ムセルスキー・インタビュー「引退理由は家族だけでなく……」/前編
37歳になった今もなお、コート上で放つ存在感は圧倒的だ。
活躍する姿をまだまだ見せてくれるに違いない。
そう思っていたファンは多いだろう。
だからこそ、突然の発表に大きな驚きが広がった。
バレーボールSVリーグ男子・サントリーのドミトリー・ムセルスキー選手が1月、今季限りでの現役引退を表明した。
「人生の章はここでいったん完結します。新しい章を始める時が来ました」
引退記者会見では語らなかった決断の裏側をインタビューで明かした。【深野麟之介】
競技人生で向き合ってきた「問い」とは
悲鳴に近いどよめきがアリーナに響いた。
東京グレートベアーズをホームに迎えた1月4日の試合後、ムセルスキー選手はコート上でマイクを握ると、集まったファンに告げた。
「今シーズン限りで引退します」
身長218センチの高さを生かした強烈なスパイクと鉄壁のブロックで、数々の実績を残してきた。
語り草となっているのが、ロシア代表の中心選手だった2012年ロンドン・オリンピックの決勝だ。
ブラジルに第1、2セットを連取されて、追い込まれると、ポジションをブロックの要のミドルブロッカーから攻撃の中心のオポジットに変えた。高さでブラジルの組織的なバレーを崩し、フルセットでの逆転劇の立役者となった。
18~19年シーズンからサントリーに加入すると、4度のリーグ制覇にチームを導いた。
1月4日の試合後の記者会見。ムセルスキー選手は引退の理由について、こう説明した。
「息子に自分のホームのカントリー(であるロシア)で育ってほしいという願いが強い」
記者会見の時間は約20分間だった。
私(記者)は、その場でムセルスキー選手の思いの全てを聞けたとは思わなかった。
1月下旬、改めてインタビューを行うと、キャリアの中で向き合い続けた問いがあったと明かした。
「(引退は)ある一瞬で下した決断ではありませんでした。長い…