<主張>回顧2025 新しい政治の段階始まる 平和を守る道へ踏み出した 社説
国際秩序を専制国家が脅かす中、民主主義の日本では今年、自民党と日本維新の会による新しい連立の枠組みで高市早苗政権がスタートした。内閣支持率は高く、若者世代では空前の水準となっている。ただし、そこに至る道は険しかった。
中国は9月、抗日戦勝80年と称し、北京で軍事パレードを行った。習近平国家主席とロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の独裁者3人がそろい踏みしたのは異様な光景だった。彼らの脅威を一身に受けているのはほかならぬ日本である。
参院選で国民の信失う
米国では1月、トランプ大統領が2期目の政権を発足させた。その関税政策は日本を含む世界を当惑させた。ロシアが侵略するウクライナへの対応などで米国と欧州諸国の関係はギクシャクするようになった。
自民、公明両党連立の石破茂前政権が昨年の衆院選に続き今年7月の参院選でも大敗し、衆参両院とも与党過半数割れに陥った。それでも石破氏は続投表明した。民意無視の居座りを見ても野党第一党の立憲民主党は内閣不信任決議案提出を真剣に論じることもなかった。
議会制民主主義の危機だったが、自民内で自浄作用としての「石破降ろし」の動きが始まり、石破氏は9月にようやく退陣表明した。
10月の自民総裁選の1回目投票において、高市氏は党員・党友票で2位以下に相当な差をつけた。党員・党友の危機感のあらわれであり、高市氏の政策や保守の信条が評価された。党員・党友の動向が国会議員に影響を与え高市総裁が生まれた。
国民民主党と参政党は参院選で躍進した。特に参政党は初めて主要政党に数えられるようになった。石破自民から離れた保守層の受け皿となった。
参院選では外国人問題が主要な争点となった。国政選挙でこの問題が争点化したのは初めてだったのではないか。参政党は「日本人ファースト」を掲げた。これに対し、左派は「排外主義」のレッテルを貼って反発したが、国民の支持は広がらなかった。自民や維新、国民民主なども外国人問題へ取り組む姿勢を強めた。人口に占める割合が3%となった今、外国人問題は日本の主要課題となった。
参院選や報道各社の世論調査を通じて、戦後、保守に対抗してきた日本的リベラル、左派の退潮が露(あら)わになってきたのも今年の特徴である。
石破氏の選挙での「敗北」もこの背景があった。憲法改正に熱意を示さず、同盟国の大統領であるトランプ氏との個人的信頼関係構築に努めなかった。安定的な皇位継承策では男系(父系)継承という最重要原則を踏まえた立法府の総意形成に指導力を発揮しなかった。自民支持層が見限るのも当然だろう。
左派政党の退潮露わに
高市氏は危機を迎えていた自民の総裁となった。公明は連立離脱を表明し、26年間の自民と公明の協力は幕を閉じた。
自民・維新の新連立で高市氏は日本憲政史上初の女性首相となった。連立合意書は日本と国民を守る上で画期的内容となった。「『国民をどう守るか』『わが国の平和と独立をどう守るか』というリアリズムに立った視座が不可欠」とし、国家安全保障戦略など戦略3文書の前倒し改定を打ち出した。
連立合意は、国家情報会議設置やスパイ防止法制定などインテリジェンス機能の強化も打ち出した。公明との連立では実現困難なテーマだ。安定的な皇位継承策の確立へ、皇統に属する男系男子(旧宮家の男系男子)を皇族とするため、来年の通常国会での皇室典範改正を目指すとした意義は極めて大きい。
高市首相は臨時国会で、ガソリン税の暫定税率廃止や「年収の壁」の問題を決着させた。仕事の速さは暮らし向きの改善を期待する国民に評価された。
注目すべきは、首相の台湾有事を巡る発言を立民などの国内左派勢力や中国が激しく批判したにもかかわらず、内閣支持率が微動だにしなかった点だ。中国政府の異常な反発や対日威圧は、その脅威を国民に改めて知らしめた。
高市首相は就任直後の日米首脳会談でトランプ氏との良好な関係の構築に成功した。日米同盟の絆を強め、日本の防衛力、外交力、情報力を向上させることが平和を保つ唯一の道だ。日本は今年、その方向へ歩を進めていくことになった。