【風邪の三大予防策】「口や鼻から体内に入れない」「免疫維持」ともう一つは?
ウェルネス総合研究所は10月30日、「風邪予防とのどケアに関する意識調査」の結果を発表した。調査は2025年9月5日~8日、全国の20~60代男女500名を対象にインターネットで行われた。
「風邪を引きやすい時期」 12月から2月に集中
20~60代の男女(「風邪を引くことはない」と回答した人除く)に「風邪を引きやすい時期」を尋ねた結果、12月~2月が顕著に高くなった。冬季は気温が下がって寒くなり、空気が乾燥するため風邪を引きやすいと感じる人が多いようだ。
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風邪を引きやすい時期
また、「自身が風邪を引きやすいタイプだと思うか」を尋ねた結果では、「自分は風邪を引きやすくない」と思う人(全くあてはまらない・あまりあてはまらない計)が76.8%と約8割近くにのぼった。その一方、「自分は風邪を引きやすくない」と思う人でも「1年以内に風邪を引いた経験(風邪気味含む)」がある人は、37.5%と約4割に達した。自分は風邪を引きにくいという思い込みにとらわれず、風邪予防に注意を払う必要がありそうだ。
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自分は風邪を引きやすい/「自分は風邪を引きやすくない」人の直近1年以内の風邪経験
そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院 院長の内尾紀彦氏は次のように述べている。
「自分は風邪を引きやすいと思わない人が8割も存在しつつ、そのうち実際は4割近い人が風邪を引いています。また、『熱は出ていないから』『のどが痛い・違和感があるだけ』といった人も、風邪は万病のもとという言葉があるように、放っておくと様々な疾患に影響を与える可能性があります。高齢の方や体力が弱っている方は、自分を過信せずにしっかりと風邪予防に取り組むことをおすすめします」(内尾氏)
風邪を引く要因だと思うもの
風邪予防に対する意識を探るために「風邪を引く要因だと思うもの」を尋ねた結果、「のどの乾燥」を挙げた人は33.4%と3人に1人に過ぎず、そもそも風邪予防における「のどの保湿」の重要性を理解している人が少ない結果になっている。また、「風邪の予防のために最も重視すること」を尋ねた質問では、「口や鼻からのウイルスの侵入の防御」(38.6%)、「免疫力の強化」(18.8%)、「のどの保湿」(12.4%)の順になっており、「のどの保湿」を重視する人は1割程度に過ぎないという結果だった。
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風邪を引く要因だと思うもの/風邪の予防のために最も重視すること
実際に「風邪予防のために行っている方法」を尋ねた結果では、「手洗い・マスク・うがい」がTOP3になっており「口や鼻からウイルスを侵入させないこと」に気を配っている様子がわかる。また、4位と6位は「十分な睡眠・休養をとる」(40.8%)、「栄養のある食事をとる」(29.6%)となっており、免疫維持に対する意識も比較的高いことがわかる。一方、「のどの乾燥を避ける」は23.2%と4人に1人程度であり、実際の対策をみてもまだまだ意識が低いようだ。
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風邪予防のために行っている方法
内尾氏によると、風邪予防には「口や鼻からウイルスを体内に入れないこと」、「体内にウイルスが入っても感染させないために、のどを潤しておくこと」、「感染しても発症させないために、免疫を維持すること」の3つが大切だという。調査結果では、のどの保湿に対する意識が低い結果になっているが、内尾氏は、のどの保湿は風邪予防にとって「ウイルスの侵入を防ぐ」「免疫を維持する」ことと同様に大切だと強調している。
また、鼻やのどから肺にかけての気道の内壁には「粘液」と「線毛(せんもう)」があり、ウイルスに対する防御機能を担っている。ウイルスが体内に侵入し、鼻やのどの粘膜に付着すると、線毛が活発に動いて異物を体外へ排出しようとする(線毛運動)。これにより、くしゃみ、鼻水、咳、たんなどの反応が起こり、ウイルスは外へ押し出される。しかし、粘液や線毛が乾燥して線毛の働きが弱まってしまうと異物を排出させる働きが低下し、ウイルスが気道にとどまりやすくなり、感染につながってしまうという。
のどケアをはじめるタイミング
「のどケアをはじめるタイミング」を尋ねた結果では、「常にのどのケアを意識している」人は13.8%に過ぎず、「のどに違和感を感じはじめたとき」(38.2%)と回答した人が最も多く約4割、また「のどのケアをすることはない」(28.6%)と答えた人も約3割という結果となっており、のどケア意識の低さがうかがえる。
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のどケアをはじめるタイミング
屋外や室内の空気が乾燥すると、のどの乾燥につながり、風邪に感染しやすい状態になる。「空気の乾燥が気になり始める時期」を聞いた結果では、「11月頃から」(26.4%)と回答する人が最多の結果になっている(「空気の乾燥が気になることはない」と回答した人を除く)。風邪予防のためには、空気の乾燥が気になる時期や体調不良のときには特にのどの保湿を心掛けるのが良さそうだ。
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空気の乾燥が気になり始める時期
内尾氏は、人体が健康な場合はウイルスが体内に侵入してもすぐに風邪を発症することはなく、のどの粘膜にある線毛がウイルスを捕らえて体外に排出し、粘膜免疫で働くIgA抗体(免疫グロブリンA)がウイルスの増殖を防いでいると説明する。ところが、乾燥した空気を吸い続けるなどの要因でのどが乾燥すると、線毛が十分に働かなくなり、ウイルスがのどの細胞に付着・侵入(感染)して、のどの炎症を引き起こすという。この状態が続くとのどの防御機能がさらに低下し、咳やのどの炎症が悪化、損傷した粘膜や壊れた線毛の再生が追いつかなくなる「のど乾燥スパイラル」に陥ることになり、慢性的に風邪を引きやすい状態につながってしまう。また、ウイルスがのどから細胞に侵入した際、免疫機能が維持できていないと風邪の発症につながる。風邪の発症を防ぐには、のどの保湿によってウイルスの排出機能を保護しつつ、同時に増殖するウイルスを撃退するための免疫機能を正常に保つ生活習慣が大切だとしている。