「歩行の測定・解析」が簡単身近に スマホで8歩、姿勢のゆがみ可視化→改善へ
生活の基本となる「歩行」。健康増進にも欠かせない行為だが、ゆがんだ姿勢で歩き続ければ首・肩・腰の痛みや疲労感といった不調、さらには加齢による運動機能低下リスクも高まるという。自分は正しく歩けているのか? これまで専門機器が必要だった歩行データを、誰もが手軽に確認できる無料アプリが人気だ。花王の「my Symmetry(マイシンメトリー)」はスマホに標準装備されている加速度センサーを活用。昨年末、公開1カ月足らずでダウンロード数が9万件を超えた。
フレイルや認知症予防との関連も
アプリを起動したスマホを、おへその下に密着させて8歩、これで測定完了だ。「解析を始める」をタップ。100点満点中の結果は…20点、うぐっ。悲しいスコアとともに、骨盤のゆがみや傾き、股関節動作など6項目が評価された。これも悪い。昨秋、左足小指を骨折し、松葉づえ生活を送ったことも影響しているのか?
「歩行には、過去のけがやスマホの見過ぎなどの生活習慣、個人のクセも含めてあらゆることが表れる。それらを整えることで、姿勢による不調や見た目が改善され、将来のリスクにも備えることができます」と花王ヒューマンヘルスケア研究所の須藤元喜室長(48)。人間科学が専門の博士。「『もう年だから膝が痛い』という高齢者がいますが、同い年で元気な人もいる。年齢だけではない違いは何か? 長年の歩行による負荷の影響もあると推測されています」
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アプリでは解析結果に応じたエクササイズ動画が視聴でき、5回測定後には歩行時のゆがみを補整するインソール(中敷き)の「THE CORE」(1万500円)を提案。現代人の健康課題をサポートする新ブランド「花王ライフケア研究所」の第1弾商品として、アプリとともに開発された。
アプリ解析後、姿勢のゆがみに合わせたインソールを提案する、花王の本松達朗ブランドマネジャー =東京都中央区の花王(重松明子撮影)「解析して終わりではなく、改善の具体策を示すことが大切。インソールのかかとのカップが傾きをホールドするなどして、着用時の姿勢のゆがみを補整します」と本松達朗ブランドマネジャー(41)。年初に米国で開かれたテクノロジー見本市CESにも出展し、「熱い関心が寄せられた」。
生活用品大手の花王がインソールを発売するのは意外な印象も受けるが、紙おむつのはき心地の研究を端緒に、約2万人の歩行データを蓄積している。
須藤室長は「もともと加速度センサー技術を用いた自社開発の歩行計を配って調査していたが、終了後も返したくないという方が大半。それだけ自分や身内の歩行の質に対する関心が高いということ」。
平成20年ころのことで、当時はガラケーからスマホへの切り替えの真っ最中。「スマホには加速度センサーが内蔵されているため、これを活用すれば多くの人に届けられるのではと考えた」と振り返る。
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先端技術による歩行センシング(データ取得・解析)事業を展開するNECは、歩行分析センサーを搭載した専用インソール「A-RROWG(アローグ)」を令和2年に商品化。普段の靴に内蔵するため測定の緊張感を伴うことなく、継続的に詳細な歩行データを取得できる点が評価され、医療・介護施設の保険診療外サービスで活用が広がっている。
自費リハビリを行う北原グループ(東京都八王子市)では、今年1月から導入。広報担当者は「自覚しづらい歩行のクセ、左右差、安定性などを客観的に可視化して身体状況を把握することは、より適切なリハビリ提案につながり、患者や家族のモチベーション維持や外出再開にあたっての安心材料にもなる」。
歩行と認知症やフレイル(加齢虚弱)予防の関連研究を藤田医科大と進めるフリックフィット(東京都渋谷区)が昨秋、インソール型歩行センサーの資金調達をクラウドファンディングで行うと、780人から2千万円以上が集まった。
歩行が単なる移動行為に留まらないことを示すような注目度。人生の一歩一歩を大切に…。前向きな意識も相乗効果で高まりそう!?(重松明子)