アコラミジス、ATTR-CMの心血管イベントを長期抑制

 トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)は進行性の疾患で、心血管イベント再発による大きな負担を伴う。ATTR-CMに対するトランスサイレチン四量体安定化薬アコラミジスの有効性と安全性を検討した第Ⅲ相プラセボ対照ランダム化比較試験ATTRibute-CMでは、全死亡と初回心血管関連入院(CVH)の複合イベントの有意な減少が示され、投与3カ月から効果発現が認められた。米・Oregon Health and Science UniversityのAhmad Masri氏らは、同試験およびその非盲検延長試験のデータを用いて、累積心血管イベントに対する同薬の有効性を検討する探索的事後解析を実施。アコラミジスは複合心血管イベントの累積負担を30カ月にわたり有意に低減し、投与1カ月後の早期から効果発現が認められたことをJ Am Coll Cardiol2025年9月28日オンライン版)に報告した。(関連記事「アコラミジス、アミロイド形成抑制に期待」)

累積イベントを複合と単独の両方で評価

 ATTRibute-CM試験では、18~90歳のATTR-CM患者をアコラミジス群(800 mg 1日2回)とプラセボ群に2:1でランダムに割り付け、30カ月治療。試験を完遂し、組み入れ基準を満たした患者は非盲検延長試験に組み入れた。

 今回の事後解析では、修正intention-to-treat(ITT)集団(アコラミジス群409例、プラセボ群202例)において、中央判定に基づく心血管死亡またはCVH(初回および再発)、再発CVH単独(30カ月時)、心血管死亡(42カ月時)の累積発生率を測定した。全体の平均年齢は77.2±6.6歳で、男性が90.8%、白人が87.9%、野生型ATTR-CMが90.3%だった。

 治療群ごとの平均累積イベント数と群間差は修正Andersen-Gillモデルで推定した。

早期から効果発現し、群間差が経時的に拡大

 解析の結果、プラセボ群と比べアコラミジス群では30カ月時における累積複合イベント発生リスクが有意に低かった48.5% vs. 33.3%、ハザード比(HR)0.51、95%CI 0.43~0.62、P<0.0001〕。

 心血管死亡または再発CVHイベントの19%、CVHイベントの22%が最初の6カ月以内に発生した。

 プラセボ群と比べ、アコラミジス群では投与1カ月時から累積イベント発生数が少なく、その差は経時的に拡大し、30カ月時点では治療100例当たり53件(95%CI 29~79件)のイベント回避につながった

 42カ月時においても、プラセボからアコラミジスへの切り替え群と比べ、アコラミジス継続群で心血管死亡リスクが有意に低かった(HR 0.55、95%CI 0.39~0.79、P=0.0011)。またCVHの年間再発率は、30カ月時までに有意に低下した(相対リスク比0.50、 95%CI 0.35~0.69、P<0.0001)。

 以上の結果を踏まえ、Masri氏らは「アコラミジスはATTR-CM患者における複合心血管イベントの累積負担を30カ月にわたり有意に低減した。プラセボ群と比べ、アコラミジス群では投与1カ月時からイベント数が少なく、その差は経時的に拡大し、30カ月時点で治療患者100例当たり53件のイベント回避が認められた」と結論。「複合心血管イベントおよびCVHイベントの約4分の1は6カ月以内に発生しており、ATTR-CMにおける早期評価と診断の重要性が示唆された」と強調している。

医学ライター・小路浩史

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