「スマホはある」「四季を体験したい」新人ホームレスが最も不便に思うことは?(ニューズウィーク日本版)
征一郎さんが住む橋脚の下に到着すると、征一郎さんの姿は見えず、テントの近くに見知らぬ人が立っていた。私はおかしいと思った。 征一郎さんの話によると、以前、奇妙な若者が彼のテントの近くをぶらぶらし、雑草に火をつけていたこともあるらしい。 いま目の前にいる人は、30代に見える。もしかして......。 余計なことは考えないで、急いで自転車を押して向かった。 その若者に「おはようございます!」と挨拶してから、率直にこう尋ねた。 「あなたは誰ですか。ここで何をしているのですか」 彼は答えた。 「僕は大阪から来たホームレスの新人で、先輩である征一郎さんの弟子になるために昨日ここに来ました。今、征一郎さんは寝ているので、僕は起きるのを待っているんです」 その時、征一郎さんのテントから10メートルほど離れたところに、小さなテントが増えていることに気づいた。なるほど。これで安心だ。 若者の名前は「宇海」といい、東京でホームレスになるために自ら付けた名前だと教えてくれた。 宇海くんは征一郎さんのテントの前まで行き、「師匠」を起こす。しばらくすると、征一郎さんがテントから出てきたので、3人で話した。 彼ら2人は、昨夜すでに会っていた。 征一郎さんは数日間体調が良くないらしく、宇海くんにはまずテントを張って住まわせた。体調が良くなったら、彼がいつも行っている缶の仕事のノウハウを教えるつもりだという。 征一郎さんの話では、今日か明日あたり、国土交通省の人が宇海くんを訪ねてくる。話を聞き、写真を撮られるという。 「でも、心配することはない。新たに荒川河川敷に来たホームレスに対し、みんなこの『登録』を行うんです」と念を押した。
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************