FOMC議事要旨、雇用よりインフレのリスク大きいと大半が判断
米連邦準備制度理事会(FRB)が20日公表した7月29-30日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、雇用を巡る懸念よりもインフレリスクの方が大きいと大半の当局者が指摘した。関税の影響を背景に、FOMC内で見解の相違が拡大している。
当局者らはインフレ高進と雇用軟化の懸念を認めつつ、参加者18人のうちの大半は「この2つのリスクのうちインフレ上振れリスクの方が大きいと判断した」という。
FOMCは同会合でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25-4.5%で据え置いた。見通しの不確実性が高まっていることを理由に挙げた。会合後に公表された声明では、労働市場は「堅調」とする一方、インフレは「幾分高止まりしている」としていた。
議事要旨によると、当局の2大責務へのリスクはおおむね均衡していると幾人かが指摘した一方、労働市場の方が気掛かりだと表明した当局者は2人いた。議事要旨では当局者の名前は明らかにしていないが、FRBのウォラー理事とボウマン副議長は0.25ポイントの利下げを主張し、金利据え置きの決定に反対票を投じた。
パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、関税によるインフレへの影響は一時的となり得るが、より持続的な影響に備える必要があると述べた。
FOMCは関税による物価への影響が一時的なものにとどまるのか、もしくはより持続的なインフレ加速につながるのか議論した。
「幾人かの参加者は、インフレ率が長期間にわたり2%を上回っていることから、関税引き上げの影響が長引いた場合には長期のインフレ期待が不安定になるリスクが高まると強調した」と議事要旨では記された。
関税の影響が消費財やサービス価格に全面的に表れるまでには時間がかかる可能性があるとも、多くの当局者が指摘した。
パウエル議長は22日、カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム「ジャクソンホール会合」で講演を予定する。同氏は過去にもこの場を使って、金利に関する投資家の見方を方向付けてきた経緯がある。
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最近の経済指標はインフレに対する慎重な見方を裏付ける一方で、雇用への信頼感を揺るがす内容だ。
先週公表された7月の米生産者物価指数(PPI)は3年ぶりの大幅上昇となり、関税に関連する輸入コストの上昇を企業が価格に転嫁しつつあることを示唆した。一部のFRB当局者は、関税が来年に入っても長期間、物価に影響を及ぼすとの懸念をこれまでに示している。
雇用情勢
しかし今月初めに発表された7月の米雇用統計では、雇用者の伸びはこの3カ月に大きく減速したことが明らかになった。雇用者数の伸びは5-6月分が大きく下方修正されたほか、7月の失業率は4.2%に上昇した。
当局者は9月半ばの次回会合までに、雇用統計とインフレ関連データをさらに確認することになる。
トランプ大統領はこの日、クックFRB理事に辞任を要求した。これに先立ち、米連邦住宅金融局(FHFA)のパルト局長は2件の住宅ローンに絡み、クック理事を捜査するようボンディ司法長官に書簡で要請していた。
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トランプ氏はFRBに対して繰り返し利下げを要求しており、政権高官やパウエル氏の後任候補と目される人々からも、利下げを求める声が出ている。ベッセント米財務長官は先週、金利は「おそらく150、175ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い水準にあるべきだろう」と語った。
議事要旨では、当局者が金融の安定を巡って議論したことも示された。幾人かは「資産価格高止まり圧力への懸念」を指摘した。
原題:Fed Minutes Show Majority of FOMC Saw Inflation as Greater Risk(抜粋)