「オレの水は?」女上司に対する20代男子の発言に愕然。今日本が直面しているあまりにも幼いジェンダー感【専門家解説】(FORZA STYLE)
「女のクセに気が利かない」――そう言い放つ若い男性社員の言葉に、思わず耳を疑ったという40代の女性上司がいる。時代錯誤とも言えるその感覚は、決して一つの職場に限られた話ではない。日本社会全体が直面している「幼いジェンダー感」の一端にすぎないのだ。
アナリストの橋川有朱氏はこう話す。 「内閣府『男女共同参画白書』(2024年版)によれば、日本の男女平等に対する意識は国際的に見ても遅れが目立ちます。世界経済フォーラム『ジェンダー・ギャップ指数2024』で日本は146か国中118位。特に経済分野での女性活躍度の低さが顕著で、厚生労働省『令和5年雇用均等基本調査』によると管理職に占める女性の割合は、課長相当職以上(役員含む)で12.7%、係長相当職以上で15.1%にとどまっています。また内閣府『令和6年版男女共同参画白書』でも、管理的職業従事者に占める女性の割合は2023年時点で14.6%とされ、諸外国と比べても低水準であることは否めません」 社会的な男女格差だけでなく、若い世代のジェンダー観にも課題は残る。 「内閣府『男女共同参画に関する世論調査』(2023年)によれば、“夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ”という意見に『賛成』(『賛成』+『どちらかといえば賛成』)と答えた20代男性(18〜29歳)は10.3%でした。一方で『反対』と答えたのは88.2%。世代が下るほど意識は柔軟になっているものの、昭和的な価値観を持つ層が依然として存在するのも事実です」 では、なぜ男女平等を推進すべき職場で、こうした態度が残り続けるのか。 「家庭での役割分担が子どもの意識形成にそのまま反映されているという事実はあるでしょうね。母親がやってあげることを当然視して育った子は、社会に出ても女性に同じことを求めがちです。さらに、学校や部活動の指導者が古いジェンダー観を持っている場合も、若者の価値観に影響を与える大きな要因になります」 実際、厚労省「令和5年国民生活基礎調査」によると、家事・育児時間は依然として女性が男性の2倍以上を担っている。家庭内で女性がやるものと刷り込まれた感覚が、職場での無意識の言動として表出するのだ。 こうした「幼いジェンダー感」は、職場の雰囲気を壊すだけでなく、人材流出にも直結しかねない。今回「女のクセに気が利かない」と言われた女性上司は、こう振り返る。 「みんながそうではありませんが、まだまだ昭和的な価値観を持っている人は男女問わずいます。ただ今回の新人にはさすがにドン引きしました。そこそこいい大学を出てもこれでは、この先苦労するでしょうね」 何の疑問も抱かず、女性上司に「俺の水は?」と口にできる感覚――その危うさは、本人だけの問題にとどまらない。 そんな彼が育った意外な環境は【関連記事「今もお母さんに?」彼が母にやってもらっていたこと。幼いジェンダー感の母が生み出すモンスターたち】でお読みいただける。 【取材協力】アナリストの橋川有朱氏 【聞き手・文・編集】常田真悠 PHOTO:Getty Images 【出典】内閣府『男女共同参画白書』(2024年版)世界経済フォーラム『ジェンダー・ギャップ指数2024』厚生労働省『令和5年雇用均等基本調査』内閣府『令和6年版男女共同参画白書』 内閣府『男女共同参画に関する世論調査』(2023年)厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』