『プロの素人集団』としてのチームみらい(&安野貴博さん)に期待していること
今回の参院選、比例代表はチームみらい(安野貴博さん)に入れようと思ってるんですが、とはいえ彼らに対する結構な批判(半分は誤解に基づいた、半分は真剣に考えるべき)も見かけるよなと感じています。
僕はSNS的な発信とか、その他身の回りの直の知り合いとかがそういう「批判」をしていたら、別に関係者でもないのに「いやいやそこはこういう意味があって」などと勝手連的に擁護し、それで「みらい推し」になってもらったりしてきた実績はあるので、今回はその話を聞いてほしいと思っています。
簡単に自己紹介をすると、今40代後半の男性で、学卒でマッキンゼーという外資コンサルに入ったんだけど、「こういうやり方」だけだと社会が真っ二つになるんじゃないかと思って、その後若い頃はあえて一時期肉体労働やらブラック営業会社やら時にはホストクラブその他まで「働いてみる」をやった後、今な中小企業メインのコンサルタントになって、実際に10年で150万円ぐらい平均給与を引き上げられた事例もある・・・という感じの存在です。(???って感じた人は詳しいプロフィール欄をどうぞ)
要するに、
「チームみらい的な先進性」の可能性も、一方で「それへの抵抗感を持っている人々の気持ちや事情」も一応両方わかる上で、今後どうしてったらいいのか・・・をコンサル業のかたわら「思想家」業として発信している存在
…ということですね
そんな自分から見て、今回の選挙はとにかく一議席でもチームみらいに取ってほしくて、取ってもらった上で「ぜひこういう役割を果たしてほしい」という問題意識があるんですよ。
それを、一例として今あまり状況が良くない日本の大学システムの改革案を事例にご説明したいと思っています。
安野さん周辺やスタッフさんや他の候補者さんだけでなく、「チームみらい」的なものに可能性を感じているすべての人に、一緒に考えてほしい「今の日本の大きな課題」についてシェアし、その解決策を一緒に考える記事にさせてください。
1. 選挙のためにも「批判」について考えることは必要なタイミングかも
純粋に「選挙の得票」という意味でも、チームみらいに対する「ぼんやりした批判」にキチンと答えていくことは、「カタカナ言葉使わないようにしよう」とかより大事な段階になってるんじゃないかと思っています。
というのは、今の時点で「チームみらい」を全く知らない・・・みたいな人が彼らに投票するとは考えづらく、逆に既に投票者個人の脳内で「当落線上」にいる場合に、その人の中での「どうしようかなー」にこれから一週間ちゃんと答えていって、
「やっぱ安野さんに入れよう!」
…に着地してもらえるかが重要なフェーズだと思えるからです。
”ビジネスっぽい”言い方をすれば、
「ウェブサイトの訪問者数の増大よりも、コンバージョン率向上が大事なフェーズ」で、そのためには「知らない人に知ってもらう」よりも「既に知ってくれている人」の「懸念点を解消する」事が大事だ
…みたいなことですね(実際には知名度向上も引続き重要ですが、後者の比重を高めていくべきタイミングではあると思います)。
なんせとにかく「全国比例で1%取る」っていうような非常にニッチな戦いなわけですから、「いまだに知らない層に知ってもらう」よりも「取りこぼしを防ぐ」方が大事ですよね。
それと同時に、「チームみらい」への期待層には、「うるさ型」の人と「ミーハー型」の人がいると思っていて、「うるさ型」の人が毎回「チームみらいはここが信用できないんだよな」みたいなことをSNSで言いまくってる状態だと、「ミーハー型」の人への波及がちょっと微妙になる効果もあるように思うんですね。
ただの誤解とか勘ぐりのような「批判」は無視していいと思いますが、「チームみらいを信頼したいけどあと一歩不安」という「うるさ型」の層に納得してもらえる流れをいかに作れるかは、そこ以後色々なシナジーを生み出して、「コンバージョン率」のアップに繋がると思います。
だからこそ、この「うるさ型の人たちのチームみらい批判」について考えてみたいんですが・・・
2. ”フォーカスグループインタビュー”で深堀りしてみた印象
