L・トーバルズ氏、カーネル開発者に痛烈な一言:「ゴミを送るな、世界が悪くなる」(ZDNET Japan)
「Linux」の創始者であるLinus Torvalds氏が、カーネル開発者たちに十分な警告を発していたことは否定できない。 同氏は事前にこう伝えていた。「(Linuxカーネル)6.17のマージウィンドウは、多少の混乱が予想される。8月には結婚式や誕生日など複数の家族イベントがあり、家族が米国だけでなくフィンランドにもいるため、月の半分は旅行に費やすことになるからだ」 その上で、Torvalds氏は「遅れて提出されたプルリクエストに対して寛容になるということではない(むしろ混乱を招くので、より厳しくなる可能性が高い)」と釘を刺していた。 そんな中、MetaのソフトウェアエンジニアであるPalmer Dabbelt氏が「RISC-V」向けのパッチを提出したが、自身も「これはかなり遅れている」と認めていた。つまり、同氏は火遊びをしていることを理解していたのだ。ただ、どれほどのやけどを負うかまでは予想していなかった。 Torvalds氏は「Linux Kernel Mailing List」(LKML)でこう反応した。「これはゴミ(garbage)だし、遅すぎる。私は旅行中だから早めのプルリクエストを求めた。ルールを守れないなら、せめて内容は良くしてくれ」 ここから事態はさらに悪化する。Torvalds氏は続けて、「これはRISC-V固有ではないゴミを、汎用(はんよう)のヘッダーファイルに追加している。『ゴミ』と言っているのは、文字通りの意味だ。こんなものは誰も送ってくるべきではないし、マージウィンドウの終盤に送るなんてもってのほかだ」と述べた。 特に同氏が嫌ったのは、パッチ内のヘルパー関数が2つの符号なし16ビット整数を32ビット整数に結合するという「狂っていて無意味」な方法だった。「この関数は世界を住みにくくする。使い手を混乱させるだけで、あの愚かな『ヘルパー』を使わない方がまだマシだ」とまで言い切っている。 品質の問題に加え、Torvalds氏はそのコードがRISC-Vツリーではなく汎用のヘッダーファイルに追加されたことにもいら立っていた。同氏は、こうした汎用的な変更がLinuxコミュニティー全体に悪影響を及ぼす可能性があると強調し、次のように述べた。 「君は状況を悪化させた。そしてその『ヘルパー』をRISC-Vとは関係ない汎用ファイルに追加したことで、他のコードも悪化させるような使い方をされかねない……だからダメだ。こういうものは曲げてでも排除すべきだ。汎用ヘッダーファイルには入れないし、マージウィンドウの終盤に追加するなんて絶対に許されない。警告しておく。遅れたプルリクエストはもう受け付けないし、RISC-Vツリー以外のゴミも許さない」 これが「穏やか」になったTorvalds氏の姿だ。いや、本当に。 かつてのTorvalds氏のコメントは、もっと毒々しかった。数カ月おきに、同氏の怒りを買った開発者に対して罵声を浴びせることがあった。2018年にそれが問題だと認識し、Linuxカーネルの開発から一時的に離れて、自身の振る舞いを見直す時間を取った。その後、カーネル開発に復帰し、「もう企業に中指を立てるようなことはしない。教訓は得た」と語っている。 とはいえ、同氏は依然として完璧主義者であり、カーネルの中核部分に関わるコードには高い品質と規律を求めている。RISC-Vに関する改善は、今後のリリースに持ち越されることになるだろう。もちろん、提出は早めに、そして「ゴミなし」であることが条件だ。 Dabbelt氏もそれを理解している。同氏はこう返信した。「申し訳ない。最近はいろいろと手が回らなくて、遅れてしまったものが積み重なり、結果としてミスを招いてしまった。今後は遅れないようにして、品質の問題も改善できるようにする」 この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。