松本じょうじ(マツモトジョウジ) | 選挙ドットコム
令和7年3月2日「つくばみらい市ゲートキーパー研修会(講師・研究学園ななほしクリニック小野真吾様)」を受講しました。
受講内容について、要約報告をいたします。
自殺の現状
年間自殺者数1998年から3万人を超えていたが、2004年からは2万人台となっており、減少傾向であった。コロナ禍の2020年から微増傾向となったものの、2024年は前年から1500人程度減少した(※厚生労働省発表暫定値)。しかし、10代の若者の自殺は毎年増加傾向にある。2024年、小中高生の自殺は527人となり過去最多を記録した(厚生労働省2025)。10歳から39歳までの死因のトップは自殺である(厚生労働省2024)。身体的な医療は発達し、若くして病で命を落とすことは減っている。しかし、その流れの中で取り残されたものが心の健康であった。先進国の中では日本の自殺は最多の水準である。さらに、自殺未遂者は既遂者の10倍にのぼると推計される。強い絆のあった人の自殺未遂や既遂により深刻な影響を受ける人は1件当たり最低5人は存在する。
自殺は、自殺者だけの問題ではなく、広く社会を巻き込む深刻な問題である。
ゲートキーパーとは
・ゲートキーパー(門番)とは、「自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応を図ることが期待される人」」
・自殺予防について理解し、身の回りの人が悩みを抱えていたり、体調が悪い様子に気づいたら、話を聴き、適切な相談機関につなぐことができる人」(本日の目的)
・自殺についての知識Q&A
Q.日本の自殺者数は年間3万人を下回っている 「はい」「いいえ」
A.「いいえ」2024年の自殺者数は男性13,763人、女性6,505人
1998年は、山一証券の倒産等、経済的な理由で3万人を超えた。
Q.悩んでいる人は、そってしておいてあげた方がいい 「はい」「いいえ」
A.「いいえ」信じている人には心を開いて悩んでいる真実を話してくれる → 是非聴いてあげてほしい
Q.自殺は追い込まれた末の死である 「はい」「いいえ」
A.「いいえ」衝動より悩んでいる末
Q.自殺の危険がある人に相談窓口や専門家の支援に関する情報を提供することは大切である 「はい」「いいえ」
A.「はい」一人で抱えないことが大切
Q.「市にたい」と言われたら、出来る限りその話は触れないようにする「はい」「いいえ」
A.「いいえ」死にたいと話す人は少ない、言う人は信頼をおける人だからこそ言ってくれるため、SOSを発信していると捉えてほしい。
Q.自殺の危険がある人は、様々な問題を抱えていることが多いので、話を聞いた人も一人で抱え込まず、複数の仲間や関係機関が連携・協力していくことが大切である。「はい」「いいえ」
A.「はい」自殺は突然起こるものではなく、ストレスの原因となる出来事や様々な状況(プロセス)等が重なって自殺する。
自殺の危険因子
(1)自殺未遂歴
自殺未遂者にみられる精神障害
うつ病、綜合失調症、アルコール・薬物で9割を占める
自殺未遂者 自 殺 者 うつ病性障害46%
53%
綜合失調症圏26%
26%
アルコール・薬物18%
5%
(2)精神障害
(3)サポート不足
(4)年齢
(5)性別
一般的に自殺率は、日本も含めて女性よりも男性の方が高いと報告されているが、性別やセクシャリティがどのように自殺や自殺行動に関連するかを解明するには、この複雑な過程を理解することが鍵となるだろう。 ここでは、自殺における男女差を統計データから把握し、その性差を生み出す理由についての仮説を紹介する。 その仮説紹介においては、性別役割、社会的、心理的、生物学的側面から、自殺行動の背景について検討する。
(6)喪失体験
(7)他者の死
(8)事故傾注
自殺の危険の高い人の心理
(1)極度の孤立感
(2)無価値観
(3)強度の怒り
(4)窮状が永遠に続くという確信
(5)心理的な視野狭窄
(6)諦め
(7)全能の幻想
うつ病について
・うつ病は身体の症状を伴う ・身体の病気にうつが合併する ・うつを疑う2つのポイント このようなことがあったら要注意
・仕事でミスが増えた ・新聞を読まなくなって ・外出しなくなった ・仕事に集中できない ・テレビを見なくなった
・ゴルフをしなくなった
うつ病の主なきっかけ
・転職・転勤・単身赴任 ・昇進、栄転 ・結婚、出産 ・定年 ・出向、リストラ ・転居、新築
・病気、事故 ・配偶者の死、親しい人との別れ ・子供の結婚、独立
うつ病は体の症状から始まる
多くのうつ病では身体の症状から始まる → 身体の病気と思い、かかりつけのお医者さんにかかる
