イスラエルがテヘランやフォルドを攻撃、 刑務所や核施設を標的と
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イスラエルは23日、イランの首都テヘランとその南に位置するフォルドを攻撃した。多くの政治犯が収監されていることで知られる、テヘランにある悪名高いエヴィン刑務所の一部が損傷を受けたと、イラン司法当局が明らかにした。
イラン司法当局が運営するミザン通信は、イスラエルの攻撃を「国際法違反」だと非難しつつ、状況は「制御されている」と伝えた。国営テレビは、初動対応を行った緊急サービスが担架で負傷者を運び出し、倒壊した建物の下にいる生存者を捜索する様子をとらえた映像を報じた。
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は、エヴィン刑務所を含む「(イランの)体制に関係する標的や、政府の弾圧機関」をテヘラン各地で攻撃したと発表した。
フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、エヴィン刑務所に収監されているフランス人2人の命を危険にさらしたとして、同刑務所への攻撃は「容認できない」と述べた。
一方でイランも、イスラエル各地を攻撃。発電所が近くにある、南部の港湾都市アシュドドの工業地帯などを標的にした。
イスラエルは13日、イランの核・弾道ミサイル計画を「国家存続への脅威」と位置づけ、空爆作戦を開始した。
イラン保健省によると、イスラエルの攻撃で約500人が殺害された。一方で人権団体は、死者が950人に達したとしている。一方イスラエル当局は、イランのミサイル攻撃により、イスラエルの複数都市で24人が殺害されたと発表している。
エヴィン刑務所には、著名な反体制派や人権擁護活動家、ジャーナリスト、二重国籍者や外国人など、何千人もの男女が収監されている。
刑務所周辺の人口密集地域で暮らす人々は、23日に近隣の住宅の窓ガラスが粉々になるほどの強烈な爆発があったと、BBCペルシャ語に話した。
検証済みの動画の一つには、損傷した車両や、通り一面にがれきが散乱した様子が映っていた。別の動画では、刑務所敷地内にある特別保安部門「シャヒード・モガダス検察庁」の建物が深刻な損傷を受けているのが確認できる。
死傷者数や民間人の被害状況は明らかになっていない。
同検察庁は通常、勤務時間中は収監者の家族や弁護士、検察官、判事らで混雑している。
BBCペルシャ語が確認した複数の画像には、収監中の親族を訪ねていた人々が攻撃にあい、負傷している様子が写っていた。
刑務所の女性専用区画に収監されている人々は、家族に対し、天井が損傷し、収監者がパニックに陥ったと伝えたと報じられている。負傷者は報告されていない。
一方、刑務所の第4区画では、図書室にいた複数の男性が爆発の衝撃波で負傷したと報じられている。
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国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、エヴィン刑務所からの報告に「非常に心を痛めている」とした。
「民間施設への意図的な攻撃は国際人道法で禁じられており、戦争犯罪に該当する可能性がある」と同団体は警告した。
フランスのバロ外相も、スパイ容疑をかけられてエヴィン刑務所に「人質として拘束」されているフランス人2人を危険にさらしたとして、イスラエルの攻撃を「容認できない」と非難した。
かつてエヴィン刑務所に長年収監されていた、イギリスとイランの二重国籍者ナザニン・ザガリ=ラトクリフ氏はBBCに対し、刑務所が攻撃を受けたと知って「気が滅入った」と語った。
「刑務所に収監されている間は、そこが自分の家になる。今朝、エヴィン刑務所が爆撃されたと知って、心が鋭く痛んだ。私は釈放された時に、自分の心の一部をあの場所に置いてきた」
ザガリ=ラトクリフ氏は、自分と同じように収監されていた人たちと「一番素晴らしい友情」を築いたと語った。
そして、「刑務所に閉じ込められている人々がおびえ、トラウマを抱え、自分たちの身を案じているなかで、おそらく自分たちに何が起きているのかを分かっていないと思うと、気が滅入りそうだ」と付け加えた。
イスラエルのカッツ国防相は23日、イスラエル軍が「テヘラン中心部にある(イランの)体制に関係する標的や弾圧当局を、前例のない規模」で攻撃したと発表した。
標的には、エヴィン刑務所のほか、イラン国内の反体制派の抑圧を担う準軍事組織バシジの本部、強力なイスラム革命防衛隊(IRGC)の国内治安本部、「イデオロギー本部」やパレスチナ広場に設置された「イスラエル消滅までの残り時間を表示する」時計などが含まれる。
イランの準国営メヘル通信によると、この時計は損傷を受けていないという。
この時計は、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が2015年に、「25年以内にイスラエル国家は消滅する」と予言したことを受けて設置されたもので、2040年までの残りの日数を数えている。
イスラエル軍は、IRGCの施設「サル・アッラー」を含む複数の軍事指揮センターに対しても、戦闘機で攻撃したとしている。「サル・アッラー」はテヘランを安全保障上の脅威から守る目的で設置されているとされる。
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イスラエル軍は、「フォルドの(ウラン)濃縮施設につながる経路を遮断するための攻撃を実施」したとも発表した。
トランプ米大統領は21日夜、大型貫通爆弾(MOP)を使ってフォルドのウラン濃縮施設などを攻撃し、「抹消」したと主張した。イランは地下約80メートルにある施設で、純度60%までウランを濃縮していたとされる。
原子力発電所では通常、3~5%の濃縮度のウランが燃料として使用される。60%は兵器級にきわめて近い濃縮度だ。
イランは、アメリカは国際法を尊重していないと非難し、核施設が攻撃を受ける前に、フォルドから撤退していたと主張した。19日に撮影された衛星画像には、フォルドの核施設を離れる複数のトラックが写っていた。
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は23日、フォルドで「地中貫通爆弾」が使用されたことを示す複数のクレーターが確認できると述べた。
「使用された爆発物の量、そして遠心分離機が極度に振動に弱いことを踏まえると、極めて深刻な損害が生じたと考えられる」と、オーストリア・ウィーンで開かれたIAEA理事会で述べた。
グロッシ氏によると、IAEAはイスファハンの核施設の敷地内にある複数の建物が22日に、アメリカの巡航ミサイルの攻撃を受けたことを確認したという。標的には、ウラン転換プロセスに関連する施設や、濃縮ウランの貯蔵に使用されるトンネルの入り口も含まれる。
アメリカも、ナタンズの地下濃縮施設を地中貫通爆弾で攻撃したとIAEAに伝えたという。
グロッシ氏は、イランが保有する濃縮ウランについて「説明」を得るため、IAEAがイランの核施設にアクセスするのを許可するよう求めた。5月末の時点で、イランが60%濃縮ウランを核兵器9発分に相当する量まで蓄積していると、IAEAは述べていた。
イスラエル軍は、13日にイランへの攻撃を開始した際、イランが最近、核爆弾の部品の製造に向けて「具体的な進展」を遂げたとする情報を得たとしていた。
イランはこの主張を否定し、自国の原子力開発計画は平和目的のものだとしている。
イスラエルは核兵器を保有していると広く考えられているが、同国はこれを否定も肯定もしていない。