自分は「数字的なデータ」と「リアルな事例の深堀り」をできる限り往復して考えたいタチなので、こないだ選挙の公示があった直後に、xスペースに来てくれた参加者が「今までどこに入れて今回どうしようと思ってるか」みたいなのを「ただただ否定しないで延々聞いていく」っていうイベントをやったんですね。
このイベント自体は”チームみらい推しのための活動”というわけではありませんが、以下リンク先から録音へのリンクとタイムスタンプ目次と簡単な参加者の発言まとめポストに飛ぶので、よほど暇な人以外全部は聞けないでしょうけど「タイムスタンプ目次と要約」ポストから面白いと感じる部分だけでも聞いてみていただければと思います。
上記スペースは結構長いので、タイムスタンプ目次を作りました。下記の中から興味のある部分の録音だけでも聞いてみていただければと思います!共同ホストは編集者の神保勇揮さんです。https://t.co/PXJ74Biri1
・4分まで(無音)
・4分スタート。…
— 倉本圭造@新刊発売中です! (@keizokuramoto) July 5, 2025
発言してくれた参加者にはガチ右翼の人もガチ左翼の人も、かなりミーハーでノンポリな人も色々いて、イベントの感想として、「否定しないで話を聞く」がホンモノだったという感想↓をみかけて大変うれしかったです。
このポストの方↑も含めてスペースを聞いた結果として「チームみらい推し」になった人はかなりいた感じなんですが、中にはもともと「今回はチームみらいに注目している」という人はチラホラいました。
3. 「ミーハー型」と「うるさ型」の対照的な注目のされ方
上記xスペースにいた「チームみらい推し」の人は大きく2パターンいるなと思っていて、先程も言ったように「ミーハー型」の人と「うるさ型」の人なんですよね。
「ミーハー型」の代表的な例として話してくれたのは、録音タイムスタンプ48分ごろからの、神奈川県在住の50代女性の以下のような発言と、
リクルート問題とかの「金権政治的自民」に対する反発心からずっとリベラル寄り政党に入れてきた。ただ積極的に支持というよりずっとノンポリだった。今回はチームみらいをすごく応援して、ポスター貼りなどもやっている推し活状態に。自分がそこまで政治に熱くなるなんて思ってもなかった。安倍時代の「美しい国日本」みたいな愛国心に乗り気じゃないタイプだったからこそ、今になって「愛国心」的なものが自分なりに持てるようになってきた。
あと、1時間43分ごろからの結構有名な音楽ジャーナリストさんの発言の中で、以下のような部分があったのも面白かったです。
左派政党にシンパシーがある若い層が、立憲や共産にちょっと期待しようかと思っても、「紙の保険証死守」とか言われてめちゃくちゃ萎える・・・時に、チームみらいが輝いて見えるという声も(笑)
たぶん、チームみらいに関心ある層は身近に感じてると思いますが、今回ある種の「エリート好き中高年女性」の「みらい熱」は大爆発していて、相互に全然関係ない「あの人もこの人も」って感じで、ポスターボランティアやって、寄付もして、講演会に詰めかけて・・・ってなってるなと思ってます。
さっき紹介したスペースで話してくれた50代女性とは全く別の、「50代神奈川在住でノンポリだったが突然みらい推しになった女性」っていう僕の知り合いが”もう一人”いるんですが、スペースを聞きながら「私かwww!」と思ったと笑ってました(笑)
あとはxでよく見る、安野夫妻と同年代の子育て世代女性の人とか、そういう「ミーハー熱」はすごい大事な票田だと思う。
あと、「紙の保険証」発言でもそうなんですが、
「基本的に左派寄りでありたいが、共産や立民は古臭すぎる。れいわはトンデモと考えている」みたいな人の「希望」になってる
…面はあるなと。
こういう、「エリート好き中高年女性層」とか「実際に安野夫妻と同世代の子育て中の人」とか「”フレッシュな”左派でありたい層」といった「ミーハー型」の熱気は大事だし、これからも捕まえていく活動を続けることは大事だと思います。
一方でそういうのとはちょっと違う「うるさ型」の投票可能性を持った層というのがいて、この層が「どっちに転ぶ」かで、案外「ミーハー票の熱気」がどの程度跳ねるかも左右されるんじゃないかという感じがあるんですね。
