トランプ氏、関税戦争で敗北か 最高裁に上訴しても勝ち目なしとの見方も 関税差し止め訴訟はどうなる? #エキスパートトピ
米国際貿易裁判所は、先月28日、国際緊急経済権限法貿易に基づいて貿易相手国に相互関税を課すことは大統領権限を逸脱しているという理由で違法として関税を差し止める判決を下した。トランプ政権は直ちに控訴、翌29日には、米連邦巡回控訴裁判所が米国際貿易裁判所の判断を一時停止し、関税措置を復活させる判断を下した。両当事者の主張陳述後、控訴裁判所は一時停止期間を延長するかどうか判断することになる。
ホワイトハウスも識者も、裁判は連邦最高裁まで持ち込まれることになると見ているが、果たして、トランプ氏は勝てるのか?
ココがポイント
(前略)and therefore more likely to fall(後略)出典:Fortune 2025/5/31(土)
The Supreme Court May Not Step in and Save Trump’s Tariffs出典:Politico 2025/5/30(金)
(前略)重要問題法理を巡り、議会が行政機関ではなく大統領に直接権限を与えた場合には適用されないとの立場を示している。出典:Bloomberg.com 2025/6/2(月)
エキスパートの補足・見解
米政治サイトTheHill.comは、裁判が最高裁に持ち込まれたとしても、トランプ氏には勝ち目はないとの識者の見方を伝えている。最高裁が策定した「重要問題法理」は行政権による広範な権限の主張を懐疑的に見ており、ほぼ全ての輸入品に対する関税といった経済的に重要な権限を議会から行政機関に委譲するためには議会の承認が求められるからだ。
また、トランプ氏が敗北を受け入れない場合、最高裁での最終判決は2026年夏まで延期される可能性があることから、同氏は今後1年半は貿易相手国に対して説得力ある関税の脅しをかけらず、法廷で国際社会に無力な姿を傍観される“貿易政策のレームダック(役立たずの政治家)”になる可能性があるという。また、たとえ勝訴したとしても、中間選挙を前にした関税攻勢は市場の混乱を生み出し、上下両院で辛うじて共和党が過半数を維持しているトランプ政権にとっては政治的自殺行為になるとの見方だ。
トランプ政権は「国際緊急経済権限法」以外の法律で関税政策を維持する可能性があるとも述べているが、他の法律では広範で包括的な権限を得ることが難しいという指摘もされている。控訴審でどのような判断が下されるか注目されるところだ。
大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。