MLB:打撃不振の大谷翔平、影響の大きさゆえ求められる修正力
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頭にゴーグルを乗せ、シャンパンとビールが染みたTシャツ姿で取材に応じた大谷翔平。2勝1敗で迎えたフィリーズとの地区シリーズ第4戦は、拙攻もあって延長にもつれ込んだ。最後は、相手投手の失策でサヨナラ勝ちという意外な展開に大谷は「きれいに勝てる試合ばかりではない」と話し、その言葉にもどかしさをにじませたが、地区優勝そのものも中盤以降は足がもつれ、最後は二の足を踏みながら手にした。
実は後半に入ってから、「ちょっと、おかしいな」とレンジャーズでの監督経験もあるクリス・ウッドワード一塁コーチは、不安を覚えていたという。
「雑なプレーが目立っていた」。8月半ばに入って、その懸念をチーム全体に共有した。「フィニッシュラインを越えるまで、気を抜くな」。ただ、それがすぐに結果と結びついたわけではない。
8月11日からのエンゼルス3連戦ではスイープを許した。直後、パドレスに3連勝したが、その翌週、今季119敗を喫したロッキーズ4連戦では2勝2敗。9月に入ると、共に地区最下位だったパイレーツ、オリオールズに5連敗。
6日のオリオールズ戦では、山本由伸が九回2死までノーヒットノーランのピッチングを続けたが、終わってみれば、サヨナラ負けの屈辱を味わい、振り向けば地区2位のパドレスが1ゲーム差に迫っていた。
もっとも、「あの頃、かなり良くなってきた」とウッドワード・コーチは言う。
「すぐに結果に表れるようなことではないから。あとは、ちょっとしたきっかけというか、例えば、重い球を動かすとき、最初はものすごい力が必要だけど、一度動き始めれば、あとは小さな力を加えるだけで十分に動くだろ? その最初の力を必要としていた」
ドジャースは翌7日の試合から、20戦で15勝。ウッドワード・コーチにしてみればそれは偶然ではなかったが、では、どんな力が働いたのか。
チームキャプテンの一人、ミゲル・ロハスに聞くと、「9月7日の試合(敵地でのオリオールズ戦)がターニングポイントだった」と振り返った。
「あの試合では初回、翔平が先頭打者本塁打を放った。あれで、沈んでいたチーム全体が『これでいける』という空気になった」
大谷は三回にもオリオールズ先発の菅野智之から2打席連続本塁打を放ってチームを勝利に導いたが、もたらした効果は、その1勝にとどまらなかった。
ロハスが続ける。
「誰のホームランでもいい、というわけではない。翔平だったから、あれだけ勢いづいた」
大谷の本塁打が、重い球を動かした。
"誰が打つのか"。それが問われることは、今回の地区シリーズでも目の当たりにした。
最初の2試合で7打数無安打、5三振だったフィリーズのカイル・シュワバーが第3戦では2本塁打。1点ビハインドの四回、山本から放った場外本塁打(ドジャースタジアムでは、外野の屋根に当たった場合、場外本塁打と認定)で、流れが変わった。
フィリーズのロブ・トムソン監督も、「あの一発で、みんな目覚めたようだった」と表情を変えずに言っている。
第4戦も流れはフィリーズにあった。もしもあの試合もドジャースが落としていたら、今ごろ、自宅でオフを迎えているのは、彼らかもしれなかった。
ところで、大谷はその地区シリーズで18打数1安打、9三振。投手としては第1戦で好投し、チームに勝ちをもたらした一方、打者としては結果を残せなかった。
フィリーズには第1戦と第4戦で先発したクリストファー・サンチェスのような左の好投手が多く、「左バッターにとっては、思い通りいかない打席が多かった」と大谷。
その左投手による内角へのシンカー、外角低めのスライダーに苦しんだが、本来、内角のシンカーは決して苦手な球ではなく、レギュラーシーズンでは打率.333。また、外角低めのスライダーを見逃してストライクを取られていたが、そこはそもそも打っても、打率は1割にも満たないコース。
ドジャースのデイブ・ロバーツ監督は、「判断を間違えている」と大谷の打撃に苦言を呈し、それは、打つべき球を打たず、振るべきではない球に手を出している、という意味だと解釈できるが、内角のスライダーを捉えにいき、外角低めのスライダーを見逃すこと自体、間違った判断ではない。打てなかったということは、やはり相手が上回ったのだ。
ただ2球だけ、腑(ふ)に落ちない球があった。
いずれも10月4日の初戦。1球は、五回2死一塁の場面で1−2というカウントから、サンチェスのシンカーを見送って三振。もう1球は七回無死一、二塁の場面でやはり1−2のカウントでマット・ストラームのシンカーを見逃した。スライダーに見えたのだろうが、今季、このコースのシンカーを見逃して三振したことは一度もない。デビューした2018年まで遡っても2回しかない。
そこに何らかのズレがあるのだとしたら、その修正がリーグ優勝決定戦、その先のワールドシリーズにおいて求められるのかもしれない。彼が打つか、打たないか。それは打線全体に影響を及ぼすのだから。
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