国民民主党と参政党が「爆伸び」してれいわ新選組は失速した本当の理由とは…れいわは“オールド政党”になってしまったのか 国民民主幹事長がホンネ
――国民民主党の支持母体である労働組合については、世間から「既得権益を守っている」「リベラル色が強い」といった偏見を持たれることも少なくないと思います。そのあたりは、どうお考えですか? 私の地元は田んぼと茶畑と、たまにヤギが歩いているような田舎で、いわゆる大手企業の労働組合があるような地域ではありません。ですから、私自身、組合活動とは無縁の世界で育ちました。 国会議員になって、労働組合の皆さんと深く付き合うようになって感じたのは、世間のイメージ、たとえば常に労使が対立しているとか、過激なリベラル思想を持っているとか、そういったものとは程遠いということです。彼らが目指しているのは、働く人々の尊厳を守り、働いた分の正当な対価を得て、家族や地域社会をしっかりと守れる環境を作ることです。人生の大半を費やす「働く」ということを、どうすればより良いものにできるか。そのための現実的な活動をしています。
国民民主党が労働組合に頼っている、という見方も少し違います。労働組合は、党を支える「ベースロード電源」のような存在です。安定した基盤となってくれる仲間ですが、党所属の国会議員約50人のうち、いわゆる組合出身の議員は10人もいません。様々なバックグラウンドを持つ議員が、組合の皆さんから応援をいただいている、という形です。 UAゼンセンさんのような約190万人の組合員を抱える組織もあれば、電力総連さんのように「鉄の結束」を誇る組織もあります。ただ、近年は組合の組織票の比率も少しずつ変化してきています。これは組合運動の量が低下しているというよりも、社会構造の変化が大きいと見ています。かつてのような組織票中心の「B to B」型の選挙から、政治家が有権者一人ひとりに直接訴えかける「B to C」型の選挙へと、時代が大きく変わってきているんです。
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――その「B to C」への変化は、近年の選挙結果にも顕著に表れていますね。 今回の選挙で全国を回っていても、それを肌で感じました。行く先々で、「私は今までずっと公明党に入れてきたけど、初めて自分の意思で国民民主党に入れます」という方や、「自民党の支部の役員をやっているんだけど、今回は榛葉さんに入れるよ」と言ってくださる方が、必ずどの会場にもいらっしゃるんです。これは、従来の組織の締め付けが効かなくなっている、「B to B」が機能しなくなっている証拠です。 その変化の波に乗って、有権者一人ひとりの心に直接刺さるメッセージを打ち出せたところが、今回伸びている。たとえば、参政党さんであり、私たち国民民主党です。かつて、れいわ新選組がその手法で支持を広げましたが、最近は少し勢いが落ちているように見えます。そして、驚くべきことに、れいわを支援していた方々が今、参政党を応援しているという現象が起きているんです。
これは、有権者がもはや「右か左か」という古いイデオロギーの対立軸で政治を見ていない、ということです。「減税」や生活に直結する具体的な政策を求めている。参政党は保守、れいわはリベラルというイメージがあるかもしれませんが、支援者は完全にシンクロしている。玉木代表が言う「右でも左でもなく、みんなで上に行ける社会を作ろう」という言葉は、まさにこの現状を反映しています。 自民党や立憲民主党さんは、この新しい波に乗り切れずに苦しんでいるように見えます。もちろん、私たちもいつ時代遅れの政党になるか分かりませんから、そうならないように必死で努力しているところです。
――「ガソリン税の暫定税率廃止」や「103万円の壁」の解消など、国民民主党の政策は具体的で分かりやすいと評価されています。こうした政策は、どのようにして生まれるのでしょうか? それはもう、玉木代表のセンスですね。霞が関や永田町の世界では、簡単なことをいかに難しく、分かりづらく言うかが「優秀」とされる風潮がありました。何を言っているか分からないような答弁が良い答弁だと。でも、玉木さんは真逆です。難しいことを、いかに分かりやすく、短いフレーズで伝えるか。 永田町には頭の良い、優秀な人材は佃煮にするほどいますが、意外と「空気が読める」人が少ない。玉木さんは地頭が抜群に良い上に、難しい経済政策などを噛み砕いて、国民の皆さんに伝わる言葉で説明する能力が非常に高いんです。
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ただそれでも、やっぱり難しくなることがある。だから私はいつも玉木さんに言っているんです。「玉木さん、幹事長の俺が理解できて、初めて国民の皆さんも理解できるんだから、俺が分からないような難しいことは言うな」と。「ブラケットクリープ」なんて言われても、普通の人は分かりませんよ。「俺はビール、ホッピー、ハイボールしか分かんねえんだから」って(笑)。でも、そうやって私がネタにすることで、かえって「ああ、あれがブラケットクリープのことね」と皆さんに伝わったりもする。 玉木さんのような天才と、私のような消防団出身の雑草、この組み合わせが党にとって良いバランスを生んでいるんだと思います。
――国民民主党を支持する労働組合は、安全保障政策などでは非常に保守的、右派的だと言われますが、なぜなのでしょうか? それは、私たちの源流とも言える旧民社党の歴史と深く関係しています。旧民社党は、福祉政策などではリベラルな面もありましたが、安全保障政策においては、ある意味で自民党よりも右、つまり現実的で強固な姿勢を持っていました。1960年代から憲法改正や集団的自衛権の必要性を訴えるなど、時代を30年も40年も先取りした議論を展開していたんです。 電力、自動車、繊維といった、日本の基幹産業を支える民間企業の労働組合が、この旧民社党の強力な支持母体でした。彼らは、会社の発展なくして組合員の生活向上はない、という現実的な「労使協調」の考え方を基本にしています。国が安定し、経済が発展することが、自分たちの生活を守ることに直結すると考えている。だから、国の守りである安全保障については、非常に現実的かつ真剣に考えるわけです。この旧民社党系の労働右派の流れが、現在の国民民主党の一番の支援団体へと繋がっています。
榛葉賀津也