いま韓国は「粛清・革命」中 憲法無視、まるで「李在明教示」中朝式民主主義へ邁進か?

11日、就任100日を迎えソウルで記者会見する韓国の李在明大統領(EPA時事)

 革新系の韓国・李在明(イ・ジェミョン)政権が、トランプ米大統領が指摘したように「粛清と革命」に走っている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)・前大統領夫妻をはじめ、政敵である保守派を「内乱勢力」として次々と逮捕・起訴し、司法府を牛耳って長期間にわたる左翼君臨の体制を築こうとしているのでは、と危惧する声まで出ている。(ソウル上田勇実)

 司法府が国会の下にある、という大統領の驚くべき認識――。

 今月11日に李氏が就任100日の記者会見を行った翌朝、韓国大手紙の社説にこんな見出しが躍った。

 李氏は会見で、与党「共に民主党」が推進する「内乱特別裁判所」の違憲性を問われた。同裁判所は、昨年末の尹大統領(当時)による非常戒厳宣言を巡り、検察による韓悳洙(ハン・ドクス)前首相への逮捕状請求が裁判所に却下された直後、その“克服”のため設置が検討されている。李氏は「どこが違憲なのか。司法府の独立とは、司法府が自分勝手にしろということではない。立法府が設定する構造の中で、憲法と良心に従って判断するものだ」と述べた。

 会見で李氏は「韓国の権力序列」に言及した。最上位に国民の意思、以下、(その国民により)直接選ばれた権力(大統領や国会議員)、間接選出権力(司法府など)の順だという。つまり選挙で勝った自分や与党は司法府の上に位置し、その意向を退ける司法府の判断には縛られないという認識だ。これを受け、韓国の法律専門家らは「三権分立を無視する危険な発想」との声を一斉に上げた。

 李氏への疑惑を巡る各種裁判で、有罪趣旨の差し戻し判決を下した大法院(最高裁)院長に対し、与党がユーチューブのフェイクニュースを根拠とした辞任要求を行っていることにも批判が上がる。

 「改革新党」(保守系野党)の李俊錫(イ・ジュンソク)代表は、次のように辛辣(しんらつ)に揶揄(やゆ)した。

 「三権分立が面倒なら、李大統領は改憲して大統領と大法院長と民主党代表を兼任すればいい」「国家主席・党中央委員会総書記・党中央軍事委員会主席を兼任する中国や、国務委員長・労働党総書記・人民軍最高司令官を兼職する北朝鮮をモデルにすれば、民主党が夢見る世の中に合致する」「しかも中国も北朝鮮も、自分たちの体制を民主主義だと主張している」

 李氏は「共に民主党」で絶大な力を保ち、大統領に当選。残るは司法府だと考えているようだ。「国民の意思こそ大事」が口癖で、昨年末の戒厳令による混乱が収拾されると、「民主主義の勝利」と称(たた)えた。だが、実際は司法府に圧力をかけ、三権掌握の独裁政治に突き進んでいると危惧する識者は多い。

 先月、トランプ氏は李氏との首脳会談に臨む直前、自身のSNSに「韓国では、まるで粛清か革命が起きているようだ」と投稿し、物議を醸したが、果たして極右の入れ知恵や左翼嫌いを正当化する思い付きで、そう述べたのだろうか。

 韓国左翼の思想分析に詳しい、韓国国家情報大学院の李熙天(イ・ヒチョン)・元教授はこう指摘する。

 「トランプ氏の言葉は、情報機関からの報告に基づく、李政権の本質をズバリ言い当てたもの」「革命とは共産主義革命のこと、粛清はその革命に不可欠な、反動分子の粛清を意味する可能性がある」

 韓国の検察庁は憲法で保障された機関だが、その解体推進に違憲の疑いが指摘されている。李大統領が、退任後に自身が被疑者の訴訟再開に備え、「先手を打った」(法曹関係者)との見方が出ている。

 政権の横暴を防ぐ最後の砦(とりで)であるはずの三権分立や憲法を無視する李氏の発想は、「北朝鮮で憲法の上に労働党規約があり、さらにその上に金正恩(キム・ジョンウン)教示があるごとく、まるで李在明教示に従わせようとしている」(元検察幹部)と言えよう。

 先月の日韓首脳会談では、石破茂首相と李氏が融和ムードを演出し、日本のある大手紙はインタビューで、李氏から「慰安婦・徴用工の日韓合意踏襲」という言質を取ったと誇らしげに報じた。だがそもそも「粛清・革命」に突き進むがごとくの隣国指導者と、本当に安心して付き合えるのか。慎重な判断が求められる。

関連記事: