【日本市況】TOPIX史上最高値、トランプ関税EU前進-円が上昇
24日の日本市場は東証株価指数(TOPIX)が史上最高値を更新した。トランプ米大統領の関税交渉が日本との合意に加えて欧州連合(EU)とも前進との報道を受けて世界経済への懸念が後退している。
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TOPIXは連日の値上がりで、2024年7月の最高値を超えた。米関税への懸念後退で電気機器が上昇、また日本銀行が利上げしやすくなるとの見方から銀行株が上がった。日経平均株価も大幅高で最高値に迫った。リスクオンの流れで安全資産の債券は中長期債が小幅下落(金利は上昇)、円相場は対ドルで上昇している。
米関税政策についての不確実性が低下している一方で、石破茂首相の進退をめぐる不透明感が浮上している。辞任やその時期、後任についての選択肢が多く、市場は反応を読みあぐねている。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは24日付リポートで、米関税を巡る不確実性はある程度払しょくされて日銀は追加利上げを検討しやすくなったと記した。タイミングは「10月会合とみている」とした。石破政権については退陣がほぼ既定路線とした上で、ハト派的な政策運営を選好しているとみられる高市氏などが後任の場合は利上げの障害となり得る点には留意したいと指摘した。
国内株式・為替・債券の動き-午後3時半過ぎ- 東証株価指数(TOPIX)終値は前日比1.7%高の2977.55
- 24年7月11日に付けた終値での史上最高値(2929.17)を上回った
- 日経平均株価は1.6%高の4万1826円34銭
- 24年7月11日の終値最高値(4万2224円02銭)まで1%未満
- 円相場はニューヨーク終値比0.2%高の146円21銭
- 長期国債先物9月物の終値は前日比11銭安の137円51銭
- 新発10年債利回りは0.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.595%
株式
東京株式相場は続伸した。米関税交渉が進展していることで、世界景気への懸念が和らぎ、東証33業種全てが上げる全面高となった。
TOPIXが終値ベースの史上最高値をほぼ1年ぶりに更新した。日経平均株価も最高値まで1%未満に迫っている。
日銀が利上げをしやすくなるとの思惑から銀行株に買いが先行。電気機器や機械のほか、米ハイテク企業の好決算を受けて人工知能(AI)関連も高かった。
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インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、米関税に伴う日本経済への悪影響は従来に比べて抑制された水準にとどまる見通しで、センチメントを押し上げていると話した。日銀については従来の想定よりも早めの利上げをする可能性が出てきたとしている。
米関税政策の今後については、8月1日までにEUを含めて他の国と合意ができるかどうかというところだろうと指摘した。
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りそなアセットマネジメントの下出衛チーフストラテジストは「グローバルで見れば日本株はまだ出遅れ感がある」とし、日経平均は近く最高値を更新するだろうとの見方を示した。
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為替
外国為替市場で円相場は一時1ドル=145円台後半に上昇。日米通商合意で日本経済の先行き不透明感が和らぎ、日銀が追加利上げに動きやすくなるとの思惑から円買いが優勢だ。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、節目の146円を抜けたことでドル売りが強まったと指摘。同時に特段ヘッドラインが出たわけではなく、ドルが145円台後半から一段と下げる材料は見当たらないと述べた。
また、日米通商交渉の合意を受けた日銀利上げ期待の高まりが円を支えているとも述べた。「日銀は利上げできる環境が整った。7月日銀会合では関税合意の影響を見極める必要があり利上げは難しいが、タカ的なスタンスが示される可能性は高い」との見方を示した。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、関税政策を巡る先行きの不確実性というもやが晴れ、「年内利上げの可能性が出てきたことが円を支えている」と述べた。
債券
債券相場は中長期債が下落。日米通商交渉の合意を受けて日銀が早期の利上げに踏み切るとの見方から売りが優勢だった。超長期債は上昇した。
新発10年債利回りは一時1bp高い1.6%に上昇した。2年や5年債の利回りも上昇した。超長期の30年債などの利回りは低下した。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、日米通商交渉が想定より早く合意したことを受けて、日銀が7月の金融政策決定会合で利上げに踏み切る可能性はゼロではなくなったと語る。遅くとも「10月までには利上げがあると思っていた方が良い」とした上で、長期金利は1.5ー2%のレンジに移行しており、2%近くまで上昇してもおかしくないと言う。
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スワップ市場が織り込む年内の日銀利上げ確率は8割前後で推移している。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは超長期債の上昇について、日銀の利上げを織り込む中で短いゾーンを売って長いゾーンを買う「フラットナー(平たん化)取引」があった可能性を指摘する。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「石破首相が一両日中にも退陣するといった見方が後退していることも影響したのかもしれない」と言う。
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新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.840% 1.130% 1.595% 2.575% 3.085% 不成立 前日比 +1.0bp +1.0bp +0.5bp -2.5bp -4.5bp -この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。