参政党の熱量と解散恐怖症 自民と立民の「なれ合い政治」にさせてはならぬ 一筆多論

街頭演説する参政党の神谷宗幣代表(右から2人目)ら=21日、東京都港区

参院選投開票日の前日の7月19日、東京・芝公園。「日本人ファースト」を掲げて支持を集め、台風の目となった参政党の神谷宗幣代表は、この場所で「マイク納め」を行った。

参政は今の自民党に失望している岩盤保守層の受け皿となり、躍進した。芝公園の隣に位置するのは、安倍晋三元首相の葬儀が執り行われた増上寺。因縁めいたものを感じずにはいられなかった。安倍氏が岩盤保守層から支持を得ていたのは周知の事実だ。

この日の東京の最高気温は33・1度。うだるような暑さの中、背後に東京タワーがそびえ立つその会場には約2万人が集まった。

「ヘイト集団」「差別政党」などと書かれたプラカードを掲げたアンチ参政党の人々も目立った。日の丸にバツ印をつけてはためかせる異常な光景もあった。参政支持者とアンチとの間で一触即発の事態になりかねない危険な空気が漂っていた。

神谷氏が登壇し、「日本人のプライドと国の未来にかけて、みんなでグローバリズムと闘いましょう」などと絶叫すると、会場のボルテージは最高潮に。その熱量は党の勢いをそのまま反映していた。

参政は改選1議席から14議席に増やした。国民民主党は改選4議席の4倍以上の17議席を獲得した。

これに対し立憲民主党は改選数と同じ22議席にとどまった。比例代表の得票数では、野党で最多は国民民主、次いで参政となり、立民は野党3位に終わった。

野田佳彦代表が選挙戦最終日に入った選挙区のうち、福島(改選数1)、栃木(同)では議席を得られず、東京(改選数6、補欠1)では擁立した2人のうち当選した現職の塩村文夏氏は7番手だった。

大敗した自民のみならず立民も含め既成政党の多くは、早期に衆院解散・総選挙が行われた場合、票をごっそり参政や国民民主に持っていかれるだろう。

石破茂首相(自民総裁)が参院でも与党過半数割れとなった責任をとって辞任し、新総裁が国会での首相指名選挙を経て首相に就任できたとしても、新首相は怖くて解散できないのではないか。

自民の多くの歴代総裁は「解散カード」を求心力を高めるために有効に使い、党内を統治してきた。だが、自民が抜本的に立て直しを図り、他党を凌駕(りょうが)するほどの力を取り戻さない限り、その芸当はできまい。

立民も早期の衆院解散は避けたいのが本音といえる。議席を減らす可能性があるだけでなく、野党間の候補者調整など闘う態勢を整えるのに時間がかかることが予想されるからだ。

野田氏は石破首相について「だらだらと民意を無視して居座り続けるのか」と批判する。

ならば、8月1日召集予定の臨時国会で内閣不信任決議案を提出し、野党で連携して可決させ、総辞職か解散に追い込めばよいものを、不信任案提出については言葉を濁している。腰砕けというほかない。

最大政党の自民も野党第一党の立民も解散を恐れていては、緊張感は生まれず、なれ合いの政治に陥りかねない。日本の政治は劣化の一途をたどることになろう。石破首相は一刻も早く退陣すべきであり、自民は「国民政党」を自任するのなら、早急に党を再建する責務がある。(論説副委員長)

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