Pixel Watch 4がついに「Apple Watchじゃないけどあり」な存在に成長した

Image: Adriano Contreras - Gizmodo US

Androidならこれ!な存在に。

Google(グーグル)Gemini搭載のPixel Watch 4が発売されました。米GizmodoのRaymond Wong記者がしばし使った感じでは、いよいよApple Watchに追いつく勢いだそうで、どのへんが良くなったんでしょうか?

Gemini推しだらけな最近のGoogleですが、Pixel Watch 4もその一例で、GoogleアシスタントがGeminiに入れ替わりました。前より賢くなったなら別に問題ないんですが、実際そんなにインテリジェントになった感はありません。ただ、ハードウェアはたしかにだいぶアップグレードされてます。

「アップグレード」とはつまり、Pixel Watchが4代目にしてついに、Apple WatchやSamsung(サムスン)Galaxy Watchに比肩しうるレベルに来たということです。前のめりすぎるGeminiにイラッとすることもあるかもしれませんが、Android向けで見栄えがよく、バッテリーが長く使えて、健康・フィットネスのトラッキングが正確で、SamsungでもOnePlusでもないスマートウォッチが欲しい人にとっては、Pixel Watch 4はまさにニーズを満たしてくれるはずです。

Google Pixel Watch 4

評価:★★★★☆

価格:350ドル(日本価格 5万2800円)〜

好きなところ:大きくて明るいドーム型ディスプレイ、より長持ちするバッテリー、健康・フィットネストラッキングの精度向上、新しい急速高速充電ホルダー

好きじゃないところ:Geminiの挙動に当たり外れがある、バンド着脱の仕組みが使いにくい

細かいけどQOL向上する設計

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去年のPixel Watch 3では、待望だった大きめモデルの45mmサイズが追加され、バッテリー駆動時間も向上しましたが、それでも全体的にはマイナーなアップデートでした。それに対しPixel Watch 4は、Pixel Watch 3をより実用的に使いやすくしたものですが、その違いはパッと見ではわかりにくいです。

Pixel Watch 4は先代に引き続き2サイズの、41mmと45mmの展開です。僕は見やすい45mmモデルの「ムーンストーン」(パープルがかったグレー)を選びました。

常時オンのディスプレイはすごく明るく(ピーク輝度はPixel Watch 3の2,000ニトから3,000ニトにアップ)、日光の下でもはっきり見えます。ベゼルが16%細く、画面サイズは10%大きくなりました。「Actua 360ディスプレイ」はアナログ時計のように若干ながらドーム型で、実物じゃないと伝わりにくいかもしれませんが、時計もソフトウェアも心なしか見やすいんです。

45mmのPixel Watch 4(左)と、41mmの初代Pixel WatchImage: Adriano Contreras - Gizmodo US

新たなデザイン体系「Material 3 Expressive」のおかげで、UIの見え方は今まで以上に良くなりました。ポップなアニメーションが、スマホよりもスマウォに向いてると思います。

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Pixel Watch 4は新しいQualcomm(クアルコム)Snapdragon W5 Gen 2チップ搭載ですが、Pixel Watch 3に比べてそこまで速いかはわかりません。Wear OS 6はしっかりサクサク動きますが、ほんの何回かひっかかりを感じたのが自分のせいなのか、2GBのRAMのボトルネックなのかは何ともいえないです。

2GBのRAMというのはSamsungのGalaxy Watch 8と同じですが、Apple Watch Series 11の倍あります。ストレージは32GBありますが、スマウォに音楽とかデータをみちみちに入れる人っていうのもわりとレアかと思います。

あとPixel Watch 4は、Googleいわく緊急衛星通信ができる最初のスマートウォッチになる…はずで、たしかに8月の発表時にはそうだったんですが、その後Apple Watch Ultra 3が先に発売されてしまいました。

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バンドの着脱は相変わらずやりにくく、ボタンを押してバンドをレールに沿ってスライドさせる必要があります。Apple WatchやGalaxy Watchの簡単さとは雲泥の差があります。

ただ、今回良かったのは、充電端子が画面の左サイドに移動し、急速充電ホルダーに横向きに置いて充電するようになったことです。これで充電中でも時間や充電状況を確認できます。

横向きに置いて、充電中も時刻や充電状況を表示Image: Adriano Contreras - Gizmodo US

この新しい充電方式によってQOL向上が微妙に向上してます。充電のスピードも前より25%速くなり、15分でゼロから50%までいけます。運動用スマートウォッチという意味でも、睡眠トラッキングという意味でも大事ですね。

