長期金利一時約17年ぶり1.6%:識者はこうみる

 7月23日、23日の国内債券市場で、新発10年国債利回り(長期金利)が一時1.600%と2008年10月以来の水準まで上昇した後、同9.0bp上昇の1.590%となった。2022年11月、都内で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[23日 ロイター] - 23日の国内債券市場で、新発10年国債利回り(長期金利)が一時1.600%と2008年10月以来の水準まで上昇した後、同9.0bp上昇の1.590%となった。

市場関係者に見方を聞いた。

◎長期金利は秋までに1.8%到達の可能性も

<関西みらい銀行 ストラテジスト 石田武氏>

日米が関税について合意し、これで日銀が利上げに動いていけるとの道筋ができたことに加え、関税交渉の一段落を受けて石破首相が辞意を固めたとの報道が材料となり、金利は短期から超長期まで総じて上昇している。ここから首相が変わる、もしかすると(衆院)解散があるかもしれない、そうなると与党が負けて減税、財政拡大、さらに格下げの可能性まで市場は意識し始めている。

そんな中で長期金利は約17年ぶり高水準となる1.6%をつけたが、日銀が1%まで利上げするとのコンセンサスが変わらないのであれば、ここはそれなりに魅力的な水準と思われるため、投資家がいったん買いを入れて金利は程なくして再び1.5%台に押し戻された。

ただ解散して総選挙で与党が負けて、格下げまで、というような流れに本格的になってくれば、長期金利は秋ごろまでに1.8%までポンと上昇してしまう可能性もあると考える。

少なくとも次の首相が誰になるか、解散するのかしないのかが見えてくるまでは、円債市場は不安定な状況が続くだろう。円債市場の反応としては日銀の利上げ観測の高まりはベアフラット要因、財政懸念や格下げはベアスティープ要因で、いずれにしても金利は上昇するとみられる。よほど財政健全派の人物が次期首相とならない限り、金利低下は見込みづらい。

◎長期金利1.7%付近まで一段の上昇も

<SBI証券 チーフ債券ストラテジスト 道家映二氏>

きょうの金利上昇の材料は二つ。石破茂首相の退陣の可能性が市場で織り込まれる中で、財政拡張懸念が広がった。今回の参議院選挙結果では比例も含めて、積極財政派の参政党と国民民主党が躍進し、与党は参議院でも過半数を割ってしまった。今後政策を決めていく上では、野党と協力をしていかなければいけない。消費税減税も含めて、国債の格下げリスクが意識され、超長期ゾーンの金利上昇圧力につながった。

一方、日米関税交渉がなかなか良い結果で収まり、日銀の利上げを手前に持ってくる話となった。中短期ゾーンにも金利上昇圧力がかかり、イールドカーブが全体的に持ち上げられ、それに引っ張られる格好で、長期金利は1.6%を付けた。

ここから金利が一段と上昇する可能性がはある。直近では円債を買っていた投資家がいたこともあり、売らなければいけなくなる可能性がでてきた。長期金利が節目を抜けたことは心理的にも大きい。今後の政局や財政の動向をにらみながら、長期金利は1.7%付近まで上昇してもおかしくない。

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