フランス国債の売り加速、買いの好機にも-日本の投資家が注目

フランスの政府崩壊リスクを背景とした同国国債の売りが加速する中で、日本の一部投資家はこれを買いの好機と捉えている。

  フランスは、日本の資金にとって米国、英国に次ぐ第3の海外投資先。ファイブスター投信投資顧問とニッセイアセットマネジメントは、現在の急落局面が資金を投じる好機だとみている。

  運用会社が注目するのは、10年物フランス国債とドイツ国債の利回り格差(スプレッド)が4月以来の水準にまで拡大している点だ。

  ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、欧州債全体については警戒感があるものの「ドイツ国債とのスプレッドが広がっているフランス国債については、むしろ買い場を探っている」と述べた。政権の危機がフランス国債にとってネガティブなことは間違いないが、「信任投票が否決される前に、何らかの妥協が成立する可能性がある」との見方を示した。

  フランス国債先物はアジア時間26日の取引で3月以来の安値を付けた。バイル首相が政権への支持を固めるため、9月8日に内閣信任投票を求める計画を表明したことに反応した。

  バイル氏がフランスの財政破綻を回避するために不可欠だとする総額440億ユーロ(約7兆6000億円)相当の歳出削減・増税案に対して、議会内で反対の声が上がっている。

  首相の表明を受けて、フランス10年債利回りは25日に9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ベーシスポイント上昇し、3.51%となった。昨年の予期せぬ選挙で絶対多数政党不在のハングパーラメント状態となり、財政改革への動きが頓挫して以来、フランス国債は欧州で最もパフォーマンスの悪い国債となっている。

  ファイブスター投信投資顧問の下村英生シニアポートフォリオマネジャーは「スプレッドが拡大しているので投資を検討している」と述べた。「信任投票は、議会に多数政党がない状態における制度上のイベントにすぎない。政府予算やフランスの信用リスクへの懸念が直ちに顕在化するとは考えにくい。格付け機関も動かないだろう」との見方を示した。

  フランス国債は、日本国債に比べて利回りが大幅に高いため、日本の投資家にとって依然として魅力的な投資先となっている。26日時点で日本の10年物国債の利回りは1.615%にとどまっており、フランス国債との利回り格差が際立つ。フランスは、日本の投資家にとって米国、ケイマン諸島に次ぐ第3の海外債券投資先でもある。

  一方で、慎重な見方を示す声もある。

  三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、内閣不信任案が出される見通しが持続すれば、フランス国債を保有する日本の投資家はポジションを減らすことになるだろうと述べた。

  「政局不安は市場参加者全体が嫌がる」と指摘した。

  世界の投資家や金融機関は、9月8日の動向だけでなく、その後に何が起こるかも注視している。

  INGグループのフランスおよびスイス担当シニアエコノミスト、シャーロット・ドモンペリエ氏はリポートで「フランスの政治的不安定が、経済にとっての重荷になりつつある」と指摘した。

原題:French Bond Selloff on Political Peril Entices Buyers From Japan(抜粋)

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