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Pixel Watch 4は触覚フィードバックも強化され、普通の振動よりもっとニュアンスがあります。といっても、Apple Watchには初代からプレミアムなタプティックエンジンが入ってたんですが、Androidの振動もついにここまで…!と感慨深いです。

運動トラッキングがより正確に

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GoogleがFitbitを買収した2021年、これですぐにもApple Watchをしのぐ最強のスマートウォッチが生まれるんだと期待されました。でも、その期待はそう簡単には実現しませんでした。Nestが現在のGoogle Homeに至る過程もそうでしたが、Fitbitアプリでの運動や健康トラッキングは、Pixel Watch 4でやっと洗練された感があります。

今まで使ったことがある人には、Pixel Watchでの運動トラッキングの精度の頼りなさはわかってもらえると思います。

歩数はApple Watchよりだいぶ不正確、自動トラッキングでは活動量を記録できてない、位置情報トラッキングも不正確などなど、Apple Watchに戻りたくなる理由がたくさんありました。Googleいわく、Pixel Watch 3でのトラッキングの精度問題をPixel Watch 4では改善すべく、ハードウェアをかなり修正したそうです。

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例えばマルチパス光学心拍数センサーはPixel Watch 3のままなんですが、ソフトウェアの刷新で精度を高めたとのことです。たしかに、例えば心拍数でいうと、Pixel Watch 4のデータとApple Watch Series 11のデータの差は1分あたり1〜3拍程度だったんですが、Pixel Watch 3のときは1分あたり5〜10拍の誤差がありました。つまり差分が前より縮んでいるので、心拍数データに基づく睡眠トラッキングの精度も向上したはずです。

僕はPixel Watch 4を左手に、Apple Watch Series 11を右手に着けて寝てみて、それぞれのトラッキングアプリ(Fitbitとヘルスケア)が出す1週間のデータを比較してみました。

結果はやはりPixel WatchとApple Watch間の差は前より小さくなっていました。ちょっと変だったのは、2晩目だけですが、Pixel Watch 4がApple Watch Series 11より1時間長く睡眠を記録していたことです。が、その現象は1回だけで、それ以外の日は強いていえば、Pixel Watch 4の方がApple Watchよりも起床時刻を1〜2分遅く記録していることが多かったです。

こうした差異が起きたのは僕のミスかもしれないし、違う手首に着けていたせいなのかもしれません。あとはある日、朝起きてPixel Watch 4の睡眠ウィジェットを開くと、睡眠データがないといわれたこともありました。でも、スマホアプリの方を開くと、スマートウォッチウィジェットの中にちゃんと睡眠データが入っていて、つまりデータの同期ができてなかったんですね。Apple Watch Series 11では、睡眠データ表示にラグがあったことはなく、いつも瞬間的に同期されていました。

より正確になった心拍数センサーImage: Adriano Contreras - Gizmodo US

Apple Watchでは今年から睡眠スコアが追加されたので、僕は睡眠週間を改善したくなりました。どちらのスマウォも睡眠時間とか睡眠ステージとかで分析し、スコアを出してくれます。こういうスコアがスマウォやフィットネストラッカーによって違うのは、ちょっとわかりにくいとこですね。

Pixel Watch 4では、睡眠スコアは「睡眠時間、深い睡眠とレム睡眠、回復」のポイントの合計で計算されます。一方Appleは睡眠スコアも(例によって)後追いで追加しましたが、データの見せ方は「睡眠の長さ、就寝時刻、睡眠中断」のドーナツ型で、こちらのほうがわかりやすい気がします。

またPixel Watch 4ではデュアル周波数GPSが導入され、僻地でも無線通信が混み合う都会でも、より正確なルートトラッキングが可能になりました。自動トラッキングも一部のアクティビティで精度向上しています。この辺は特に画期的というわけでもなく、基本的なものの精度を高めてApple Watchにキャッチアップした感じです。

さらにFitbit Premium(日本では640円/月、または6,400円/年)に入ると、フィットネスや健康、睡眠についてのより詳細な分析や、ワークアウトのクラス、AIによるコーチングやアドバイスが受けられます。僕はそんなにデータ大好きじゃないので、こういうものに課金しないことが多いんですが、好きな人なら深堀りしてもっとアクティブライフを楽しめるんじゃないかと思われます。

