「空飛ぶクルマ」実用化へ 認証取得や生産体制構築
「空飛ぶクルマ」を開発する東海地方ゆかりの企業が、実用化に向けた取り組みを加速させている。すでに昨年の大阪・関西万博などでデモ飛行を披露しており、商用運航に必要な認証の取得や生産体制の構築へと段階が移っている。(鞍馬進之介) トヨタ生産方式 トヨタ自動車は6月末、米ジョビー・アビエーションと生産を担う合弁会社の設立に合意した。不良品の低減と生産性向上を目指す「トヨタ生産方式」を取り入れた生産体制を整備し、認証審査に用いる機体の試作や将来の需要拡大を見据えた生産能力の増強を推進していく。 新会社は、商用機の生産を目的として米カリフォルニア州に設立し、トヨタが51%の102万ドル(約1億6000万円)、ジョビーが49%の98万ドル(約1億5000万円)を出資する。トヨタの豊田章男会長は「今回の関係強化は、未来のモビリティー社会の実現に向けた大きな一歩になる」とコメントした。 ジョビーは、昨年の大阪・関西万博の会場で、ANAホールディングス(HD)と空飛ぶクルマのデモ飛行を行い、一般にも公開した。デモ飛行を行った機体の「S4」は5人乗りで航続距離が160キロに達し、空飛ぶクルマの「実用化の本命」と期待されている。 創始者の思い トヨタは、グループ創始者の豊田佐吉が1925年に、飛行機に載せて太平洋をひとっ飛びできる蓄電池開発の懸賞金に寄付するなど、空の移動手段に対する思いも強い。2020年、ジョビーに出資を始め、自動車生産や技術開発の知見を生かして支援してきた。 トヨタ出身者らが設立し、空飛ぶクルマの開発・製造・販売を行う新興企業「スカイドライブ」(愛知県豊田市)も、商用運航に向けた準備を着々と進めている。米国での型式証明取得に向けた段階となる「機体概要説明会」を、米連邦航空局(FAA)に対して始めた。機体の設計思想や、安全基準を守るための具体的な取り組みなどについて技術検証が行われる見通しだ。 時速100㌔で安定走行 今年2月、スカイドライブは三菱地所などとともに、都内で搭乗前の保安検査など一連の手続きを取り入れたデモ飛行を行った。 6月には、開発中の機体が実用速度域の時速100キロで安定して飛行し、設計段階で想定した機体の動きを実機で確認した。山口県内で実施した高速飛行試験では、機体の安定性や制御性能、システムなどが想定通りに機能するかを調べ、設計や解析の妥当性を確認できたという。 これまでに、実機の飛行を数百回重ね、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の風洞試験などでデータを蓄積してきた。今後は、28年の商用化に向けた手続きを着実に進めていくとしている。 内外企業が競合 国土交通省によると、日本国内での空飛ぶクルマの型式証明の申請受理は、8月21日までで5件ある。この中に、ジョビーやスカイドライブも含まれており、内外企業が、日本国内での実用化に向けて競い合う構図となっている。 なお海外の動きも活発だ。米国では、ジョビーに次いで2社目となる米アーチャー・アビエーションが、FAAから24年6月に、商業運航認可を取得している。中国では億航智能が、23年に当局から型式証明、24年に生産許可証を取得している。 空飛ぶクルマは、政府が7月に閣議決定した日本成長戦略にも盛り込まれており、40年頃に世界で1500億円規模の市場獲得を目指す目標が掲げられている。最先端技術と安全運航を競い合う業界で、東海企業の貢献が期待されている。