AIは仕事を「奪わない」 職場で実際に起きていることとは

ニューヨーク(CNN) 人工知能(AI)が近いうちに仕事を奪うことはおそらくない。少なくとも仕事のすべてを奪うことはない。 企業が人員削減を進め、AIモデルが事務作業をこなす能力を高め、AIが業務により深く組み込まれていくなか、人工知能が人間の労働者に取って代わるのではないかという懸念はこの1年くすぶり続けてきた。幹部社員向け再就職支援企業チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは7日、4月に2カ月連続で企業が人員削減理由として挙げたトップはAIだったと明らかにした。 マイクロソフトは先週、AIによる仕事の変容に関する報告書を発表し、「職場におけるAIをめぐる不安は現実のものだ。失職に対する恐怖から、急速に進化する技術についていかなければならないというプレッシャーまである」と記した。 しかし専門家らは、職場におけるAIの実態はそれほど白黒はっきりしたものではないと指摘する。企業はAIを使って仕事の一部を自動化しているが、職務全体を置き換えているわけではない。 企業幹部はAIにできることとできないことを見極め、人間にしかできない責務を中心に既存業務を組み直しており、その過程で数千人分の職が削減されている。 「現在のAIやロボティクス技術によって、実際に職務全体が完全に自動化されて消えている仕事はごくわずかだ」。マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナー、アレクシス・クリフコビッチ氏はそう述べた。 クリフコビッチ氏は、同社の調査を引用し、AIは仕事に関連する活動の57%を自動化できる技術的能力があると説明する。ただ、その割合は組織全体のさまざまな職務や責務の「断片や一部」に分散している。 デジタルサービス・コンサルティング企業インセドの共同創業者ニティン・セス氏は、自社は顧客企業がAIを使って少なくとも20~25%の生産性向上を実現するのを支援しているが、それと同じ規模で人員を減らしているわけではないと主張する。AIが担うのは、さまざまな役割の一部に限られるからだ。 「リサの4分の1、ジェシカの4分の1、ニティンの4分の1、さらに誰か別の人の4分の1を取り出して、1人分にすることはできない」(セス氏) AIが仕事を奪うという恐怖に最も大きく揺さぶられているのはテック業界だ。ソフトウェアエンジニアはコーディング支援のためにこの技術を一層取り入れるようになっており、グーグルの調査部門が昨年9月に実施した調査によると、テック系従事者の90%が仕事でAIを使っている。 しかし、ソフトウェアエンジニアの仕事には、コーディング以外にもはるかに多くの内容が含まれる。コードのレビュー、システム設計、問題のトラブルシューティングに加え、何を構築するかの判断も伴う。企業はそれを反映するために職種名を調整する可能性があると、アンソロピックで「Claude Code」を統括するボリス・チェルニー氏は言う。 「年末までには、ソフトウェアエンジニアリングという概念が消え始めると思う」と、チェルニー氏は3月にCNNに語った。仕事の範囲が広がり、業務に占めるコーディングの割合が小さくなるにつれ「ビルダー」という言葉の方が肩書としてふさわしくなるかもしれないというのだ。 直近ではフィンテック企業ボルトでの勤務経験があり、ソフトウェアエンジニア歴約10年のスジャータ・スリダラン氏は、自身もAIを使っているが、それでも仕事には問題解決や批判的思考が必要だと、CNNへのメールで述べた。 「AIがますます使われるようになるなかで、仕事で実際に必要とされるスキルは、適切なコード品質を見分けられるか、問題解決ができるかへと移っている」(スリダラン氏) AIが失職に寄与していないという意味ではない。ただ、AIが職務全体を引きうける可能性は低い。チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの報告書によると、AIは今年これまでに4万9000人超の人員削減の理由として挙げられている。 スクエアとキャッシュアップを傘下に持つフィンテック企業ブロックは今年、AIによってより小規模なチームでより多くの業務が可能になったとして、従業員の40%を削減した。 PwCの米国最高AI責任者ダン・プリースト氏によると、「ある程度の雇用破壊は近い将来」起きうる。それでも同氏は、大半の企業では大規模な解雇が起きることはなく、職種全体が現時点でリスクにさらされているわけではないとの見方を示す。 マイクロソフトは、AIを使う10カ国の労働者2万人を調査した報告書で、従業員の評価指標やインセンティブについて、大半の企業はAIが仕事を変えている状況に合わせた調整はまだ行っていないと指摘した。 その代わり、多くの企業は人間の労働者に必要なスキルを把握している段階にある。 AIモデルが進化し、より多くの事務作業を担う可能性があるなかで、テック業界の状況は変わり続けていくかもしれない。例えばアンソロピックは先ごろ、ピッチブックやクレジットメモの作成といった金融業務向けに構築された新たなAIエージェントを発表した。 「それは下から始まり、上へ上へと進んでいく」と、エグゼクティブサーチ企業キングスリー・ゲートの共同創業者で最高戦略責任者のウメシュ・ラマクリシュナン氏は述べた。「それがどこで止まるか、私には分からない」

CNN.co.jp
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