トランプ氏干渉で統計の信用崩壊、ウォール街で重み増す民間経済指標

IGウェルス・マネジメントの投資戦略責任者フィリップ・ペターソン氏は、顧客に投資を推奨する上で長年、米労働省の労働統計局(BLS)がまとめる指標に依存してきた。しかしトランプ大統領が7月の雇用統計を「ねつ造」と決めつけ、BLSのマッケンターファー局長を解任して以来、状況は変わった。

  ペターソン氏はBLSの統計を疑っているのではない。実際のところホワイトハウスは「ねつ造」の証拠を示していない。しかしペターソン氏が心配するのは、独立経済統計のゴールドスタンダードと見なされてきたBLSの統計が、今後は党派的な色彩を帯びる可能性だ。

  ウォール街でも同様の見方が広がり、従来利用されてきたADPリサーチやチャレンジャー・グレイ&クリスマスなどの民間統計と合わせた分析を重視する投資家が増えている。米供給管理協会(ISM)の物価統計や、S&Pグローバルの製造業およびサービス業データにも同じことが言える。

  ジョーンズトレーディング・インスティテューショナル・サービシズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は今後は民間データに「もっと重点を置く」と述べた。

  アネックス・ウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「民間データは公共データのチェック機能を担う」とし、上院で開かれるBLS局長候補の指名公聴会に注目していると話した。

  「統計が政治化されれば、それはすぐに分かる」とジェイコブセン氏はコメント。民間データを用いることで、エコノミストやストラテジストは誤りをチェックすることができると指摘した。

  長年、正確性と独立性の高さにおいて他の経済統計を寄せ付けなかったBLSのデータも、完璧ではない。資金カットで人材が不足し、データ収集手法は時代遅れとなっている。回答率の低下は何年も続き、大幅な修正の原因となってきた。

  株式市場は現時点で大きな反応を見せていないが、独立性への脅威は投資家の警戒を招いている。トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズの共同最高投資責任者(CIO)、キース・ラーナー氏は「信頼が揺らげばリスクプレミアムが上昇し、バリュエーションは若干下がり、データの変動性も高まる」と警告した。

  エバコアISIの株式クオンツ・チーフ・ストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏は「政府が出すデータがますます疑わしくなるにつれ」、民間データの重みは「さらに増してくる」と指摘。ISIも労働市場調査など経済データを発表している。

  フェデレーテッド・ハーミーズのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ドナルド・エレンバーガー氏はトランプ政権がデータ集計プロセスに干渉したり、その信頼性に疑問を呈したりすれば、「政府統計の有益性は低下する」と指摘。「信頼は金融の礎だ。一度失われれば、取り戻すのは難しい」と語った。

原題:Wall Street Leaning Harder on Private Data After Trump BLS Spat(抜粋)

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