→ うつ病特有の身体の症状はないので、「身体は異常ありません」「疲れでしょう」と言われてしまうことも
うつ病の身体症状
・うつ病では様々な身体症状が出現する
・その多くは「自律神経のバランスの乱れ」から起こる
・うつ病特有の身体症状はなく、身体症状からはうつ病の診断はできない
消化器系賞状(おなかの症状)
・食欲不振 ・体重減少 ・便通異常
循環器・呼吸(胸)の症状
・胸の重苦しさ ・息苦しさ ・窒息感
痛みの症状
・最も多いのは頭痛 ・頭が重く、すっきりとしない鈍い痛み ・患者さん曰く「頭に鍋をかぶったような感じ」
頭の他に全身のどこに痛みが来てもおかしくない(うつ病の症状が非特異的であることの現れ)
睡眠障害 必発
・どのような睡眠障害が出てもおかしくない ・多くは夜中に目が覚める(中途覚醒)タイプまたは朝早くに目が覚める(早朝覚醒)タイプ、あるいはその両方(いくらめても寝足りないタイプのうつ病もある)
脳卒中後はうつ病になりやすい
・脳卒中の後で15~60%の患者さんにうつ状態が出現する。 ・脳への生涯がうつ状態出現の一因
・うつ病の症状に加えて脳卒中による神経症状があるために診断が難しい
がんに伴ううつ
がん患者の5~10%に抑うつ状態が出現する。「うつ」になりやすいリスクファクター
(1)進行がん
(2)うつ病の既往
(3)痛み
(4)神経症的な傾向
(5)ソーシャルサポートの欠如
うつ病を疑く二つのポイント
(1)憂うつな感じで、気分が重くないか
(2)好きだったことに興味・関心がなくなっていないか
この二つが続いているようであれば、うつの可能性がある
「り・は・あ・さ・る」を知ろう
「り」自傷他害のリスクをチェックしましょう
自殺の方法について計画を練っているか、実行する手段を有しているか、過去に自殺未遂をしたことがあるかを評価しましょう
「消えてしまいたいと思っていますか」「死にたいと思っていますか」とはっきりと尋ねる。
※ただし、いきなり尋ねないで、まずは信頼関係を築くことを優先する方がよい
「は」判断・批判せずに話を聞きましょう
どんな気持ちなのか話を聞きましょう
責めたり弱い人だと決めつけたりせずに聞きましょう
この問題は弱さや怠惰からくるのではないことを理解しましょう(怠惰とは、なまけてだらしないこと)
周囲のものがじっくりと話を聞くこと自体が、極めて重要な支援です。相談者はつらい気持ちや考えを体験していることを周囲に聞いてもらい、共感してもらうことを希望しています。
「あ」安心と情報を与えましょう
現在の問題は、弱さや性格の問題ではなく、医療の必要な状態であること、決して珍しい病気ではないことを伝えましょう
適切な治療で良くなる可能性があることも伝えましょう
※現在、体験している状態が医学的な問題であり、効果的な治療や対応があることを伝えることが重要
「さ」適切なサポートを得るよう、専門家のもとへ行くよう伝えましょう
心療内科や精神科を受診するように勧めてみましょう
「心の問題が身体に関係することもあるので、専門家にこころのことも相談してみましょう」と言った方が受診への抵抗感を減ずるかもしれません
※医療福祉や法律、その他の相談機関など専門家のところへ行くことの有益性を伝えることが大切
「る」自分で対応できる対処法(セルフ・ヘルプ)を勧めましょう
アルコールをやめる、軽い運動をする、リラクゼーション法などを行うことによって、メンタルヘルスの問題による症状が緩和されることがあります。家族などの身近な人に相談することや、自助グループへの参加を勧めてみたりするのもよいかもしれません
※気持ちを和らげるために自分でできる対処法を伝えることです
以上、受講要約についてご報告いたします。
子どもの自殺について
自殺のサインと対応
子どもの自殺は、他の世代に比べて遺書が残されていないことが多いために、文部科学省や警察庁の発表をみても、原因が特定されない場合が少なくありません。また、大人には信じられないような些細なきっかけで自ら命を絶つこともあります。自殺の引き金となる「直 接のきっかけ」が原因としてとらえられがちですが、自殺を理解するためには複雑な要因が さまざまに重なった「準備状態」に目を向けることが大切です。自殺の準備状態が長期にわたり、要因が複雑であればあるほど、一見ごく些細なきっかけで、自殺が突然起こったように思えるときがあります。
子どもの身近にいる教師は、子どもが生きるエネルギーを失い、死を思うほど苦悩するとき、どう向き合い、どう支えていったらいいのでしょうか。自殺の危険が高まった子どもへの具体的な関わり方について考えていきましょう。
1 自殺の心理:自殺に追いつめられる子どもの心理はどのようなものなのでしょうか?