アシスタントからGeminiへ

「この近くのベストなタピオカ屋さんは?」聞いてみましたImage: Adriano Contreras - Gizmodo US

GoogleのGeminiは、好きな人もそうじゃない人もいると思いますが、当面はずっと存在し続けます。が、デバイスによってできることが違い、Pixel Watch 4での機能は限られてます

Googleアシスタントの後継であるGeminiは、先代よりもより「インテリジェント」で、文脈を踏まえて動ける…はずですが、実際は旧アシスタントよりほんのちょっと賢い程度です。大きな違いは「手を上げて話す」、つまり「ヘイGoogle」と言わなくてもGeminiを呼び出せる機能で、厳密にテストしたわけじゃないですが、7、8割方は機能したと思います。運動を頑張ってるとき(ガンガン走ってるときとか)は、机に座ってるときや歩いてるときよりも失敗しやすかったです。

「ヘイGoogle」が必要なくなって初めて、今まで割と頻繁に言ってたんだなと気づきました。ふだんPerplexityで検索してるようなことを聞いたり、単位を変換したりといったことでGeminiを使うようになりました。

Geminiが問題なく動くときは、たしかに有能なアシスタントが手首に住んでいる感覚です。「Google Keepにチェックリストを作成。最初のアイテムはキャットフードを買う、2番目は…」といった感じに頼むと、ちゃんとGoogle Keepメモにチェックリストができていて、それが僕の全デバイス(Appleデバイス含め)に同期されるんです。

ただ、ちゃんと機能しないこともあり、例えば音声の記録を頼んだときは、「私はテキストベースAIなので録音はできません」と寂しい対応でした。AIチャットボットは、やっぱりまだまだ発展途上ですね。

あとはPixel Watch 4上のGeminiのバージョンが、最初のプロンプトの後も聞き続けてくれるGemini Liveじゃないのもちょっとイラッときます。最初のプロンプトに回答された後に会話を続けるには、マイクのアイコンをタップする必要があるんです。

タピオカ屋さんもちゃんとお勧めしてくれますImage: Adriano Contreras - Gizmodo US

ユーザーとしては、GoogleアシスタントがGeminiになったとかはそんなに興味ないんですよね。ただ、「インテリジェント」とされるAIが、Pixel Watch 4に入ってるレコーダーアプリさえ開けないとなると、なんで?となってしまいます。Geminiがユーザーの自然言語による指示を理解してるんだったら、その指示通りアプリを開けるものと期待しちゃいけないんでしょうか。たぶん何かしら技術的な理由があるんでしょうけど、ユーザーには関係ないことです。

なおGeminiの名誉のために補足すると、Geminiは「レコーダーアプリを開いて」ってプロンプトは理解してくれたんですが、その後に「録音を開始して」を足したらできなかったんです。Geminiは本来「コマンドではなく自然言語も理解する」はずですが、Pixel Watch 4での実際の挙動では、そのスキルを実感できるケースがそこまでありませんでした。

あと「スマートリプライ」機能では、メッセージを解読した上で、「はい」とか「いいえ」「ありがとう」みたいな定型じゃない、適切な返事を提案してくれることになってます。

実際にGeminiが提案してくれた返事はたしかにこういう固定のものよりベターですが、そこまでパーソナルだったり、文脈に合っていたりするとは感じませんでした。雰囲気としては、読み取っている文脈はそれまでの長いやりとりではなく、ごく最近の2、3メッセージだけなのかな?という感じです。スマートリプライが動くのは主にメッセージアプリのみで、WhatsAppとかLINEでは機能しませんでした。

Androidならベストなスマウォ

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Pixel Watch 4は、Android勢としてはいちばんまとまった機能が、非Samsungのスタイリッシュなケースに入ったスマートウォッチです。iPhoneユーザーにとっては連携できないし、ずっと前からApple Watchでできてたことができるようになった、ってくらいなので気にする必要もないです。

よりミニマリストなデザインが好きな人には、Pixel Watch 4はGalaxy Watch 8よりお勧めしたいです。Galaxy Watch 8の方が健康トラッキング系が若干充実してるし、ピンチとかシェイクといった便利なジェスチャーもありますが、Pixel Watch 4はバッテリーがもっと長持ちします。僕は毎晩充電する必要がなくなり、1日半ごとで大丈夫でした。ただバッテリーに関しては、1充電で2〜3日持ってしまうOnePlus Watch 3にはかないません。

GoogleのスマウォがついにAppleやSamsungに追いついたのは素晴らしいことですね。Apple Watchには、こんなライバルが必要でした。来年のPixel Watch 5ではさらに、Apple Watchをリードするような展開を期待したいです。

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