「うるさ型」の人が延々とチームみらい批判をしてると、やはり「ミーハー」層も少しは影響受けちゃうというか、「爆発」まで行かずに止まっちゃう面があるんではないかという感じがする。
もちろん「うるさ型」の人の批判には「そんなこと言ってもね」みたいな曲解は色々あるんですが、その中でも「この部分」はちゃんと考えたほうがいいかもというポイントもあるんですよね。
4. 「チームみらい」は「イーロン・マスクか、オードリー・タンか?」問題
そういう「うるさ型」の結構典型的な例だなと思ったスペースでの発言は、
タイムスタンプ1時間21分〜の、東京在住男性47歳による、以下のような発言なんですよね。
弱い人の立場を代弁する流れを応援したいタイプ。「数が読めるから意見が違うのにまとまる保守政党」は嫌い。ダースレイダー&プチ鹿島(左派インフルエンサー)が好き。結果として共産主義ではないが共産党にずっと入れてきた。今回はチームみらいに期待している。アメリカのテック系の政治参加には不信感しかないが、安野夫妻の二人の関係性に魅力を感じ、チームみらいはアメリカのテック系のような良くない方向にはいかないのではないかと期待して見極めたいと思っている。
この
「米国のテック系の政治参加は大嫌い」だが、「安野夫妻の関係性が魅力的すぎるので、彼らは違うんじゃないかと期待」して、これから見極めたいと思っている
こういう↑「気分」はかなり重要な分水嶺になるんじゃないかと思ってます。
よく言われてる「チームみらいは、イーロン・マスクなのかオードリー・タンなのか」みたいな話ですね。
別に安野さんが個人としてイーロン・マスクが結構好きでも全然いいと思うし、そういう「何かめっちゃ新しいことしてくれそう」というイメージでチームみらい推しになってくれてる層の期待を裏切るのも良くないんですよ。
ただ、「チームみらい」に投票する可能性がある層のうちの”半分”においては、「最近のイーロン・マスクは邪悪さの塊みたいな扱い」なのだという事は少し意識しておいてもいいと思うw
つまり、「改革志向」「最新技術」はいいけど、そこに「最低限の倫理観とか目指す社会ビジョンとかがあるか」みたいな部分で、ある程度「信頼感」を維持できるかはかなり大事だと思います。
さっきの「左派寄りだけど紙の保険証死守とか言われて萎えてる層」とかにも波及する問題としてね。
さらに言うと、この「うるさ型」は左派にだけいるんじゃなくて、もうちょい保守的な層というか「現場型・専門家型」の層でも同じような課題はあると感じます。
僕と同世代ぐらいで、結構エリート的な働き方をしてるというか、ベンチャー経営者だったりコンサルだったり、それこそ安野さんと同じ「未踏」のエンジニアだったりした人で、「チームみらいのマニフェストが信用できない」と言ってる人はチラホラ見かけるんですよね。
これはね、僕はむしろすごい擁護してまわってる側なんですが、チームみらいのマニフェストは「たたき台」であり、それを「ブロードリスニング」的な関係性によってダイナミックに常に変化させていくようなオープンソース開発型の手法によって、「閉鎖的で硬直的」なシステム全体に対するオルタナティブを実現しようとしているんだと思うんですよ。(この話するとどうしてもカタカナ多くなっちゃいますねw)
でも一方で、結果としてそれは「現時点でズラズラと全方位的に並べられているマニフェスト」の内容が、ピンポイントの「その分野」の専門家からするとどこかズレているように感じられる問題に繋がっている。
こないだの喘息薬の話で炎上した時に、医療クラスタの一部が一斉にチームみらいを攻撃していたような問題が、「全部の細部」における「その分野の専門家」の中にわだかまりとして存在している。
そこでチームみらいは、そういう「うるさ型の専門家」との連携をキチンと行える人たちだし、イーロン・マスクがあちこちの予算をぶった切って色んな弱者が阿鼻叫喚みたいになってしまった事例のようにはならないのだ、という「信頼感」を得られるかどうかがかなり大事なポイントだと思うんですよ。(僕個人は彼らはそういうことができる人たちだと信じています)
普通の政党のマニフェストだってぶっちゃけちゃんとチェックしたら「穴だらけ」みたいなものだと思うので、チームみらいのマニフェストだけがここまで突っつかれるのは彼らに対する「期待」の裏返しでもあると思うしね。
