李在明氏の「親中姿勢」を初TV討論で攻撃…反中国の感情強まる韓国、保守系候補は「外交」に照準
【ソウル=仲川高志】6月3日投開票の韓国大統領選に向けて18日夜に開催された初めてのテレビ討論会で、最有力候補とされる左派系最大野党「共に民主党」の 李在明(イジェミョン) 前代表(60)の親中姿勢が保守系候補から攻撃対象となった。李在明氏は、米韓同盟や対北朝鮮政策では現状をおおむね踏襲し、争点化を避ける思惑ものぞかせた。
現状を容認
18日、ソウルでテレビ討論会に臨む李在明氏(右端)、李俊錫氏(右から2人目)、金文洙氏(左端)=AP討論会には李在明氏のほか、保守系与党「国民の力」の 金文洙(キムムンス) 前雇用労働相(73)、保守系野党「改革新党」の 李俊錫(イジュンソク) 議員(40)らが参加した。
金文洙氏は、北朝鮮の挑発を抑止するため、日米韓の連携を強化した保守の 尹錫悦(ユンソンニョル) 前政権の路線を引き継ぐ立場だ。核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対抗策を巡っては、米国の「核の傘」による拡大抑止を引き続き重視すべきだと主張。「必要な時は北朝鮮の指揮部を壊滅させられる報復打撃などの確保が必要だ」と訴えた。
これに対し、李在明氏は「拡大抑止はすでに韓米間で協議済みで、実行体制もある程度整っている」と指摘。「米国の拡大抑止で朝鮮半島の非核化という目標に向かって進むべきだ」と述べ、現在の対応策を容認する考えを示した。
保守陣営から一定の支持を得る韓国独自の核武装論については「韓国が核を持つことを米国が認めるはずがない」と 一蹴(いっしゅう) した。
防戦追われ
2017年の在韓米軍への最終段階高高度地域防衛(THAAD)配備に中国が猛反発し、中国で韓国ドラマの放送が制限されるなどしたことをきっかけに、韓国で反中感情が強まる中、李在明氏の対中スタンスも議論の的となった。
金文洙氏は、THAAD配備時に 京畿道(キョンギド)城南(ソンナム) 市長だった李在明氏が方針撤回を主張したことなどについて「米国からすれば恐ろしいメッセージだ」と指摘した。
李在明氏は「米韓同盟は韓国の外交・安保の基軸だが、中露との外交も実利的に管理すべきだ。米国にオールインする(全てを懸ける)姿勢は望ましくない」と反論した。
李在明氏は13日の南東部・ 大邱(テグ) 市での遊説で、台湾有事に関し、「台湾と中国がケンカしようが、私たちとは何の関係もない」と述べた。李俊錫氏は「あまりに親中的だ」と批判した。李在明氏は「断片的な解釈にすぎない。親中と決めつけるのは不適切だ」と防戦に追われた。
今回の討論会は、事前に経済や通商をテーマとすることが通告されていたが、金文洙、李俊錫両氏は 執拗(しつよう) に李在明氏の外交姿勢をただした。世論調査で支持率トップに立つ李在明氏の「危うさ」を選挙戦の前半で視聴者に印象づけることを狙ったようだ。
外交・安保をテーマにした討論会は27日に予定されており、金文洙、李俊錫両氏は李在明氏に再び論争を仕掛ける意向だ。