エヌビディア対中輸出再開、フアン氏の努力実る-半導体で米が譲歩か
人工知能(AI)向け半導体で圧倒的シェアを占める米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、AIプロセッサー(中央演算処理装置=CPU)の対中輸出規制について、あらゆる場で重大な誤りだと何カ月も訴えてきた。
その主張が誰かの判断を動かす兆しはほとんどなかったが、突然状況が一変した。
エヌビディアは14日遅く、米政府からAIアクセラレータ「H20」製品の対中輸出を許可する確約を得たと明らかにした。AIアクセラレータは、AIアプリケーションの学習・推論処理の高速化をサポートするハードウエアで、H20は米国の輸出規制に準拠しつつ中国向けに設計された製品だ。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も同様の許可方針を伝えられたと公表した。これらの輸出許可はトランプ政権による劇的な方針転換を意味し、今年数十億ドルの売り上げを両社にもたらすと期待される。
テック業界のイベントからワシントン訪問に至るまで、フアン氏はあらゆる機会を利用し、中国の締め付けは逆効果だと一貫して主張してきた。半導体の国内製造を促すトランプ氏の政策を称賛しながらも、中国でより自由にビジネスを行える環境を求め、微妙なバランスを保つよう努めてきた。トランプ大統領ともホワイトハウスで先週面会した。
ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、マシュー・ブライソン氏は、ホワイトハウスの国内投資への関心に応じつつ、「AIの自由な流通の重要性を同時に訴えてきた。政権への働き掛けで素晴らしい仕事をした」とフアン氏を評価した。
エヌビディアが対中輸出再開の計画を公表した際、フアン氏は北京を訪れて政府後援のイベントに参加し、「全ての人の利益になる安全で信頼できるAI」について当局者らと意見を交わしていた。米政府から輸出許可が得られるのは確実であり、「早期の出荷開始を期待している」と同社は説明した。
ジャナス・ヘンダーソンのポートフォリオマネジャー、リチャード・クロード氏は「米中貿易協議への影響を考えれば、エヌビディアと関係するサプライチェーンだけでなく、より広く市場にとって前向きなシグナルだ」と分析した。
それでも新たな輸出許可が中国事業の活況につながる保証はない。事情に詳しい関係者によると、エヌビディアとAMDはいずれも、対象となる半導体の範囲と期間の確かな情報を把握していない。
米半導体メーカーは中国向けには最新でなく、性能に制限のある半導体製品の輸出しか認められず、AIモデルの開発が急ピッチで進む中国では、多くの買い手が国内サプライヤーへの切り替えに既に動いている。
米側の今回の譲歩は、より広範な米中交渉の一環であり、フアン氏の働き掛けがどこまで流れを変えたかは実際には不明だ。
原題:Nvidia’s Huang Wins China Reprieve in Rare Trade War Reversal(抜粋)