量・通貨ストック)」、そして超長期の時間軸「非伝統的な有事(通貨不確実性・世界分断・民主主義後退など)」という、長い時間軸のテーマです。

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著者プロフィール

吉田 哲よしだ さとる

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト

1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。

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