運動会で「うちの子だけ違うシャツ」 "卒対"不参加で仲間外れ?保育園トラブルが法廷へ

「楽しみにしていた運動会が、卑劣な差別行為によって悪夢と化しました」

そう語るのは、東京都墨田区の保育園に子どもを通わせていた40代の男性Aさん。

「卒園対策委員会(卒対)」という保護者の一部でつくる組織が、園児におそろいのTシャツを着せる企画を実施し、その輪から我が子だけが外され心に傷を負ったとうったえます。

Aさんは卒対の主催者を相手取って損害賠償を求める民事裁判を起こしたといいます。一体何があったのでしょうか。

●楽しみだった運動会で我が子だけ違うTシャツ

家族全員で心待ちにしていた運動会当日のことでした。

会場の体育館に到着したAさんは、目の前の光景に愕然としたといいます。

Aさんの子どもを除くすべての園児たちが、おそろいのデザインが施されたアイロン式プリントシールが付いたTシャツを着用していました。

「明白な『仲間外れ』でした」

この状況を目にした子どもは泣き崩れ、親としても胸が張り裂ける思いだったといいます。

楽しみにしていた運動会はつらい記憶として残り、その後、子どもは「急性ストレス反応」や「適応障害」の診断を受けたそうです。

●「卒対の行為は独善と横暴以外の何ものでもない」

卒対は、PTAと似た位置付けで運営されている「父母の会」の一部として結成された組織だといいます。

しかし、今回のおそろいTシャツ企画は、保育園による公式プログラムではなく、卒対が独自に計画したものでした。そのため、卒対に参加していないAさん家族には事前の連絡がなかったといいます。

「卒対の行為は『独善』と『横暴』以外の何ものでもありません。誰もが平等であるべき保育園という場を彼らは自己満足のためだけに汚しました」

写真はイメージ(yukiotoko / PIXTA)

●説明求めるも「問題はない」

運動会が終わったあと、Aさんは卒対の代表者におそろいTシャツについて説明を求めたといいます。すると、次のような発言が飛び出したそうです。

「差別行為はなく問題はないと考えている」 「今後のイベントでも同様のことをおこなう」 「人権侵害をしているのは、むしろ卒対に入らないあなた方だ」

Aさんは「一部の保護者のためだけの閉鎖的な組織に過ぎない卒対が、なぜここまで保育園全体を巻き込む権限を持てるのでしょうか」と理不尽さをうったえます。

●墨田区は園や保護者に通知を発出

Aさんが行政にも相談したところ、墨田区は「父母会などによる制作物を園に持ち込まないこと」などを求める通知を区内の全ての認可園に対して出したそうです。

Aさんが入手した通知には、以下のような記載がありました。

「父母の会や卒業対策委員会などの保護者の方による任意団体の活動に対して、園の運営の妨げや園児の不利益にならない限り、原則として区や園では関与しない」

「会での制作物等については、園での行事や保育時間中に園での着用や持ち込みを行わない」

「ただし、当該クラスの保護者や、行事に参加する保護者全員から同意を得たものについては、園での保育に取り入れることを可能とする」

●提訴に踏み切った保護者の思い

Aさんは2023年12月、このような差別行為が再び繰り返されることを防ぐためとして、卒対の関係者らを相手取って損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。

訴状で、Aさんは次のようにうったえています。

「卒対と通称される団体は、保護者の有志が、真に自由な意思に基づいて集まり、専ら保育園外においてのみ、活動を行うべきものである。

保育園内における保育時間や、その公式行事において、卒対としての活動を持ち込もうとするのであれば、保育園から同意を得る必要があるし、卒対に加入していない保護者やその園児が不当に取り扱われることのないよう、最大限留意する必要がある」

裁判は現在進行中といい、Aさんは改善されるまで闘い抜くと決意しています。

「保育園や学校はすべての子どもが平等に教育を受ける権利を保障された場所であるはずですが、一部の保護者グループによる『自主活動』がこれを揺るがしています。

教育の場は、一部の大人の自己満足のためではなく、すべての子どもたちが安心して成長できる場所であるべきだと思います」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

関連記事: