不眠症で認知機能障害のリスク40%増、修正可能な危険因子である可能性も 新研究
研究によると、不眠症は認知障害のリスク増加と関連している/Oleg Breslavtsev/Moment RF/Getty Images/File
(CNN) 不眠症に対処することは、翌日の午後の疲労と闘うだけでなく、将来の脳の老化を防ぐことにも役立つ可能性があることが、新たな研究で明らかになった。
睡眠不良は一般的なものであり、米睡眠医学会によれば、米国人の12%が慢性的な不眠症と診断されたことがある。
認知能力の健康に影響する遺伝的な要因やその他の自身ではコントロールできない要因とは異なり、不眠症は自身で対処できる症状のひとつである可能性がある。学術誌「ニューロロジー」に掲載された研究で明らかになった。
「この研究の主な結論は、慢性的な不眠症は認知機能低下の修正可能な危険因子である可能性があるということだ」と、あるメイヨー・クリニック睡眠医学センターの神経学助教授で筆頭著者のディエゴ・カルバリョ博士は述べた。
今回の研究では、2750人が約5年にわたって毎年、神経学的評価と脳の画像検査、睡眠習慣の評価を受け、不眠症と脳の変化との関連について調査が行われた。
データによれば、不眠症は認知機能障害のリスクを40%増加させることがわかった。不眠症を抱えながらも、睡眠時間を増やしたり、薬を服用したりした人は、認知機能に同様の悪影響はみられなかった。
「不眠症の治療が必ずしもこうしたリスクを軽減するかどうかは、データがないため断言できないが、その可能性に対する関心は高まっていると思う」(カルバリョ氏)
不眠症が脳の健康に及ぼす悪影響
ジョンズ・ホプキンス大学睡眠・ウェルネスセンターのレイチェル・サラス博士が診察する睡眠障害のなかで最もよくみられるものが不眠症だ。サラス氏によれば、この症状は単に寝つきが悪いだけではない。
サラス氏は「睡眠の維持と質に問題が生じ、日常生活や健康全般に影響を与える可能性がある。慢性的な不眠症は、様々な認知障害のリスク増加と関連している」と説明する。サラス氏は今回の研究に関与していない。
良質な睡眠は、さまざまな意味で脳の健康にとって不可欠だ。睡眠は不要なシナプスを除去し、脳の過負荷を防ぐ。研究によると、日が経つにつれて脳内に老廃物が蓄積され、睡眠によってそれが除去されることが示唆されているという。カルバリョ氏が指摘した。
カルバリョ氏によれば、こうしたたんぱく質の蓄積はアルツハイマー病の指標になる。
サラス氏は、睡眠について、記憶の定着や感情のコントロール、脳全体の回復にも不可欠だと指摘した。「睡眠不足や質の悪い睡眠は、神経炎症の増加やシナプス可塑性の低下につながる可能性があり、これらは認知機能の低下の一因となる」
不眠症はよくある症状だが、必ずしも十分な注意が払われているわけではない。
サラス氏によれば、65歳以上の人は睡眠障害になる可能性がはるかに高まる。カルバリョ氏は、高齢者は睡眠不足について、加齢に伴う正常な変化と考えやすいと言い添えた。
カルバリョ氏によれば、加齢が睡眠になんらかの変化をもたらすことは事実だが、不眠症はそれだけではない。睡眠導入や睡眠維持の障害、日中の機能障害、疲労感、気分のむら、認知機能障害、思考障害などは、加齢とともに必ず起こるものではないという。カルバリョ氏は、多くの年齢層において、不眠症は患者からの報告が少なく認識も不足しているため、結果として十分な治療を受けていない可能性があると指摘した。
対策方法は
カルバリョ氏は、不眠症の治療を増やすことで、人々の生活の質が向上するとともに、加齢に伴う脳の老化を防ぐことができると期待していると語った。同氏は、幸いなことに、簡単な介入で不眠症を効果的に治療できると言い添えた。
主な治療法は「不眠症に対する認知行動療法」だ。カルバリョ氏によれば、これは、不眠症を引き起こしたり、不眠症を悪化させたりする問題を対象とした一連の原則や指針だ。
サラス氏は、規則正しい睡眠スケジュールを確立し、就寝前にリラックス法を実践することが効果的だと述べた。適切な環境を整えることも重要だという。
カルバリョ氏は、就寝前のスクリーンタイムを制限し、カフェインやアルコールを控え、起きている間にベッドで過ごす時間を長くせず、運動をすることが、就寝時の成功につながると述べた。
こうした行動改善を試しても不眠が続く場合は、医師や専門医相談すべきだという。