トランプ氏、関税発動期限を目前にサプライズ連発-インドや銅
トランプ米大統領は8月1日の関税発動期限を目前に、インドや銅に関する予想外の措置を含む一連の関税政策と要求を打ち出し、新たな世界貿易秩序づくりに向けた動きを加速させた。
トランプ氏は30日、韓国からの輸入品に対し15%の関税を課すと発表した。これは日本に適用された税率と同水準。また、インドに対してはロシア産エネルギーや兵器の購入を批判し、25%の高関税を課すと発表した。
28日に停戦に合意したタイとカンボジアとも通商合意に達したとされており、トランプ氏が目指す世界の仲裁者としてのイメージ強化に役立ちそうだ。
台湾とも「一定の合意に達し」、同地域との通商合意は現在草案作成の段階に入っていると台湾の報道官が述べた。マレーシアのアンワル首相は、8月1日に関税措置を発表する予定だとトランプ米大統領から伝えられたと明らかにした。
市場を特に驚かせたのは、銅に関する新たな関税ルールだった。トランプ氏は銅の輸入品に最大50%の関税を課すとしながらも、精錬銅など最も取引量の多い製品群を対象から除外。これによりニューヨーク市場の銅価格は過去最大の下落を記録した。
トランプ氏は、世界全体に15-50%の範囲の関税率を設定する方針を示している。これにより米国への製造業回帰と政府歳入の増加を図るとともに、米市場に依存する各国への交渉上の影響力を高めたい考えだ。
野村ホールディングスのチーフエコノミスト、ロブ・スバラマン氏は「今日は詳細が一気に出てきて、いわば『木を見て森を見ず』の状態だ」と指摘。「一歩引いて見れば、トランプ氏はこれまでの関税の脅しをほぼそのまま実行に移している」と述べた。
大半の国はまだ米国と2国間の通商協定を結んでおらず、既に合意に至った国・地域についても、関税免除の対象、投資の約束、原産地規則の変更といった重要な詳細はほとんど明らかにされていない。
トランプ氏が推し進める新たな通商秩序は段階的に導入されているものの、その過程で生じた不確実性と混乱は、既に世界経済の成長を鈍化させ、投資を抑制する要因となっている。ただ、市場はなお楽観的な見方を保っている。
ナティクシスのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は「こうした土壇場での合意の押し込みは、決して良い兆候とは言えない」と指摘する。より高い関税率を回避しようと各国が合意に追い込まれる結果、「各国経済にとっての負担が大きくなる可能性もある」と語った。
一方、米中の通商協議は続いており、現時点では前向きな雰囲気が保たれている。
30日には一部のブラジル産品への予想外の関税免除措置が明らかになり、ブラジルの通貨と株式は値上がりした。また、トランプ氏が31日午前にメキシコのシェインバウム大統領と電話会談する予定だとブルームバーグ・ニュースが報じ、メキシコ・ペソも上昇した。
カナダのカーニー首相は30日、米国との交渉について8月1日の期限までに妥結できない可能性があると述べた。トランプ氏はパレスチナを承認するカナダの方針は貿易交渉を複雑にするとしており、合意実現の可能性は低そうだ。
原題:Trump Unleashes a Flurry of Trade Surprises on Eve of Deadline(抜粋)