参院選で与党大敗:識者はこうみる

 7月22日、20日に投票が行われた第27回参議院選挙は全125議席が確定し、自民・公明の連立与党は過半数を割り込む大敗となった。今後の政局や市場への影響について、市場関係者に見方を聞いた。写真は国会議事堂。2016年7月、都内で撮影(2025年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 22日 ロイター] - 20日に投票が行われた第27回参議院選挙は全125議席が確定し、自民・公明の連立与党は過半数を割り込む大敗となった。

今後の政局や市場への影響について、市場関係者に見方を聞いた。

◎財政拡張期待で一時的に株高、リスクは政治不安

<三井住友トラスト・アセットマネジメント チーフストラテジスト 上野裕之氏>

市場が織り込んでいた通り与党過半数割れとなったが、注目したいのは国民民主党と参政党が比例選で躍進したことだ。両党ともに社会保険料の引き下げや消費税減税といった、現役世代に「刺さる」公約を掲げており、今後自民党は民意を反映するためにも財政政策を考え直さざるを得ない。財政政策のテコ入れが求められる中、財政拡張への期待から一時的な株高が進んでいるとみている。

投票率が上がり民意が反映されやすくなったのは良い半面、政策運営という観点からすると、野党が乱立したことで今後は不安定になりやすい。きょうはいったん株高となっているが、政治の不安定さが意識され始めると市場はマイナスに動くだろう。

今後の注目ポイントは、8月1日に向けた対米交渉と自民党内での動きとみている。対米交渉を巡っては、選挙を通過したことで、より切れるカードが増えたはずだ。自民党に関しては、石破茂首相は続投の意向を表明したが石破おろしが進むとの見方も少なくなく、党内人事を含めた動きが注目される。この部分は市場では織り込まれていないため、難航すると株価にはマイナスとみている。

◎初期反応は円高、買い戻し主導なら長続きせず

<外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也氏>

参院選後のドル/円の初期反応は円高だった。対ドルだけでなく、円はほぼ全面高となり、参院選の結果が円高につながった様子がうかがえる。

とりわけ欧米市場での円買いが強かった。自公の負け方が事前に警戒されたほどひどくなく、石破茂首相が続投表明もしたことで、ひとまず大きな混乱は回避されるとの思惑から、先週の特に後半にかけて円売りを仕掛けていた海外投機筋が買い戻しに動いたようだ。

ただ、買い戻し主導であれば長続きはしないだろう。日本の政局がどうなるか不透明な上、現金給付に関して国民の理解が得られなかったとの首相発言もあった。野党の協力を仰がざるを得ない中で、減税の可能性が高まっているようにみえる。改めて円が売られる可能性はあるだろう。

不安定な政治基盤に加え、インフレ下にありながらも日銀が利上げに動きにくい状況となっており、円買いが強まるとは考えにくい。下値余地は146円程度までに限られるのではないか。上方向は心理的節目150円を上回り、勢いがつけば151円程度への円安はあり得るだろう。 ◎財政拡張懸念残る、再び金利上昇圧力に

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

一般的には自民・公明の与党が大敗しなかったことを評価している印象だ。参院選後の外為市場は初動の動きで円が買い戻されるなど、石破茂首相の続投が好感されたようだ。ただ、今回の参院選で与党は過半数を割り込み、衆議院・参議院でいずれも少数与党となった。7月31日に開催される自民党での両院議員懇談会や8月1日召集で調整が進んでいる臨時国会で、首相退陣や物価高対策の話が出てくる可能性がある。政局の流動化は変わらないという結論だ。

自民党が負けたことから、現金給付に関しては「NO」というのが国民の総意だ。野党が主張している消費税減税が現実味を帯びる。範囲や期間に関しては集約されていないものの、現金給付以上の拡張的な財政政策がとられる蓋然性が高くなった。

あすに予定されている40年債入札については、発行額が減額されるものの需給構造は変わらず、財政拡張懸念が残る中、良好な結果に終わるとは考えにくい。先週末にかけては超長期債はいったん落ち着きを取り戻していたものの、仕切り直して再び金利上昇圧力がかかりやすいとみている。

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