取材者ポツリポツリ、25億円男に厳しい現実も…情熱が衰えぬ理由「彼と同僚になれて」

 光があれば影もある。ドジャースのマイケル・コンフォート外野手には厳しい現実が待っていた。ワールドシリーズ開幕を翌日に控えた23日(日本時間24日)の記者会見。ドジャース選手たちは第1戦で先発する左腕スネルを除いて帯同選手全員がバックネット裏のコンコースに集まった。

 取材者は聞きたい選手のところに行って質問をぶつける。オールスター戦やワールドシリーズ前日は恒例となっている取材スタイルだ。大谷翔平やベッツ、カーショーのように人垣ができる選手がいれば、テオスカー・ヘルナンデスやエドマンらレギュラー選手も常に人は絶えない。だが、ポストシーズンでロースター入りできていないコンフォートには取材者がポツリポツリと訪れる程度だった。「質問していいですか?」「もちろん、僕には時間はいっぱいある」。なんと答えていいか分からなかった。

 こんなはずじゃなかった。昨オフに1年1700万ドル(約25億1000万円)でドジャース入り。通算179本塁打を誇る左の強打者と期待された。だが、開幕から極度の打撃不振。138試合出場して打率.199、12本塁打、36打点、OPS.638。2015年のメジャーデビュー後はキャリアワーストの成績に終わった。

 レギュラーシーズンでは粘り強く起用されたが、ポストシーズンではワイルドカードシリーズから登録外。試合前のフリー打撃と打撃練習中のボール拾いが、グラウンドでの主な活動となった。それでも、大きな目の力は衰えていなかった。

「コンディションを保つのは簡単ではありません。試合勘を維持するのは難しいですが、自分たちの投手相手に実戦形式の打撃練習をしたり紅白戦をしたり。できる限りの準備は全てしてきたつもりです。どんな形でチームに貢献できるかわかりませんが、このチームに全力を尽くしたいんです」

 これまでメッツ、ジャイアンツといった名門球団でプレーしてきた。だが、ここ13年で12回も地区優勝しているドジャースは「特別だ」という。

「ドジャースでの経験は素晴らしいものです。本当に優れた選手がいて、球団はそういった選手たちにしっかり投資している。何よりスカウティングから選手育成、コーチ陣の準備、与えられる情報まで、あらゆる面でエリートレベルなんです。だからこそ、このチームはここまで強いんだと思います」

 メジャー10年目。経験豊富だが、スプリングトレーニング中にはロバーツ監督から「ショウヘイから目を離すな」と厳命された。チームメートとなった、この1年で「学ぶことは多かった」という。記者から目線を外さず、しかも情熱的に話してくれた。

「どれだけ努力しているか、ということです。もちろん信じられないほどの才能の持ち主ですが、それ以上に努力家です。投手として腕の健康を保たなければいけないし、そのためのケアも常に欠かしてない。投球の研究も常に続けてますし、打撃練習でも常にバットスピードを鍛え、正確に打球を捉える練習をしている。『休む』ということを知りません。彼から学んだ最大のことは、あれほどのレベルになるためには、それだけの努力を続けなければならないということです」

 ワールドシリーズは最大でも7試合。その戦いが終われば、コンフォートは再びフリーエージェントとなる。だが、決して無駄な時間ではなかったと言い切れる。

「ショウヘイは間違いなく史上最高の野球選手だ。3本塁打を放って10三振を奪うなんて、信じられない。彼とチームメートになれて本当に良かったと思っている」

 これまでのキャリアで今年以上の苦闘を味わったはずはないのに……。32歳の表情は充実感で満ちていた。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

関連記事: