スーパーエルニーニョでカリフォルニアの海がバグり始める。熱帯の外来種が続々出現中
将来的には、熱帯の海洋生物が中緯度の海域に引っ越すんだろうな。極域の生物はどこに行けばいいんだろう?
いま、「ゴールデンステート」の愛称で知られるカリフォルニア州の海が、ちょっとバグっちゃってます。
歴史的な強さの「スーパーエルニーニョ」と、記録的な海洋熱波(海水温が異常に高い状態が長く続く現象)がダブルで直撃し、海面の水温はこれまでにない高さまで跳ね上がっています。
カリフォルニア沿岸に熱帯の外来種が続々と出現
海面上昇や嵐のリスクが高まっているだけでも厄介なのに、この異常な熱に誘われて、普段は見かけない熱帯のレアな外来種が続々と出現しているそうですよ。
たとえば、9月にはオレンジ郡のクリスタル・コーブを家族と散歩していた女性が、猛毒を持つセグロウミヘビに遭遇しました。過去に州内で発見されたのはたったの6回だけ。しかも、そのうち5回は今回と同じエルニーニョの年に浜辺へ打ち上げられたのだとか。
レアな海洋生物の目撃ラッシュは止まりません。ロサンゼルスのVenice Fishing Pier(ベニス釣り桟橋)沖では、地元の釣り人、ジュリアス・カルディネスさんが、州内で初めてキントキダイの一種(longfinned bigeye)を釣り上げました。
さらに、南カリフォルニアのそこかしこで、ジンベエザメやヒメウミガメ、シュモクザメ、オニイトマキエイ、ゴンドウクジラなどの目撃情報が住民から相次いで寄せられています。どれも本来なら、この冷たいはずの海域にはまず近づかない生きものばかりです。
なぜ熱帯の海洋生物が北上しているのか
ここ数週間、カリフォルニア沿岸でこうした外来の珍客が次々と目撃されている背景には、エルニーニョがもたらす深刻な影響があります。
海水温が上がり、エサが見つかる場所も変わったせいで、熱帯の生きものたちが北へと移動してきているんです。おそろしいのは、エルニーニョの勢力がピークを迎えるのはたぶん数カ月先ってこと。もうこんなに影響が出ているのに、本番はまだまだこれからというわけ。
エルニーニョは、赤道太平洋の海面近くを東から西へ吹く貿易風が弱まるところからスタートします。風が弱まると、西太平洋にたまっていた暖かい海水が、熱帯太平洋の中央や東側へと流れ込みます。
水温が上昇すると、大量の熱と水蒸気が海から大気中に放出され、世界中の気象パターンを狂わせます。しかし、異変が起きているのは大気だけではありません。海のなかでも、劇的な変化が進行しています。
スクリップス海洋研究所によると、エルニーニョが発生すると、沿岸の「湧昇(ゆうしょう)」が弱まりやすくなります。湧昇とは、深海から冷たくて栄養たっぷりの水が湧き上がって、暖かい表層水と入れ替わる現象です。
深海から届く栄養は、海の食物連鎖を支えるプランクトンにとって欠かせない食料源です。湧昇が止まると、海の栄養が枯渇するうえに、熱い海に弱い生物は、より冷たい水を求めて通常の生息域を離れるしかなくなります。
在来種の海藻や海鳥はサバイバル状態
カリフォルニアの海が熱帯の海洋生物にとって快適なぬるま湯になる一方で、ずっとここで暮らしてきた地元の在来種にとっては、かなりハードな状況になっています。
まず壊滅的な打撃を受けているのが、たくさんの種の生息地になっているケルプの森(藻場: 大型の海藻が生い茂る場所)です。
スクリップス海洋研究所のチームは、サンディエゴ沿岸のラホヤ沖にあるケルプの森で、今回のスーパーエルニーニョと海洋熱波による被害をすでに確認しているとのこと。
同研究所で海洋生物学の教授を務めるジェニファー・スミス氏は、10月7日のエルニーニョに関する説明会で次のように述べました。
海水温が驚くほど高く、湧昇流もほとんど見られません。水深約15mの海底でさえ、水温が約21℃もあります。海藻は暖かい水に長くさらされると枯れてしまいます。湧昇がないため、成長に必要な窒素やリンも届きません。この状況のなかで、海藻が生き残る力は著しく低下しています。
さらに深刻なのが、エサ不足による海鳥たちの悲劇です。高水温のストレスと海の栄養不足によって、在来魚の生息分布が変わり、それを食べる海鳥たちが何カ月にもわたって大量に餓死する事態が発生しています。
スクリップス海洋研究所で海鳥を研究するタミー・ラッセル氏は、声明で次のように指摘しています。
エサが減るため、海鳥のような海洋捕食者は、十分な食べ物を確保できなくなります。その結果、体が弱り、繁殖にも負担がかかり、死亡率の増加につながります。
生態系全体の生産性が落ちると、食べられるエサや生息域が限られている種ほど偏った影響を受けます。別のエサに切り替えられない種や、エサを探しに遠くまで移動できない種が、もっとも深刻な打撃を受ける可能性が高いでしょう。
ラッセル氏はまた、7月に受けたAP通信の取材でも、現場の惨状をこう語っています。
海鳥のウが岸まで歩いてきて、そのまま1時間もたたずに死んでしまう姿を見てきました。15分もしないうちに力尽きた例もあります。
こんな光景は、これまで見たことがありません。胸が張り裂ける思いです。沿岸部全域で同じような光景が目撃されています。
温暖化が進む未来の海の予告編
これからエルニーニョの勢力がピークへと近づくにつれて、カリフォルニアの海水温はさらに上がっていく見込みです。沿岸にはより多くの外来種が出現する可能性があります。在来種は、急激に変化する環境への適応にますます苦戦することになるでしょう。
今回のスーパーエルニーニョがもたらす爪痕は、地球温暖化が進んだ未来のカリフォルニアの生態系を少しだけ先取りして私たちに見せつけているのかもしれません。
健全な海洋生態系は、食料や雇用、安定した気候など、人間社会に多くの恩恵を授けてくれます。私たち人間も、それぞれが暮らす場所に根を張る「在来種」だということを忘れてはいけない気がします。