ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した約131億年前の超新星

こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した、おとめ座の一角。

中央の渦巻銀河から右上の位置にある、小さな赤い光が拡大表示されています。

【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測したガンマ線バースト「GRB 250314A」の残光(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI, Andrew Levan (Radboud University); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))】

これは、「GRB 250314A」と名付けられたガンマ線バーストの残光(アフターグロー)。

ビッグバンから約7億3000万年後、初期の宇宙で発生した超新星爆発にともなう輝きが、およそ131億年という途方もない時間をかけて届いたものです。

観測史上最古の超新星をウェッブ宇宙望遠鏡が観測

GRB 250314Aは、フランスと中国の天文衛星「SVOM」が世界時2025年3月14日12時56分に検出したガンマ線バーストです。

ガンマ線バーストは、短い時間で爆発的に放出されたガンマ線が観測される突発的な現象です。継続時間で区別されていて、2秒程度以上はロングガンマ線バースト、2秒程度以下はショートガンマ線バーストとも呼ばれます。

SVOMによる最初の検出を受けて、世界各地でGRB 250314Aの迅速な追加観測がスタートしました。

NASA=アメリカ航空宇宙局のガンマ線観測衛星「Neil Gehrels Swift(ニール・ゲーレルス・スウィフト)」は、対応するX線源の位置を正確に特定。ESO=ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)の観測データからは、GRB 250314Aの発生源がビッグバンから約7億3000万年後の初期宇宙に存在していたと推定されました。

ロングガンマ線バーストは大質量星の超新星爆発が、ショートガンマ線バーストは中性子星もしくはブラックホールの合体が、それぞれ発生源だと考えられています(※ショートガンマ線バーストも一部は超新星爆発が発生源だとする説もあります)。

そこで、ラドバウド大学/ウォーリック大学のAndrew Levanさんを筆頭とする研究チームは、今回検出されたGRB 250314Aを超新星爆発にともなうガンマ線バーストのモデルと比較した上で、検出から3か月近く後の2025年7月1日にジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測を実施しました。

超新星爆発は数週間かけて急速に明るさを増した後、徐々に暗くなっていきます。しかしNASAによると、GRB 250314Aは非常に遠方で発生したため、宇宙の膨張にともなって光の波長が引き伸ばされていることに加えて、現象が進行する見かけ上のペースも遅くなっていました。

Levanさんたちがジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測を約3か月後に設定したのも、発生源が超新星だったと仮定した場合、この時期に最も明るくなると予想されたからです。

【▲ 超新星にともなって発生したとみられるガンマ線バースト「GRB 250314A」について、バースト発生時の様子(左)と、超新星の明るさがピークを迎えた頃(右)の想像図(Credit: Artwork: NASA, ESA, CSA, STScI, Leah Hustak (STScI))】

観測データを分析した結果、研究チームはGRB 250314Aが超新星爆発にともなって発生したガンマ線バーストだった可能性が高いと結論付けました。NASAやESA=ヨーロッパ宇宙機関は、観測史上最も古い超新星だと述べています。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データは、研究チームを驚かせたといいます。GRB 250314Aの発生源とみられる超新星は、現在の宇宙で発生する超新星にとてもよく似ていることをデータが示していたからです。

ビッグバンから間もない宇宙の最初の10億年間は、まだ多くの謎に包まれています。その頃は金属(天文学では水素やヘリウムよりも重い元素の総称)がまだ少なく、恒星は大質量で寿命も短かったと考えられています。

ところがGRB 250314Aの場合、ガンマ線バーストをともなう超新星のモデルとして用いられる「SN 1998bw」と非常に類似している可能性が示唆されました。SN 1998bwは約1億4000万光年先の銀河で発生した超新星です。

GRB 250314Aがなぜ現在の宇宙の超新星と似ているのか、その理由を解明するには、今後のさらなる観測・研究が必要だということです。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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