リストラしちゃって大丈夫? AI、意外と人間より仕事さばけない説
人間の代わりにAIを雇ったら、そのAIの代わりになる人間をまた雇わなきゃいけなくなる可能性が高いってこと?
アメリカの大企業による人員削減が止まりません。
ここ数週間を見ても、アマゾンが1万4000人の雇用削減を発表、映画製作・配給のパラマウントが1,000人、小売大手のターゲットが1,800人を解雇、宅配大手のUPSは4万8000人の従業員削減を目標に1万4000人の削減を始めると表明、メタはAIの研究部門から約600人を解雇しました。
「雇用なき成長」の時代へ
こうした動きは、経済が「雇用なき成長」の時代に突入したことを意味しています。新規雇用がなくても、企業が利益を伸ばし続ける世界に変わりつつあるみたいです。
The Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)によると、いま特に打撃を受けている職種の多くがホワイトカラーの仕事なのだとか。いわゆるオフィスワークで、通常は成長の余地があって、比較的安定した生活を見込める職種です。
しかし、現在の雇用市場は「雇用も解雇もない」状態に陥っています。新規採用も昇進もなく、転職活動も不活発。その一方で、第4四半期の決算で利益を増やすために、企業がリストラを進めています。動いているのは、企業利益のために切られちゃう人たちだけで、世界経済は停滞中というやるせない状況です。
閉ざされるアメリカンドリームへの道
雇用が失われるにつれ、かつてはアメリカン・ドリームへの第一歩だった労働市場への入り口が急激に縮小し、ほとんど閉ざされてしまいました。
初心者レベルや、キャリア初期の職は、求人が前年から大幅に落ち込んでいます。職業人としての階段を上ろうにも、最初の段にすら足を乗せられない、乗っても次の一段が高すぎるという厳しい現実を突きつけられています。
フィラデルフィア連邦準備銀行が発表した報告によると、学士号を必要とする職種は、そうでない職種と比較して、AIの影響を受ける可能性が3倍以上高いとのこと。学生ローンを抱えたまま職を失ったりしたら最悪です…。
AIがすべて埋め合わせてくれるという経営幹部の幻想
経営幹部は、人員削減の穴は自動化が埋めてくれると確信しているようですが、根拠となるような証拠はほとんどありません。サンフランシスコに拠点を置き、AIの安全な開発と導入を推進する非営利組織Center for AI Safetyによると、人間が確実に遂行できる業務のうち、実際にAIエージェント(自律型AIプログラム)が完了できたのはわずか3%未満に過ぎなかったとのこと。仕事ができないどころの話じゃない気が…。
このような状況を踏まえると、調査・コンサルティング企業Forrester(フォレスター)の報告書で、AIによって削減した人員の代替えを試みた雇用主の半数以上が、その判断を後悔していると回答したのも納得ですね。
それでも企業が利益を得ることになりそうです。同報告書は、人間の代わりにAIを導入して後悔した企業は、最終的にまた雇用市場に戻って人間を採用するだろうと予測しています。
ただ、賃金は以前雇用していた従業員よりも低くなり、業務の一部を海外に委託する可能性が高いとのことです。
AIを使い続ける場合、3%しかタスクをこなせなかった新人AI社員をが100%できるようになるまでに、いったい誰がどれくらい時間をかけて訓練するのか、その間の潜在的な損失をどれくらいかけて取り戻せるのか、気になるところです。