5. ”ブロードリスニング”は新手のポピュリズムなのでは?という不信感にどう答えるか
昨日、「ひろゆき」さんと安野さんが話してるYouTube動画を見てて、2つ「なるほど」と思った点があるんですね。
・「選挙にとって良い施策」と「チームみらいが役割を果たす上で良い施策」は違うかも?という話が一点 ・「ブロードリスニング」は結局一種のポピュリズム的になってしまって、専門家からするとズレた提案になってしまうのではないかという懸念が二点め
特に後者については安野さんも問題点として把握しているらしく、そこで専門家層との連携を目指す新しい取り組み・・・のようなことをチョコッとだけ話しておられましたけど、ここまで書いてきた理由から、そこの部分の「信頼」を取り戻そうとすることは真剣に重要だと個人的には思います。
マニフェスト読んでたらAIチャットボットがいて、話してたら「その提案上げときますね!」って言われるとかめちゃ未来体験で、その事自体はすごいいいと思うんですよね。
でも結果として出来上がる「マニフェスト」が、どうしても素人臭くなるっていうか、「ピンポイントな当該分野の専門家」からすると「大丈夫かよ」って見えちゃうところはある。(また、安野さん周辺がそこの部分の問題意識が少し薄いように見えるところも、不信感に拍車をかけているところがあるかも)
「その課題」をチームみらいはこう解決するんです!というメッセージ性を出せるかどうかは、今後一週間で「うるさ型」の人たちがどっちに転ぶかにおいてかなり重要なポイントだと思います。
それはさっき書いた「左翼型うるさ型」の人にとっても、「保守派というか専門家型うるさ型」の人にとっても大事で、そこの層がSNSで「なるほど納得した」という発言をしてくれるようになると、「ミーハー層」の熱気もあと一段加速する好循環になるはず。
で、ここで、僕個人が「チームみらい」の人やそれに希望をいだいている人にぜひ考えてほしい「今の日本の課題」について聞いてほしいことがあるんですよ。
6. 今の日本が課題山積みのまま硬直化する根本的な理由
例えばの一例としてですが、安野さんもよく演説とかで話されてますけど、日本の大学システムは今危機的な状況で、「研究力」の指標の低下が止まらず、なんとかしなくちゃいけない状態なんですよね。
ただ、「何をどうすれば良いのか」が人によって違いすぎて、「群盲象を撫でる」みたいになってて変化が遅々として進まない。
「チームみらいのマニフェスト」は、全体的な方向性はめっちゃいいと思うんだけど、ちまちまと細部で「三歩ぐらい素人臭く」なっちゃう面がどうしてもあって、例えば
複数年にわたる研究計画であっても、年度内に支出を終える必要があります。特に、予算が認められた後でなければ発注できない上、納品にも時間がかかる高価な研究機器の購入や、長期的な視点での研究者の雇用計画を進める上で、大きな障害となっています。
…と書いたあとで、修正が入って
↑ただし、現在、科研費は基金化されて、前倒し利用や繰越しがしやすくなりました。
…となったりする。
で、個人的には僕自身は、そんな「ありとあらゆる細部」において「その分野の専門家より詳しい」人なんているはずないわけで、細かい事をちゃんと修正する力さえあるんなら、こうやって「オープンにどんどん意見取り入れて変わっていけたらスゲえいいじゃん」と思うタイプなんだけど、なんというのか日本では
「こんな基本的な部分で細かい事実誤認があるなんて、こいつらの言ってる事は全部信用ならん!」
ってなりかねない部分があるんですよね。
で、そういう風に思うのは彼らが「頑固者で無理解な石頭」だから・・・というのも一応あると思うけど、
日本はその「現場レベルの”ある分野”にいる人」が、その「ある分野」に関するめちゃくちゃ強い責任感を持ってるからこそ、「勝手な事をしてくれては困る」みたいに警戒してくるのだ
…という要素でもあるんですね。
それに、その「現場の頑固者」の意見を吸い上げられないと、日本ではどうしても「上滑り」の改革しかできなくて、そのうち押し合いへし合いになって頓挫しちゃったりするんですよね。
そういう時にどうすればいいのか?
