FOMC議事要旨、金利見通しに開き-関税の影響巡って見解相違

6月17-18日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、当局者の間で金利見通しに開きがあり、その主な要因は関税がインフレに与える影響についての見解の違いだった。連邦準備制度理事会(FRB)が9日公表した。

  議事要旨には「数人の参加者は関税が一時的な物価上昇を引き起こすものの、より長期のインフレ期待には影響しないと指摘した。しかし大部分の参加者は、関税がより持続的な影響をインフレに与えるリスクがあると主張した」と記された。

  FOMC会合後に発表された新たな金利見通しでは、19人の当局者のうち10人が年内に少なくとも2回の利下げがあると予想。7人の当局者は年内の利下げを全く予想せず、2人は1回の利下げを予想していた。

  政策当局者は関税が潜在的に物価上昇に影響するタイミングや規模、期間について、「かなりの不確実性」があると指摘。関税が経済や通商交渉にどのような影響を与えるかによって、インフレへの影響に対する政策当局者の見方はさまざまだった。

  FOMCは4会合連続で政策金利を4.25-4.5%で維持することを全会一致で決定した。利下げを繰り返し要求してきたトランプ大統領からさらなる反発を招いた。

関税問題で複雑に

  急速に変化する経済政策が今年の金融政策判断を複雑化させた状況を、議事要旨は浮かび上がらせた。トランプ大統領は貿易相手国に対する関税の適用範囲を拡大する一方、税制、移民政策、規制改革などに関する政策変更を強行し、これらすべてが経済の不確実性を高めている。

  議事要旨は「参加者は通商政策やその他の政策、地政学的リスクの変化により、見通しに関する不確実性が高まっていると判断したが、全体的な不確実性は前回の会合以降、弱まっているとの見解を示した」と記述している。

  ほとんどのエコノミストは関税がインフレを押し上げ、経済成長を圧迫すると予想している。パウエルFRB議長は関税がなければ、今年、金利を引き下げていただろうと話している。

  しかしこれまでの経済指標には関税による広範な影響は見られず、関税が最終的にいつ、どの程度、どのくらいの期間、物価を押し上げるのかについて、政策担当者の間で議論が分かれている。

  金融当局は15日に発表される6月の消費者物価指数(CPI)を注視する見通しだ。

慎重なアプローチ

   6月会合以降、FRBのウォラー理事とボウマン副議長は緩やかなインフレデータを理由に今月にも利下げがある可能性を指摘してきた。議事要旨によれば、「2、3人」の当局者が、7月29、30両日のFOMC会合での利下げ検討にオープンな姿勢を示した。

  大半の当局者は、年内に政策金利を「ある程度引き下げる」ことが適切となる可能性が高いと判断した。

  とはいえ、ほとんどの当局者は、米経済が全般的に安定していることから、金利調整に慎重な姿勢を取る余地があるとの見方を維持。議事要旨では、経済成長は「堅調」、失業率は「低水準」との認識が示された。

  議事要旨は「インフレや経済見通しに対する不確実性は低下したものの、金融政策の調整では慎重な対応が引き続き適切だとの認識で一致した」と記している。

  先週発表された労働市場関連の指標には一部に弱さも見られたが、全体としては安定していた。これにより、7月会合で利下げを求める圧力は幾分、和らいだとみられる。

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  フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、9月と12月の利下げが織り込まれている。

  当局者は、金融政策運営の指針となる政策枠組みの定期的見直しについても引き続き協議した。議事要旨によれば、四半期経済予測の変更や「代替シナリオのより広範な活用」の可能性を含め、情報発信手段の向上に向けた初期的な議論も行われた。

原題:Fed Minutes Show Committee Split Around Inflation Worries(抜粋)

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