天皇陛下、モンゴル語を交えあいさつ…「深い蒼天の季節に」大統領夫妻主催の晩餐会
天皇陛下が8日夜、モンゴルのフレルスフ大統領夫妻主催の 晩餐(ばんさん) 会で述べられたあいさつの全文は次の通り。
スフバートル広場で歓迎式典に臨まれる天皇、皇后両陛下(8日、ウランバートルで)=大原一郎撮影フレルスフ大統領閣下、ボロルツェツェグ夫人、ご列席の皆様、ター・ブフンテェ・ダヒン・オールズスンダー・タータェ・バェン(皆様との再会をうれしく思います)。
この度は、私と皇后を国賓としてお招きくださり、大統領ご夫妻を始めモンゴルの皆様から多大なるご配慮とお心遣いをいただきましたことに、心より御礼申し上げます。3年前、東京で大統領ご夫妻を皇居にお迎えし、その後、モンゴル国立馬頭琴交響楽団の演奏会をご一緒に鑑賞したことは、大変良い思い出となっています。
私は2007年にモンゴルを初めて訪問しましたが、その時の経験は大変印象深く、宝物となっています。また、今回は日本の天皇として初のモンゴル訪問であり、両国の一層の友好関係の増進につながることを願うとともに、国民的祭典であるナーダムの開会式に出席する機会をいただいたことを、大変ありがたく思います。
また、この度、フレルスフ大統領のご発意により、ナーダムの開会式が行われる7月11日が、国連の場において「世界馬の日」となったことは意義深いことと思います。
一昨日に当地に到着しましたが、経済発展等に伴い、前回訪問時よりも更にモンゴル社会全体に力強さを感じるとともに、深い 蒼(そう) 天の下、競うように草木が芽吹き、美しい花を咲かせると表現される、最も麗しい季節に皇后と共に貴国を訪問できたことをうれしく思っております。
我が国とモンゴルの深い友好・協力関係の基盤となっているのは、人と人とのつながりです。前回訪問の際、私は当時の両国関係が頂点ではないとお話ししました。実際に、例えば2007年のモンゴルから日本への留学生は1100人ほどでしたが、20年弱の間に、4倍以上に増えています。
今回の訪問では、日本で学んだ方々が活躍されている教育・医療施設を訪れる予定であり、次世代を担う若者たちや日本で学び、後進を指導されている方々とも交流できることを、心からうれしく思います。
また、前回訪問時に雨が降った際、モンゴルでは雨が降るのは非常に縁起が良いとの言い習わしがあると聞き、乾燥地帯で暮らす人々にとっての水の大切さを実感しました。
昨日、私は、ウランバートル上下水道公社とガチョールト水源を視察しましたが、両国の人々が協力し、大切な水資源の安定的確保という課題に取り組んでいる姿に、感慨を覚えました。そして、ガチョールト水源は幸い雨の中でした。
人と人とのつながりや思いやりのありがたさを実感するのは、苦しいときであると思います。日本が1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、そして2024年の能登半島地震などの大きな災害に見舞われたとき、モンゴルの人々はすぐさま支援の手を差し伸べてくれました。私たち日本人を勇気付けていただいたモンゴルの方々の温かい気持ちを、私たちは決して忘れません。
今日(こんにち) の両国の深い友好関係と、それに支えられた人材育成、ものづくり、医療、スポーツ、そして環境保護など、多岐にわたる協力関係の発展の基礎には、外交関係樹立以前からの長年にわたる両国の先人たちの交流があるということを忘れてはならないと思います。両国関係の発展に情熱を注ぎ、様々な困難を乗り越え、力を尽くしてこられた全ての方々に深く敬意を表します。
両国間の交流や協力の可能性は、モンゴルの大草原のように、果てしなく広がっています。今後、両国の架け橋となる若い世代が先人たちの歩みを受け継ぎ、広大な土地にまかれた協力の種が多くの花を咲かせてほしいと思います。そして、若い人たちが、その新たな活力を存分に発揮することで、両国関係が、モンゴルの青き大空・テンゲルに向けて更なる高みへとどこまでも発展していくことを願います。
本日のすばらしい宴を催していただいたフレルスフ大統領及びボロルツェツェグ夫人に感謝申し上げるとともに、ここに杯を挙げ、大統領ご夫妻、両国国民のご健勝とご多幸、そして、日・モンゴル関係の一層の発展を心から祈ります。
ザー・ホンダガ・ウルグイー(では、乾杯しましょう)
ター・ブフン・サェハン・ナーダーラェー(ナーダムを楽しみましょう)