ロシア・カムチャツカ半島沖地震、太平洋地域の津波警報解除 日本では注意報もすべて解除
画像提供, ロシア科学アカデミー地球物理調査所
ロシア・カムチャツカ半島沖で現地時間30日午前11時25分(日本時間同8時25分)ごろ発生した、マグニチュード(M)8.8の強い地震で、太平洋地域の広範囲で発令されていた津波警報は、日本時間31日朝までに解除された。日本では30日中にすべて津波注意報に切り替えられ、31日午後4時30分までにすべての注意報が解除された。
30日の地震では、カムチャツカ半島周辺や、日本の北海道から和歌山にかけての主に太平洋沿岸、米ハワイ州など複数の太平洋地域に津波警報が発令され、合わせて200万人以上に避難指示が出された。
非常に強力な地震だったものの、深刻な被害やけがは報告されていない。
ハワイを訪れていた観光客は、「想定していたような災害は起きなかった」とBBCに語った。
米ハワイ州マウイ島カフルイでは1.74メートルの津波が観測された。
ハワイ島ヒロには1.5メートル、オアフ島ハレイワには1.2メートルの津波がそれぞれ到達した。
ハワイ州のジョシュ・グリーン知事は住民に警告を発した際、「これは通常の波ではない。津波に襲われれば命を落とすことになる」と強調した。
しかし数時間後には、「現在のところ、影響は確認されていない」と報告した。
太平洋津波警報センター(PTWC)は、ハワイに出されていた津波警報を津波注意報に引き下げた。注意報は、強い波や潮流、軽微な浸水が発生する可能性はあるものの、大規模な津波の発生は見込まれないことを意味する。
ハワイ州緊急事態管理局のスティーヴン・ローガン氏は、避難者が自宅に戻ることは可能だとしつつ、注意を払い、車をゆっくり走らせ、洪水に警戒するよう呼びかけた。
米国立津波警報センターによると、西海岸のカリフォルニア州北部クレセント・シティーでは、最大1.09メートルの津波が観測された。
さらに南方のサンフランシスコでは、最大70センチメートルの潮位上昇が確認された。ロサンゼルスのサン・ルイス港では「急激かつ破壊的な潮位上昇」が見られたという。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州では、沿岸部の大半に津波注意報が出された。住民は海に近づかずに、安全が確認されるまで待機するよう指示された。注意報はその後解除された。
震源地の南西約350キロメートルに位置する千島列島北部のサハリン州セヴェロクリリスクなどには、最大5メートルの津波が到達した。約2000人が暮らすセヴェロクリリスクでは住民が避難した。
大きな被害やけが人は報告されておらず、カムチャツカ半島周辺に出されていた津波警報は解除された。しかしその後、カムチャツカ半島中央部のクリュチェフスカヤ山が噴火したと報じられた。
ロシアの地球物理調査所によると、クリュチェフスカヤ山の西側斜面で、赤熱した溶岩が流れる様子が確認された。同火山は定期的に噴火しているという。
サハリン州では、地震による損傷で電力網が停止した千島列島北部に非常事態が宣言された。
カムチャツカ州のウラジーミル・ソロドフ知事は今回の地震について、同州での地震としては「過去数十年で最大規模」だと述べた。30日午前の地震以降、マグニチュード6.9のものを含む余震が少なくとも6回発生しているという。
画像提供, ロシア非常事態省
日本の太平洋側では津波警報のサイレンが鳴った。岩手県の久慈港では30日午後1時52分に1メートル30センチの津波が観測された。同県では約200万人に避難指示が出された。
日本の気象庁は、北海道から和歌山県にかけての太平洋沿岸に津波警報を出したが、30日中にすべて津波注意報に切り替えられた。
31日午前10時45分には、一部地域の津波注意報が解除された。北海道や岩手、宮城、福島、茨城、千葉などでは引き続き出されていたが、同日午後4時30分までにすべて解除された。
福島第一原子力発電所では約4000人の作業員が避難したが、同原発を運営する東京電力は、異常は確認されていないとしている。
同原発では2011年3月に発生したマグニチュード9.0の巨大地震による津波で、メルトダウン(炉心溶融)が発生した。
画像提供, Reuters
フランス領ポリネシアでは、マルケサス諸島ヌクヒバ島で最大4メートルの津波が予測されたが、実際に到達した津波は1.5メートルだったと、ポリネシアの仏高等弁務官事務所は後に発表した。
津波警報はパプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツでも発令され、沿岸部の住民は高台への避難を指示された。
中国では浙江省と上海市に津波警報が出されたが、その後解除された。被害は報告されていない。フィリピンと台湾でも警報が解除された。
チリ、コスタリカ、エクアドル、オーストラリア、コロンビア、メキシコ、ニュージーランド、トンガでは、1~3メートルの津波が到達する可能性があるとして警告が出された。
ペルー当局は津波警報を発令。太平洋沿岸の125港のうち65港が閉鎖された。首都リマの海岸近くでは一部道路が閉鎖された。
今回の地震は、「環太平洋火山帯」と呼ばれる、多くのプレートが接する「地震活動が活発」な地域で発生した。イギリスの地質調査所によると、世界の地震の約8割は環太平洋火山帯で起きている。
カムチャツカ、日本、フィリピン、およびアメリカ大陸の太平洋沿岸地域の大部分はいずれも、こうしたプレート境界の近くに位置する。
米地質調査所(USGS)によると、今回の地震は、2010年のチリ地震と、1906年のエクアドル・コロンビア地震と並び、史上6番目の規模。5番目は、1952年にカムチャツカ半島沖で発生したマグニチュード9.0の地震で、同半島南部を最大12メートルの津波が襲った。