デンマーク、米防衛スタートアップの低コスト巡航ミサイル購入を発表

米防衛スタートアップのCovenant=コベナントは2026年9月に低コスト巡航ミサイルのANTHEM=アンセムを公開し、デンマーク政府は22日「コングスベルグ製のJSMとコベナント製のアンセムを購入する」と発表した。ロシア側は「攻撃的な精密兵器が安全保障を強化すると信じるのは危険な幻想だ」と反応している。

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国防総省はPAC-3 MSE、THAAD、トマホーク、AMRAAM、SM-3 Block IB/IIA、SM-6の生産能力増強(各ミサイルで3倍~4倍)に関する7年間の枠組みを発表、JASSMとLRASMに関しても今後5年間から7年間で最大1万6,450発調達する意向を表明し、MLRSやHIMARSで使用する精密誘導ロケット弾に関しても防衛産業界に7年間で13万3,014発生産するよう要請しているが、主要ミサイルの増産においてボトルネックになっているのはシーカーと固体ロケットモーターの供給だ。

米軍が進めている低コストミサイル計画 計画 用途 目標単価 調達目標 陸軍 LCCM 地対地巡航ミサイル 50万ドル未満 2027〜2029年に1万発以上 LCI 地対空ミサイル 100万ドル未満 パトリオットミサイルを補完する迎撃ミサイル 海軍 CHAOS 地対艦巡航ミサイル 2028年に生産開始 MACE 空対地極超音速ミサイル 30万ドル未満 TSI SM系後継ミサイル 2027年末までに初試射 空軍 FAMM 空中発射式巡航ミサイル 30万ドル未満 今後5年間で27,910発

そのため低コストミサイルの調達にも乗り出しており、米陸軍はLow-Cost Containerized Missiles=低コストコンテナ化ミサイル(LCCM)計画、Low-cost interceptor=低コスト迎撃ミサイル(LCI)計画、米海軍はCoalition Heterogeneous Affordable Offensive Strike=連合異種混成・低コスト打撃兵器(CHAOS)計画、Multi-Mission Affordable Capacity Effector=多任務対応・低コスト大量配備型エフェクター(MACE)計画、Terminal Stage Interceptor=終末段階迎撃ミサイル(TSI)計画、米空軍はFamily of Affordable Mass Missiles=低コスト大量配備型ミサイルファミリー(FAMM)計画などを推進している。

この分野の需要を争っている主要請負企業は防衛スタートアップのAnduril=アンドゥリル、CoAspire=コアスパイア、Leidos=レイドス、Zone 5=ゾーン5、Castelion=キャステリオンで、伝統的な大手防衛企業が製造する高性能なミサイルと異なるのは「複雑な設計、防衛産業に特化したサプライチェーン、高度な専門労働者、手作業による製造手法で構築された拡張性の乏しい精巧なシステム」ではなく「シンプルな設計、調達先が複数存在する商用サプライチェーン、増員が容易な平均的労働者、特殊工具や専用設計の治具を必要としないハイパースケールを前提にした製造手法で構築された拡張性の高い汎用システム」という点だ。

出典:Anduril

決定的に異なるのは主要ミサイルの増産においてボトルネックになっている問題を別のアプローチで解消する点で、シーカーは秘匿性の高い軍事技術や特注部品ではなくデュアルユース技術や商用部品で構成したものに置き換え、ノースロップ・グラマンとエアロジェット・ロケットダインの二社寡占になっている固体ロケットモーター(SRM)についてもアンドゥリルとキャステリオンが自社製造に乗り出している。

大手防衛企業が製造するミサイルの構成部品は「特注品を供給する防衛産業に特化したサプライチェーン」から供給されており、防衛スタートアップが製造に乗り出す低コストミサイルの構成部品は「調達先が複数存在する商用サプライチェーン」と「コア部品の自社製造」の組み合わせで供給するため、低コストミサイルの供給は限りなく「少数のサプライヤーに支配される防衛産業に特化したサプライチェーン」のくびきから解放されるのが従来の高性能ミサイルとの違いだ。

出典:Castelion

2024年に創業した防衛スタートアップのCovenant=コベナントも約2年間に及ぶステルスモードを解除して低コスト兵器分野に参入し、2026年9月「2027年第1四半期に量産を開始して初年度に低コスト巡航ミサイルのANTHEM=アンセムを1,000発生産する」「最終的には年5,000発まで生産規模を拡大する予定だ」と発表、アンセムも他の低コスト兵器と同じように容易に入手可能な部品を使用して低コストと量産性を徹底的に追求し、米国、ドイツ、イスラエルに製造拠点を設けてドイツで製造する欧州向けのアンセムはほぼ完全な欧州サプライチェーンから構成要素を調達して米国製部品は一切含まれていない。

コベナントはアンセムの射程距離について明言を避けているものの、弾頭重量についてはトマホークの半分強=最大250kg、1発あたりの調達コストはトマホークの数分の一=数十万ユーロ台半ばと明かしているため、アンセムは弾頭が小さなアンドゥリルのバラクーダ-500M(約45kg)、コアスパイアのRAACM(推定45kg)、レイドスのLCCM(約23kg)、ゾーン5のラスティ・ダガー(約45kg)とは競合せず、コベナント自身も「トマホークに弾頭重量で劣るものの低コストかつ大規模に量産できる利点を活かせば飽和攻撃が可能だ」と主張している。

出典:U.S. Army photo by Capt. Jordan Beagle

Financial Timesは「米軍などの顧客と既に200回以上のテストを実施し、ドイツもアンセムの購入を検討している」「2027年にドイツと米国の各工場で年間1,000発のアンセムを生産し、2028年以降は各拠点で年間5,000発を生産する予定だ」と報じ、Reutersも「今年末までにドイツで製造したアンセムを国際的な顧客に納入する予定で米陸軍への納入は2027年になる」「米国、ドイツ、イスラエルの3拠点で生産されるアンセムの総数は年1.2万発になる」と報じていたが、コベナントはアンセムの主要顧客を確保することに成功した。

デンマーク政府は22日「デンマークとNATOによる集団的抑止力を強化するため2種類の新型長距離ミサイルを調達する」「デンマーク国防省は国防参謀長の勧告に基づき長距離精密兵器の特定と調達を進めており、F-35から発射可能なコングスベルグ製のJSM、地上から発射可能なコベナント製のアンセムが含まれる」と発表したが、調達規模や納入時期については詳細を明かしておらず、現地の公共放送=TV2は「両方合わせて10億ドル相当の購入契約になる」「アンセムの射程は推定1200km程度になる」「いつミサイルが手に入るのかについてはロシア人に知られたくないため明かさない」と報じている。

出典:U.S. Army photo by Capt. Jordan Beagle

ロシア側はデンマークの長距離ミサイル取得について「攻撃的な精密兵器が核保有国にとって軍事的脅威となり、デンマークの安全保障を強化すると信じるのは危険な幻想だ」と反応しているが、逆説的に言えば「攻撃的な精密兵器が核保有国=ロシアにとって軍事的脅威になる」と言っている時点で抑止力としての効果を発揮しており、軍隊のサイズや核兵器の保有で周辺国を自らの条件に引き下がらせることができると信じるのも危険な幻想だ。

ちなみにデンマークのイェッペ・ブルース国防相もロシア側の反応について「ロシアに指図されるべきではない」「我々がやっていることは近隣諸国やNATOと協力してデンマークを守ることだ」「ロシアの考えに左右されたり思いとどまってはならない」と述べた。

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※アイキャッチ画像の出典:Covenant

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