トランプ氏、クックFRB理事の辞任要求-捜査要請の書簡に言及

トランプ米大統領は20日、クック連邦準備制度理事会(FRB)理事に対して辞任を要求した。これに先立ち、米連邦住宅金融局(FHFA)のパルト局長は2件の住宅ローンに絡み、クック理事を捜査するよう、ボンディ司法長官に書簡で要請していた。トランプ政権がFRBへの圧力を強める構図が改めて鮮明になっている。

  トランプ大統領の側近であるパルト氏は、8月15日付でボンディ長官ら宛てに書簡を送り、クック氏が刑事犯罪を犯した可能性があると指摘した。ブルームバーグ・ニュースが書簡の内容を確認した。

  書簡ではクック氏が「有利な条件で住宅ローンを得るため銀行の書類や不動産記録を改ざんした」と記されており、「住宅ローン詐欺に該当する可能性がある」と主張している。司法省はこの書簡を受領したと、事情に詳しい当局者が明らかにした。だが、詳細については言及を避けた。

  トランプ氏は同書簡に言及し、「クック氏は今すぐ辞任すべきだ」と自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルに投稿。パルト氏も今回の疑惑は、トランプ氏がクック氏を「解任する根拠」になるとSNSに書き込んだ。

  これを受けて、ドルが下落する一方、金価格は値上がりした。

  一方、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は政権関係者の話として、トランプ大統領がクック理事の解任を検討していると側近らに伝えたと報じた。クック氏が辞任しない場合、正当な理由で解雇することを検討しているという。

トランプ氏に新たな機会も

  トランプ政権はこれまでにも、アダム・シフ上院議員(カリフォルニア州)やニューヨーク州のジェームズ司法長官など、著名な民主党関係者に対して住宅ローン詐欺の疑いで追及を強めてきた。両者ともトランプ氏と長年対立してきた政敵だ。

  今回のクック氏に対する動きで、標的をFRBにまで拡大したことになる。パルト氏らを含むトランプ政権関係者はFRBに対して利下げを要求しているほか、パウエル議長に任期満了前の辞任を迫っている。

  現時点で刑事告発は行われておらず、ボンディ長官が実際に捜査に着手するかどうかも分かっていない。司法省とFRBはコメントを控えた。19日深夜の時点でクック氏からのコメントは得られていない。

  仮にクック氏が辞任すれば、FRB理事ポストにまた1つ空席が生じることになり、利下げを求めるトランプ氏にとっては人事を通じて影響力を行使する余地が広がる。トランプ氏はこれまで、利下げが必要との見解で一致する人物しか次期FRB議長には指名しないと明言している。

  パルト氏の書簡によれば、クック氏はミシガン州アナーバーの物件で住宅ローンを取得する際、少なくとも1年間は主たる居住地とすることを条件とした契約書に署名していた。ところが、その2週間後にはジョージア州の別の物件についても、主たる居住地であると申告してローンを取得していたという。

  クック氏はバイデン前大統領の指名を受けて、2022年に黒人女性で初となるFRB理事に就任。その後、2038年までの任期でバイデン氏に再指名された。

  最初の指名承認手続きでは、共和党議員や保守系メディアがクック氏の履歴書の一部に虚偽の記載があると主張し、承認を阻止しようとした。クック氏は疑惑を強く否定した。最終的に上院での採決は賛否が50対50できっ抗。上院議長を兼務するハリス前副大統領が決裁票を投じて承認された経緯がある。

  同じくバイデン氏が指名したクーグラー前理事は今月、任期満了を待たずに退任した。トランプ氏は暫定ベースの後任として自身の経済顧問であるミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を指名する意向を表明。金融政策の軌道を自らの望む方向へと誘導することを狙っている。

原題:Trump Demands Fed’s Cook Quit as Pulte Seeks Mortgage Probe (4)(抜粋)

(WSJ報道や市場の反応、上院での承認プロセスに関する情報を追加して更新します)

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