トランプ氏、FRB議長解任の「計画なし」 解任の公算大との報道後

トランプ米大統領は、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を近く解任する可能性が高い。連邦議会議事堂で6月撮影(2025年 ロイター/Kevin Mohatt)

[ワシントン 16日 ロイター] - トランプ米大統領は16日、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長を解任する計画はないと述べた。ただ、パウエル氏を改めて批判したほか、解任の可能性を完全には否定しなかった。

これに先立ち、関係筋はロイターに対し、トランプ大統領がパウエル議長の解任に「オープン」と明らかにしたほか、ブルームバーグはホワイトハウス当局者の情報として、トランプ大統領がパウエル議長を近く解任する公算が大きいと報じていた。

関係筋によると、トランプ氏はパウエル議長について一部の共和党議員に尋ね、肯定的な反応を得たという。

トランプ氏は記者団に対し、報道は事実でないと述べたが、解任の可能性について15日に共和党議員らと意見を交わしたことを認めた。

解任の可能性を排除したかとの質問に対しては「何も排除していない」と応じながらも、「不正行為で辞任しない限り、解任の可能性は非常に低いと思う」と述べた。

パウエル議長について「遅すぎる」とし、「ひどい議長」で「何もするつもりがない」と批判を新たにしつつも、数カ月後に後任を選出することに注力するとした。

米メディアのセマフォーによると、 下院金融サービス委員会の共和党議員が16日午後6時にパウエル議長と会合を開く予定だったが、会合は中止された。

トランプ氏がパウエル議長を近く解任する可能性があるとの報道を受け、外国為替市場でドルが急落するなどの動きが出たが、トランプ氏がその可能性は極めて低いとの見解を示したことを受け、ドル相場は回復。米株式相場は上昇して取引を終え、米国債利回りも下落幅を縮小した。

トランプ氏はここ数カ月、FRBの金融政策を繰り返し批判し、FRBが利下げを拒否していることに憤慨している。

トランプ氏はパウエル議長の辞任を求めているが、大統領には金融政策を巡る見解の相違で同議長を解任する権限はない。

パウエル氏は来年5月15日までの任期を全うする意向を繰り返し表明している。

トランプ氏は16日に放送された米情報番組「リアル・アメリカズ・ボイス」のインタビューでもパウエル氏の解任を検討しているかと問われ、「彼が辞任したいなら歓迎する。それは彼次第だ。私が解任すれば市場が混乱すると言われている」と述べた。 もっと見る

アナリストらは、パウエル議長に対する圧力が今後も続き、物価安定と雇用最大化という責務を遂行するFRBの能力に悪影響を及ぼすことを懸念している。

JPモルガンの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は「FRBの独立性の低下は、関税による上昇圧力や幾分のインフレ期待上昇に既にさらされているインフレ見通しの上振れリスクを高める可能性が高い」とし、パウエル議長への解任圧力が 終わったとは思わないと述べた。

その上で、議長への圧力が続けば、投資家がインフレ上昇リスクからの保護を一段と求めるため長期金利が上昇する可能性が高く、米政府の借り入れコストは下がるどころか高まるだろうと指摘した。

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