「拷問だ」パンツ一丁で身体拘束、尿垂れ流し、トイペも渡されず…警視庁新宿署の「違法対応」に賠償命令 東京地裁
訴状や判決によると、男性は2022年4月6日、強盗致傷の疑いで逮捕されて、同年8月29日まで警視庁新宿署の留置施設に収容されていた。 同年7月、同じ部屋に収容されていた1人が風邪の症状をうったえ、38.9度の熱があることが判明した際、別の収容者が毛布の差し入れを求めたものの、担当の警察官に拒否された。 そこで男性が「熱がある人を1時間放置するのか」「毛布1枚くらい入れてもいいのではないか」といった趣旨の発言をしたところ、保護室に連行された。 男性はそこで約2時間にわたり、服を脱がされパンツ一丁にさせられ、両方の手首と足首を縛られた状態にされたという。 その間、尿意を催した男性がトイレに行きたいと求めたが、「垂れ流せよ」などと言われ対応してもらえず、男性は我慢できずに身体拘束を受け寝転がされたまま排尿した。 また、身体拘束を解かれたあと、便意を催した際にはトイレットペーパーを要望したが無視され、男性はやむなく手に水をつけて拭かざるを得なかったという。 こうした警察官たちの対応によって多大な肉体的苦痛と精神的苦痛を受けたとして、男性は同年9月、警視庁を所管する都を相手取って提訴した。 裁判では、保護室に収容したことや、身体を拘束する道具(戒具)を使用したことの違法性が主な争点となった。
担当の警察官が男性を保護室に収容したことについて、東京地裁は、男性が当時大声を発した経緯に触れて「留置施設の規律や秩序を維持するために特に必要であると判断したことが不合理であったということはできない」とした。 しかし、保護室に収容されたあとは、男性に大声を発したり興奮したりする様子がなかったとして、「留置担当官らが職務上の注意義務を尽くすことなく漫然とこれを継続したものであって、国賠法上、違法の評価を免れない」と判断した。 戒具については、男性が暴れたり抵抗したりしていなかったにもかかわらず、使用することにした判断は「著しく合理性を欠く」として違法性を認定した。 また、下着のまま排尿させたり、排便時にトイレットペーパーを与えなかったりした対応についても、「合理的な理由なく、被留置者(男性)の品位や尊厳を著しく傷つけた」などとして違法とした。
この日の判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた原告代理人である小竹広子弁護士は「被留置者をことさらに貶めて反抗させないためのツールとしてベルトなどが使われている」とうったえた。 同じく代理人の海渡雄一弁護士は現在用いられている戒具が使われなくなるよう求めていく姿勢を示した。 「警察官が戒具で彼の身体を拘束した行為は、言うことを聞かせるという目的を持って鋭い痛みを与えるという意味で、拷問に当たる。 この戒具を付けられたら痛いということが長い間、隠されてきた。それを明らかにした原告の功績は大きい」(海渡弁護士)
弁護士ドットコムニュース編集部