トランプ米大統領、ウクライナに武器供与と発表 先週の一時停止から一転
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ドナルド・トランプ米大統領は7日夜、アメリカがウクライナに追加の武器供与を行うと方針を示した。ホワイトハウスを訪れたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会食前に記者団に対して、ウクライナに「追加の兵器を送る」と話した。アメリカ政府は1日に、重要兵器の一部供給を停止すると発表したばかり。
トランプ氏はネタニヤフ首相や両国政権幹部が同席する中で記者団を前に、自分は中東やインド・パキスタンなど世界各地で平和を実現しようとしているのだとさまざまな話題に触れる中で、ロシアとウクライナでも戦争を止めようとしているのだと切り出した。
続けて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、「プーチン大統領のことをまったく良く思っていない」と言い、「プーチン大統領が攻撃を止めていないことに、正直言ってがっかりしている。良く思っていない」とも述べた。
しばらくして記者団にあらためてウクライナへの武器追加供与について質問されると、「追加の兵器をいくらか送る。そうしなくてはならない」とトランプ氏は答えた。
「(ウクライナは)自衛できなくてはならない。(ウクライナは)今、とても厳しく攻撃されている。追加の兵器を送らなくてはならない。主に防衛用の兵器だ。(ウクライナは)とてもとても、厳しく攻撃されているので。あのとんでもない状態の中で、あまりに大勢が死んでいる」と、トランプ氏は話した。
米国防総省はこの後、短い声明を発表し、「トランプ大統領の指示を受け、国防総省はウクライナが自衛できるよう追加の防衛用兵器を送る。これは、持続的な平和の確保と殺害の停止に向けた我々の取り組みの一環だ」と述べた。
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先週の時点で供給が一時停止されたとされる兵器には、地対空ミサイル「パトリオット」や精密砲弾などが含まれる。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は供給継続を強く求め、パトリオット防空システムを「本当に命を守る守護者」と表現していた。
ホワイトハウスは1日、米国防総省による対外軍事支援の見直しを受け、「アメリカの利益を最優先する」決定を下したと発表していた。
ゼレンスキー大統領は4日にトランプ氏と電話会談。「防空の可能性について協議し、空の防衛強化に向けて協力することで合意した」とソーシャルメディアで明らかにし、「とても大事で実りある会話」だったと評価していた。
ウクライナではこのところ、ロシアによる無人機(ドローン)やミサイルによる激しい攻撃が続いている。首都キーウを含む各地の都市が標的となっており、3日の攻撃では当初死者1人と言われていたものの、これまでに3人の死亡が確認された。
トランプ氏の方針転換は、こうしたなかで発表された。
キーウで取材するBBCのポール・アダムス記者は、1週間にわたる不透明な状況の後に発表されたこの決定は、ウクライナに安堵(あんど)をもたらすものだと評している。
ウクライナ政府は、一部兵器の供給停止が続けば、激化する空爆や前線でのロシアの進軍に対する防衛能力が損なわれると警告していた。
ロシアが2022年2月に全面侵攻を開始して以来、ウクライナでの戦争は3年以上にわたり続いている。
トランプ氏はこれまでに、両国間の停戦合意を仲介しようと複数回試みてきたが、交渉はほぼ停滞している。
トランプ氏は3日、プーチン大統領との電話会談後、紛争終結に向けた「進展は見られなかった」と述べ、「彼(プーチン大統領)は止めようとしていないと思う」と話していた。
この電話会談の数時間後にウクライナ政府は、ロシアがキーウを含む各地に向けて、過去最多となるドローン539機とミサイル11発を発射したと発表した。攻撃はスーミ州、ハルキウ州、ドニプロペトロウシク州、チェルニヒウ州にも及んだ。
ゼレンスキー大統領は国際社会、特にアメリカに対し、ロシア政府への圧力を強め、追加制裁を科すよう呼びかけている。