それは、「現場側にいる、チームみらいと話せる人」をちゃんと大事にする姿勢を見せられるかどうか。
その「間を繋いでくれる存在」にメッセージを発し、大事にしますよという事で、「改革派vs抵抗勢力」みたいにしないでいられるかが大事。
そしてその時には、ある意味で「チームみらいに期待」してる人たちの中にいる、「日本の今なんか全部ぶっ壊してくれたら良いのに」的な期待感を多少は裏切る部分も必要になってくる。
7. 「現場の良心さん」を選び出し、繋がれるか?
藤田医科大学の宮川剛教授という研究者がおられて、Twitterで知り合ったのをキッカケに、こないだ研究室を訪問して、彼が提唱している大学改革プランについて話を聞いてきたんですけど、これがめっちゃ良かったんですよね。
彼の周辺が文科省に提案しているプランのプレゼン資料がこちらにあります。
なんというのか、こういう「現場の良心さん」が噛んでるプランは、単に「予算が足りません→増やしましょう」とか、「研究時間が取れません→秘書さんを雇いましょう」みたいな「コインの裏返し」的なものだけじゃない、重要な「構造的な齟齬」を解決するインサイトがあるんですね(そういう部分のブレイクスルーがないと、そもそも米国の大学と資金量が違いすぎるんで結局無理じゃん、みたいなことにしかならなくなってしまう)。
で、このプランの場合、だいたい以下の4枚のスライドが重要で・・・
こういうスライドプレゼンに慣れてる人はこの4枚で「なるほど!」ってなったんじゃないかと思いますが(もっと具体的な案はこちらで全部読んでみてください)、もう少し説明すると、日本と米国の博士を巡る状況で一番違うのが、「終身雇用を前提とする社会かどうか」というポイントなんですよね。
米国は雇用の流動性がめちゃ高いんで、「有期雇用」的な契約でもその意味が日本と全然違う。
米国なら、首になったらまた別のとこ見つけりゃいいかという感じになれる(色々問題は彼らにもあるでしょうが日本とは全然違うのは確実)。
しかし日本においては、「ちゃんと働いている人」はだいたい終身雇用前提でいるので、そう簡単にプラプラと新しいポストが見つかったりしないわけですよ。
企業が雇うにしても、「一人雇う=一生面倒を見る」契約という意味合いになるので、簡単に雇いづらい。
結果として、研究者の「雇用の不安定さ」がもたらす研究者人生へのインパクトがものすごく大きくなってしまうんですね。
そこで、宮川剛氏周辺が提案しているのは、
「終身雇用である基礎部分さえ確保してくれるのであれば年収は少なくてもいい」というニーズを、一度大学の職を得た人たちには公的に保証する人材プールを作り、そこで「疑似的に終身雇用環境」を提供することで、「安定的に研究できる環境」と、プラスアルファで色んな就業機会に斡旋できる仕組みを、日本の予算額でも可能な低コストで作る
・・・という方向性のようです。
得てして、海外目線でしか日本を見れない「改革者」が、日本の大学の仕組みの齟齬に怒りを覚えると、
「そもそも終身雇用が基本で人材の流動性が低いから日本はダメなんだ!僕が助教授をやってたイェールでは・・」
…みたいなことを言い出して、日本の現場の人たちから
「そんなこと言われてもね・・・」
と嫌気をさされる・・・っていう光景をめちゃくちゃあちこちで見ますよね。
「そんなこと言ったって日本の雇用環境が一朝一夕には変わらないし、終身雇用ベースのメリットを享受してる部分だって社会の中に沢山あるんですけど」ってところで話が止まっちゃうんですよね。
(チームみらいもそういう存在なのでは?と不信感を持たれている事を理解して、そうじゃないんだ、と示せるかどうかがこれから重要だと思います)
