高橋光成は「苦しそうだった」 597日ぶりの白星を演出…正捕手が見せた"機転"
■西武 7ー1 楽天(29日・ベルーナドーム)
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「これは貴重なボールですね。どのボールよりも……」。これがプロ通算66勝目の高橋は、ウイニングボールを手に実感を込めて言葉を絞り出した。「久々すぎて、わけのわからない感情になりました。試合後はずっと泣きそうだったのですが、こらえていました。チームメートからハイタッチをしてもらった時や、お立ち台でファンの皆さんからの声援を聞いた時には、危なかったですね。いつ泣いてもおかしくなかったです」と打ち明けた。しかし、群馬のからっ風にあおられながら育った男は、最後まで涙を見せなかった。
立ち上がりは“最悪”だった。初回はストレートが指に引っ掛かりすぎて、先頭の小深田大翔内野手、続く村林一輝内野手に連続四球を与え、早くも内野陣がマウンドに集まった。
「みんなが集まってくれるだけで、力になりました」と高橋は粘る。3番の浅村栄斗内野手をフォークで空振り三振、4番の鈴木大地内野手もフォークで中飛に仕留める。そして渡邊佳明内野手に対しては、6球全てがフォーク。極端な配球で一ゴロに打ち取り、先取点を許さなかった。
すると味方打線がその裏、ドラフト2位ルーキー・渡部聖弥外野手の中前適時打で先制したのをはじめ、6回までに大量7点を奪った。高橋の連敗中は打線の援護も少なく、勝てない一因となっていた。連敗中の援護点は最高でも「4」止まり。今季も過去4試合の援護率(登板中に味方打線が挙げた得点を、9イニング当たりで表した数値)は「1.44」に過ぎなかった。最悪と言える調子の試合で、破格の援護があったのだから皮肉なものだ。
相手がまさかのヒットエンドランを失敗「びっくりしました」
バッテリーを組んだ古賀悠斗捕手は「立ち上がりの光成さんは、真っすぐの制球がばらけていて苦しそうだったので、変化球主体に変えました。光成さんとも、今日は三振を狙うよりも打たせて取っていこうと話し合いました」と明かす。
幸運にも助けられた。1点リードの2回、1死三塁のピンチを招き、打席に左打者の堀内謙伍捕手を迎えた。相手はカウント2-2からの5球目に、三塁走者がスタートを切り、まさかのヒットエンドランを仕掛けてきた。内角を狙った高橋のスライダーは、たまたますっぽ抜けて外角のボールゾーンへ。堀内はバットに当てることができず空振り三振。三塁走者も三本間で挟殺され、西武は際どく無失点でしのいだのだった。バッテリーは「(相手の作戦には)びっくりしました」と口をそろえた。仮に投球が狙い通り内角に行っていたら、最低でも内野にゴロを転がされて同点にされ、試合の展開はまた違っていたかもしれない。
それにしても、2023年までは3年連続開幕投手を務め、エースの座に君臨していた高橋が、20か月近くも勝てなかった苦しさは想像を絶している。捕手として一緒に悪戦苦闘してきた古賀悠は「それでも、苦しい仕草を見せないのが光成さんでした。勝てていなくても、全くぶれずに投げない日もしっかりトレーニングをして、スコアラーさんと話し合いながら相手打者への対策を練っていた光成さんを、ずっと見てきました。相当我慢をされていたと思います。そこが、もともとエースと呼ばれていた人の立ち姿なのだと思います」と述懐。「僕自身も見習うべき姿だと思います」とうなずいた。
高橋は「こういう経験はなかなかできない。ポジティブにとらえて、今後の野球人生につなげていけたらと思います」と苦笑した。転んでもただでは起きない。高橋はこれから、597日間の苦しみの中でつかんだ教訓を結果とともに披露するはずだ。