所有者の住所異なる住戸7割のマンションも 投機目的「確信深めた」 樋口高顕千代田区長

インタビューに応じる千代田区の樋口高顕区長=20日午後、東京都千代田区(酒井真大撮影)

高騰を続ける東京都心部のマンション価格の抑制に向けて今年7月、不動産業界団体に新築マンションの転売規制などを要請した千代田区の樋口高顕区長が、産経新聞のインタビュー取材に応じた。樋口氏は異例の要請に踏み切った経緯を説明し、区内のマンションによっては、区分所有者の住所が物件の所在地と異なる住戸が7割に上ったことを明らかにした。インタビューの詳細は次の通り。(聞き手 原川貴郎)

--7月に不動産協会に対し「区内の投機目的でのマンション取引等に関する要請」を行った

「都心のマンションはこれまでも『億ション』と呼ばれてきたが、価格の高騰が続き、1億円で済まず3億円、5億円というマンションが増えてきた。新築だけでなく中古の価格も上がっており、賃料の引き上げを求められたとの声も受けている。大変深刻な状況で、千代田区に住みたくても住めない方々が増えるのではないかと考えている。価格高騰の要因には、資材費や人件費の上昇に加え、投機目的とみられる取引があると考えている」

--そうした認識に至ったのは

「事業者にヒアリングを行い、区でも独自にここ数年で竣工(しゅんこう)した区内のマンション全戸の登記簿を調べた。あるマンションは、所有者の住所と当該物件の住所が一致しない住戸が7割にも及んだ。昨年竣工したマンションで多数の住戸が転売されていることも分かり、確信を深めた」

--投機目的とみられる外国人の購入もあるか

「海外の方も少なからずいる」

--目立った国籍は

「登記簿調査とヒアリングから、アジア系が多いことが分かっている」

--今回の要請の対象となるマンションは

「都市開発諸制度を活用して容積率を緩和する物件と、市街地再開発事業で区が交付金を交付する物件の2種類だ。区内で販売されるすべてを対象にすべきだとの議論もあったが、法律や条例によらない規制は、行き過ぎた行政指導になってしまうとの懸念もあり、今回は外した」

「要請した5年以内の転売禁止と同一名義の複数物件の購入禁止は、一部事業者がすでに取り組んでいる。区と調整するマンションなので、事業者側も取り組みやすいだろうと思う。これだけ価格が高騰し、区民の皆さんが『もう家を買えない』ということであれば、配慮いただきたい。要請には公益性、正当性があると考えている」

--価格抑制策として国や都に求めることは

「昨今の状況を見ると、転売で諸経費がかかっても利益が出ている。短期で転売した場合の譲渡所得税の引き上げを都から国に提案していただきたい」

--他に検討している方策は

「転売禁止や課税強化だけでなく、住戸の供給数も増やさなくてはならない。建築基準法との兼ね合いで、なかなか厳しい規制があるが、例えば雑居ビルや老朽化したオフィスビルを住宅転用できないか。こうした議論もしていかなければならない」

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