宮川剛教授は米国での研究生活も長い人ですから、「どちらの価値」もわかっている。わかった上で、「こうすれば両立するのでは?」という現場に根ざした案を出せる。そういうプランをいかに引き上げていけるかが大事なんですよ。
この大学改革の話は、ちょうど最近取材してきたので「一例」として聞いてもらいましたけど、「チームみらい」は、日本社会に埋もれているありとあらゆる課題について、こういう「現場の良心さん」との連携を実現に向けて動ける政党になれるはずだ、と個人的には考えています。
多分、さっきのプレゼン資料みて「なるほど!」って思うにはある種のビジネス経験が必要で、たぶん「チームみらい」界隈にはそういう人がたくさんいあるはずだと思うんですよね。
で、こういうプランは「自民党の中堅議員」もパッとわかってくれるらしい(宮川先生の資料に出てきた名前ではコバホーク、平将明、牧島かれん、小林史明、大野敬太郎・・・さんたち)んですが、それを「上の世代の自民党重鎮」とか「官僚」まで届けるのがめちゃくちゃ難しいらしいんですよね。
一方で「いわゆる野党勢力」はあまりこういうのが得意ではない。
もちろん最近の野党勢力は随分変わってきているけど、いままでの「いわゆる野党勢力」は、もっと全然具体的ではない、
「日本ってのは本当にダメな国なんですよ。海外の普通の先進国じゃあ当然こうなってるもんなんだけど、自民党とかいう品性下劣な極悪人どもが・・・」
みたいなことを延々言ってる「改革派」の人とくっついてしまうので、余計に具体化できなくなってたんですよね。
そのへんは、こないだ三浦瑠麗さんとニューズウィーク日本版のYouTubeで対談してきた話がまさにそういうテーマだったので、ご興味があればご覧いただければと思います。
8. 水と油が混ざった”マヨネーズ型”プランを作れるか?
結局、大学システム改革にしろ、医療システム改革にしろ、なんにせよあらゆる場面でそうなんですが、日本は以下みたいな対立があちこちで起きていて、押し合いへし合いになって何もできなくなってるんですよね。
海外事例も先端技術も詳しい人が、先進的ではあるが日本社会とイマイチ合ってない案をゴリ押ししようとする(”水の世界”と呼びます) vs 日本の現場しか知らない人が、とはいえ日本社会としてどうしても譲れない線を守り通さなくてはということで必死に抵抗する(”油の世界”と呼ぶ)
で、お互いに「あいつらはわかってねえ!」と非難しあう声が大きすぎて、宮川教授のプランのように「両側の視点」を取り入れた地道なプランは埋もれてしまって放置されてるんですよ。
その「水の世界の価値」と「油の世界の価値」を両方取り入れる、「水と油が混ざる」物体としての、マヨネーズのようなプランをいかにちゃんと共有し、広範囲の協力を得て実現していけるかが問われているタイミングになっている。
そのためには、宮川教授のような「現場の良心さん」をちゃんと選び出してそのプランを取り入れ、かつそれの実行段階にあたって、ある種の強引さを持ちつつも、「細部の齟齬に対する批判を取り入れ続ける」みたいな、なんかもう説明してるだけで「大変」なことをやりきらないといけないんですが・・・
ただそういう「マヨネーズ型のプラン」のネタ自体はあちこちに「ちゃんと考えてくれてる現場の良心さん」がいるというのは僕自身すごい実感してることなんで、あとはそこと「チームみらい」型の新しい動き方がちゃんと連携して、「自民党の中の中堅実務派議員」とか、そういう層とも連携して話を通していける一助になれるかどうか?