自殺はある日突然、何の前触れもなく起こるというよりも、長い時間かかって徐々に危険 な心理状態に陥っていくのが一般的です。自殺にまで追いつめられる子どもの心理とはどのようなものなのでしょうか。次のような共通点を挙げることができます。
1) ひどい孤立感:「誰も自分のことを助けてくれるはずがない」「居場所がない」「皆に迷惑をかけるだけだ」としか思えない心理に陥っています。現実には多くの救いの手が差 し伸べられているにもかかわらず、そのような考えにとらわれてしまうと、頑なに自分の殻に閉じこもってしまいます。
2) 無価値感:「私なんかいない方がいい」「生きていても仕方がない」といった考えがぬぐいされなくなります。その典型的な例が、幼い頃から虐待を受けてきた子どもたちです。 愛される存在としての自分を認められた経験がないため、生きている意味など何もないという感覚にとらわれてしまいます。
3) 強い怒り:自分の置かれているつらい状況をうまく受け入れることができず、やり場のない気持ちを他者への怒りとして表す場合も少なくありません。何らかのきっかけで、 その怒りが自分自身に向けられたとき、自殺の危険は高まります。
4) 苦しみが永遠に続くという思いこみ:自分が今抱えている苦しみはどんなに努力しても 解決せず、永遠に続くという思いこみにとらわれて絶望的な感情に陥ります。
5) 心理的視野狭窄:自殺以外の解決方法が全く思い浮かばなくなる心理状態です。
2 自殺の危険因子:どのような子どもに自殺の危険が迫っているのでしょうか?
子どもの周りにいる大人たちは、子どもが自殺に追いつめられる前に、自殺の危険性に気づくようにしたいものです。
1) 自殺未遂 高い所から飛び降りたけれども一命をとりとめたというような未遂の場合には、その深刻さを疑う人はほとんどいません。しかし、薬を少し余分に服用したり手首自傷(リストカッ ト)をしたりと、死に直結しない自傷行為の場合であっても、その後、適切なケアを受けられないと、長期的には自殺によって生命を失う危険が高まります。
2) 心の病 うつ病、統合失調症、パーソナリティ障害、薬物乱用、摂食障害などが自殺の危険の背後に潜んでいることがあります。 これまでは、子どもの自殺が起きても心の病との関連についてはあまり触れられることがありませんでした。しかし、子どもでも、ひどく落ちこんだり、好きだったものにも興味がわかなくなったり、眠れない・食欲がわかないなどの症状が長期間続く場合には、うつ病 の可能性があります。子どもであってもうつ病になる率は決して低くありません。
次のような点に気づいたら、うつ病の可能性を考えましょう。
・学校へ行き渋る ・自分を責めたり、イライラしたりする
・眠れない、食べられない
・身体の不調を訴えても検査では異常がない
・リラックスして好きなことを楽しめない
高校生の年代になると、大人と同じように心の病が自殺の危険と密接に関連するようにな ります。この年代は統合失調症などの心の病の好発年齢にもなるので、早期に発見して、適切 な治療に結びつけることが重要です。摂食障害も思春期に多く発症します。摂食行動をコント ロールできないために抑うつ症状が重なってくると、自殺の危険は高まる場合があります。
私自身、今後、自殺予防について勉強し、身の回りの人が悩みを抱えていたり、体調が悪い様子に気づいたら、話を聴き、適切な相談機関につなぐことができる人になることができるよう尽力していきたいと思いました。