そういう「マヨネーズレベルに練り上げられた、しかし地味な案」を「それいいじゃん!」と眼力を発揮して選び出し、党派争いの谷間に落ち込みそうなところを遊軍的に動いてフォローし、みんな「あいつらがけしからん!」と言い合ってるだけの状況を変えていける起点になれるかどうか?
ここの部分を僕はチームみらいに「めっっっっっちゃ期待」しているし、ここの部分で、
「俺達そういうの得意なんで、任せて下さい」
…という旗印を掲げ、信頼感を得ることができれば、さっきの「右と左のうるさ型」の人たちも太鼓判をおしてくれて、そこから「ミーハー層」へのシナジーも大きく働くようになると思います。
9. ぶっちゃけ心配するのは”はやすぎる”のでは?
最後に、投票先に迷ってる読者の方に、聞いてほしい話があります。
それは、チームみらいが「イーロン・マスクなのかオードリー・タンなのか」って話で、
どっちなのか心配するのは今の時点ではさすがに「はやすぎる」のでは?、
…という視点を持ってほしいということです。
もしチームみらいが最終的に何十議席も取るようになったら、もし彼らが「イーロン・マスク」なら大問題!かもしれませんが、現時点で「1議席」取るか取らないかって話をしてる時に、そこまで心配するのはさすがに時期尚早なんじゃないでしょうか。
むしろ、「一議席取ったらその政党助成金でエンジニアチームを作って色々やる」っていうプランだけでも、単純に何か新しい変化を起こしてくれる事を期待してもいいのでは?と思います。
この記事でここまで書いてきた「現場の良心さんと先進的な改革派が連携できてない問題」というのは、僕自身20年ぐらい日本社会の中で色々な「現場より」の改革事例に触れてくるなかで、とにかく「どうしても必要なこと」だと感じてる問題なんですよね。
で、そういう「課題」の存在自体をわかってくれる人もそう多くない中、チームみらいの人たちの話には十分「そこ」に踏み込んでいけるだけの”感性と知性と、そして理想主義的な思い”が備わっていると思うので、そこに個人的にはすごく期待してます。
「チームみらい」関連の人たちは、AI関連の技術分野については明らかに「プロ」ですが、とはいえ一方で確かに「その他のピンポイントの個別分野の専門家」からすると「素人」に見える部分はあると思うんですよ。
でもそういう「素人であることのプロ」との連携でしかできないことがあるのだ・・・という視点で持って、現時点ではちょっと疑問があるなと思っている人も、ぜひ比例の一票ぐらいは「チームみらい」に入れてみてはいかがでしょうか?
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長い記事を読んでいただいてありがとうございました。
この記事がピンと来た方は、私の新刊『論破という病 分断の時代の日本人の使命』も良かったらどうぞ。
また、冒頭で書いたxスペースのように、「意見の違う人の話もちゃんと聞ける場」が大事ということで、クローズドなSNSで「尊重し合って話せる場」みたいなのをはじめてみたので、良かったら以下をチェックしてみて下さい。
既に100人ぐらい入ってくれて、「昔のミクシィみたいな」牧歌的な雰囲気でSNSの美点を取り戻していこう、みたいな取り組みになっています。
「めたべた」に関しての詳しい説明は、以下記事などもどうぞ。
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つづきはnoteにて(倉本圭造のひとりごとマガジン)。
編集部より:この記事は経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏のnote 2025年7月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は倉本圭造氏のnoteをご覧ください。